蟲神器のスーパーレアは、なぜ値段がつかないのか?
◆初めに
二か月ほど前から蟲神器を始めたロースターです。久しぶりのnote更新となります。蟲神器始めたころはデッキレシピやシングル相場などを見ずにやっていたのですが、我慢できなくなって、ネットで検索したところ、スーパーレアの相場に愕然としました。
メルカリを基準として話を進めますと、一番高いスーパーレアであるゴライアスは1000~1200円くらいと値段が張るのですが、それ以外は、ほとんどが二枚で300とか4枚で300円とか全然値がついてません。退魔の蚊遣り火などいくつかの例外が一枚300円ほどついているくらいです。Tier1(階層の最上位、カードゲームでは、最も強くて流行ってるデッキタイプのことをいう)の水生デッキのメインパーツであるタガメやニジイロクワガタですら二枚で300円くらいです。
バラ売りなどでもっと細かく値段がついているものを確認しても、ほとんどのスーパーレアが1枚あたり30~50円くらいで、タガメなどの高めのスーパーレアが100~150円、蚊遣り火など最も高いもので200~300円くらいです。
レジェンドレアについては800~2800円くらいと高い相場を維持している感がありますが、スーパーレアについては、ゴライアス以外値崩れしています。どうしてこういうことになったのか、とても興味が湧いたので原因を探ってみました。すると、面白い結果が解ったのでコラムにしようと思い筆をとりました。よかったら読んでみてください。
◆なぜ蟲神器のスーパーレアは安いのか数学的に求めてみる
【問題】スーパーレアの値段値段がつかない理由。
【原因】実はスーパーレアの封入率はノーマルやレアとほぼ同じで希少ではない。
いきなり質問ですが、第二弾の当たりスーパーレアであるシロガネコガネと、当たりノーマルであるチッチゼミは、どっちのほうが出やすいと思いますか?
スーパーレアは1パックあたり5枚中1枚でなので希少だし、2段のスーパーレアは10種類でノーマルは23種類だから、スーパーレアの方が希少では? と理屈では思いますが、経験則からいうと、両方とも1BOX(20パック入り)買うと2枚くらいでるのでは実は同じ? という体感になります。
ここで確率を用いて1BOXあたりの封入率を計算し白黒つけてみたいと思います。まずはシロガネコガネのでる確率を計算すると、スーパーレアは1枚はレジェンドレアに置き換わってるので1BOXに19枚入ってます。二弾は10種類のスーパーレアがあるので、シロガネコガネが出る確率は、それらの1/10になります。(実は種類が少ないほうが当たりやすいのです)19÷10=1.9で、平均1.9枚出る計算になり1BOXあたりの封入率は190%となります。
それではチッチゼミはどうでしょうか?蟲神器のカード封入には特徴があり、1パックのスーパーレアを除く4枚のうち、必ず赤青緑の色が一枚ずつ、術と強化をあわせてどちらか1枚ずつ入ってます。つまり青のカードはスーパーレア以外が1パックに絶対1枚入ってますので1BOXで20枚手に入ります。そして、ノーマルとレアをごちゃまぜにしたなかから1枚が封入されるので青のノーマル6種類と青のレアは5種類をあわせた合計11種類の中から1枚が選ばれます。なのでチッチゼミが出る確率は1/11になり、20÷11=1.82で、平均1.82枚でる計算となり、1BOXあたりの封入率は182%になります。
1BOXのSR19枚
÷
SRの種類10枚
=
シロガネコガネの出る平均枚数1.9枚(190%)
1BOXの青の枚数20枚
÷
青のNとRの種類の合計11枚
=
チッチゼミの出る平均枚数1.82枚(182%)
シロガネコガネとチッチゼミは出る確率がほぼ同じ、むしろチッチゼミの方がわずかに出にくいくらいという結果になりました。
つまり、スーパーレアとノーマルやレアは1枚当たりの封入率がほぼ同じなので希少価値があまりないのです。
第一弾はカードの種類が倍くらいあるので封入率が下がりますが、スーパーレアだけでなく、ノーマルもレアも同じく倍くらいカードがあるので両者の封入率は同じくらいです。ゴライアスとモンシロチョウで比較してみましょう。
1BOXのSR19枚
÷
SRの種類23枚
=
ゴライアスの出る平均枚数0.83枚(83%)
1BOXの青の枚数20枚
÷
青のNとRの種類の合計21枚
=
モンシロチョウの出る平均枚数0.95枚(95%)
ゴライアスもモンシロチョウも1BOX買えば1枚くらい入ってたと思うので、概ね体感とあってる気がします。このようにスーパーレアはノーマルやレアと封入率が対して変わらないので、ゴライアスを除けば、むしろ、チッチゼミやモンシロモンキなどの優良ノーマルのほうが値段がついてしまいます。
◆どうすれば相場を改善できるか考えてみる
【問題】スーパーレアが価格を維持するにはどのくらいの封入率がいいのか
【解決】他のカードゲームを参考にすると1BOXあたり、33~50%ほどがいいと思われる
蟲神器をやりこんでる人は一つの弾あたり10BOX買って自力で狙いのレジェンドレアを2枚集めている印象があります。(レジェンドレア全てを2枚ずつ自力でコンプリートしようとする人は20BOXくらい買ってる印象があります)10BOX買うとゴライアスの1BOXあたりの封入率は83%、タダメの封入率は173%あるので、ゴライアスは平均8.3枚、タガメは平均17.3枚集まることになり、ブログなどの報告をみると大体あっているようなイメージがあります。ゴライアスは8枚あるのは別にいいにしても、他のスーパーレアが8枚もあってもかなり持て余しますし、タガメがいかに重要でも17枚もあったら余り過ぎです。これは明らかに需要と供給のコントロールが出来ていません。どれくらいの封入率がよいか他のカードゲームを参考にして割り出したいと思います。
試しに遊戯王のカード封入率を調べました。筆者は遊戯王をやっておらずサイトを検索した情報から割り出したのでもしかしたら間違ってるかもしれませんが趣旨は伝わると思いますのでご容赦ください。
◆例:遊戯王 RAGE OF THE ABYSS レイジ・オブ・ジ・アビスの封入率
通常のカード
ノーマル 1箱に120枚 38種 316%
レア 1箱に 18枚 19種 95%
スーパー(キラカード) 1箱に 6枚 11種 55%
ウルトラ(キラカード) 1箱に 3枚 9種 33%
ノーマルレア 1箱に 1枚 3種 33%
色違いや加工違いのカード
シークレット 1箱に1枚 20種 5%
アルティメット 1箱に1枚 9種 11%
クオーターセンチュリーシークレット3箱に1枚 20種 1.7%
ホログラフィックレア 10箱に1枚 1種 10%
特殊なカード
《誇りと魂の究極竜》 数カートンに1枚? 1種 不明
参考にしたサイト
『RAGE OF THE ABYSS』当たり・収録カードリスト・封入率
遊戯王の第二倉庫メディア
https://yg.second-storage.jp/media/775/
RAGE OF THE ABYSS -遊戯王カードWiki
https://yugioh-wiki.net/index.php?RAGE OF THE ABYSS
KONAMI 遊戯王公式
https://www.yugioh-card.com/japan/products/rota/
最近のカードゲームの傾向として、プレイ用のカードは手に入りやすくして、コレクター用のカードを希少にするという傾向があります。なので封入率が極端に低いカードは絵違いや加工違いといった特殊加工をしてあるカードに限定しており、同じ効果の安いカードが比較的簡単に手に入るようになってます。ポケモンカードなどで数万、数十万するような話題のカードも、プレイ用の同じ効果のカードが数百~数千円程度で手に入ります。例に挙げた《誇りと魂の究極竜》はちょっと複雑でプレイ用の安いカードが存在しないレアカードで数十万するといわれますが、デッキに入るような強いカードではなく、コレクター要素が強いです。
封入率の割り当ても特徴的です。一番レアリティの低いノーマルカードは316%で1BOX買えば平均としては3枚ずつそろいます。遊戯王はデッキに同じカードは最大3枚まで入れられるので必要な分量が揃うようになってます。次にレアリティが低いレアは1BOX買うと一枚ずつ揃うようになってます。そしてキラカードであるスーパーが55%、ウルトラが33%となっています。これらは2BOX、3BOX買わないと1枚も手に入らない可能性があります。
誰がこの規格を始めたのか詳しい前後関係は分かりませんが、ポケモンカードもデュエルマスターズも遊戯王に近い封入率を持っていて、1BOXあたり30パックで、一番レアリティの低いカードは300%前後の封入率、キラでないレアカードは100~200%前後、キラカードは33~100%の封入率、そのほかに封入率が極端に低いコレクター用の絵違いや加工違いのカードが入ってます。
これを前提に蟲神器の詳しい封入率を紹介したいと思います。第一弾は種類が多く、遊戯王との比較対象としては種類の数が近い第二弾の方が適正だと思われますが参考に両方載せておきます。
◆蟲神器、一弾と二弾の封入率
第一弾の封入率
ノーマル+レア(概算) 1箱80枚 78種 封入率 105%
スーパーレア 1箱19枚 23種 封入率 83%
レジェンドレア 1箱 1枚 5種 封入率 20%
第二弾の封入率
ノーマル+レア(概算) 1箱80枚 41種 封入率 196%
スーパーレア 1箱19枚 10種 封入率 190%
レジェンドレア 1箱 1枚 4種 封入率 25%
概算だと、前に紹介したチッチゼミやモンシロチョウの封入率とずれるので色ごとの詳細な封入率もおまけで載せます。
おまけ:第一弾のノーマル+レアの詳細な封入率
赤のノーマル+レア 1箱に20枚 19種 封入率 103%
緑のノーマル+レア 1箱に20枚 20種 封入率 100%
青のノーマル+レア 1箱に20枚 21種 封入率 95%
術と強化のノーマル+レア 1箱に20枚 18種 封入率 111%
おまけ:第二弾のノーマル+レアの詳細な封入率
赤のノーマル+レア 1箱に20枚 11種 封入率 182%
緑のノーマル+レア 1箱に20枚 11種 封入率 182%
青のノーマル+レア 1箱に20枚 11種 封入率 182%
術と強化のノーマル+レア 1箱に20枚 8種 封入率 250%
見てみるとレジェンドレアの封入率が20~25%と結構に低めなので相場を保ってることは納得ですが
それ以外は83~250%とかなり高く、ノーマルで196%ならデッキに同じカードは2枚までなので必要な分が1BOXで手に入る他のゲーム並みですが、スーパーレアで190%となると過剰となり相場を維持できてないことが納得です。
さらに遊戯王の1BOXは30パック入りで5280円と蟲神器の20パック入りで22000円の倍以上するので金額ベースの封入率は更に倍以上アップし想像以上に蟲神器のスーパーレアが出やすく感じると思われます。
◆新しい蟲神器の封入率を考えてみる。
値崩れしているのは、このように需要と供給のコントロールが出来てないのが明らかな原因です。現状のような上位のレアの1BOXあたりの封入率が200%近くあるのはかなり異常だと思われます。遊戯王などにならうなら。ノーマルは200%、レアは100%、スーパーは50%、レジェンドは33%くらいの封入率にして、絵違いや加工違いを投入すると今風の封入率になると思います。こうすれば、レジェンドレアは今より集まりやすく、スーパーも使えるものは数百円くらいの値段を維持し、レアはそこそこ、ノーマルは一箱買えば必要分は集まるという形になり、コレクター用の激レアカードも用意出来ます。
遊戯王などにならった封入率の案
通常のカード
ノーマル 1箱に60枚 30種 封入率 200%
レア 1箱に30枚 30種 封入率 100%
スーパーレア 1箱に 5枚 10種 封入率 50%
レジェンドレア 1箱に 1枚 3種 封入率 33%
絵違い加工違い
レアのキラカード 1箱に 3枚 30種 封入率 10%
スーパーの加工違い 1箱に 1枚 10種 封入率 10%
レジェンドの加工違い 10箱に 1枚 3種 封入率 3%
内訳
1BOXに、
ノーマルが3枚、レアが2枚入ったパックが10パック
ノーマルが3枚、レアが1枚、スーパーが1枚の入ったパックが5パック
ノーマルが3枚、レアが1枚、レジェンドが1枚の入ったパックが1パック
ノーマルが3枚、レアが1枚、レアのキラが1枚の入ったパックが3パック
ノーマルが3枚、レアが1枚、スーパーの加工違いが1枚の入ったパックが1パック
10BOXに1パック、ノーマルが3枚、レアが1枚、レジェンドの加工違いが1枚入っている
しかし、この方法では今風とはいえ、蟲神器らしさがなくなってしまいます。1パックに必ずキラカードが入っているとか、レジェンドレアは本当に貴重なレアだとか、コレクター用のカードは入っておらず全部実用だとか……
それらを維持するとなるとかなり難しいです。スーパーレアの枠は19パックあるので封入率を50%にしたければ38種類封入すればいいですが、それでは開発に負担がかかってしまいます。となると、スーパーレアの相場を維持するのは、ほぼ無理となるので妥協案として、スーパーレアとレジェンドレアの間に中間の33~50%くらいのレアリティ、仮にウルトラレアとします、を作り、レジェンドレアほどじゃないけど、高く相場を保ちたいカード、たとえばタガメとか草薙の劫火に相当するような、すごく注目されているのに、値段が全くつかないカードを救済するために割り当てるのを提案します。
新しいレアリティを追加した案
ウルトラレア 封入率50%案
ノーマル 1箱に44枚 22種 封入率200%
レア 1箱に36枚 18種 封入率200%
スーパー 1箱に15枚 15種 封入率100%
ウルトラ 1箱に 4枚 8種 封入率 50%
レジェンド 1箱に 1枚 4種 封入率 25%
ウルトラレア 封入率33%案
ノーマル 1箱に44枚 22種 封入率200%
レア 1箱に36枚 18種 封入率200%
スーパー 1箱に16枚 16種 封入率100%
ウルトラ 1箱に 3枚 9種 封入率 33%
レジェンド 1箱に 1枚 4種 封入率 25%
少ない変更でレアリティのバランスが良くなったと思います。タガメやニジイロクワガタを300~500円程度に保ちたければ前者を、草薙の業火を600~1000円程度に保ちたければ後者が丁度いいと思います。ゴライアス級をこれに当てはまると、とんでもない値段になると思いますので、どのデッキにも必須となるようなカードはレアリティを低く抑える必要があります。
◆最後に
蟲神器のスーパーレアは何でこんなに安いんだろう? という疑問から出発して、封入率がよくないという結論に達し、他のゲームの封入率はどうなってるんだろうと思い、どうすればそれを参考に改善出来るかどうかを考えてみました。蟲神器の運営が参考にしてくれるかどうかはわかりませんが、現状のTCGの販売形態が遊戯王式に収斂しているところを見ると、封入率や販売形態も売り上げに影響が大きいと思われるので、カード効果やデッキバランスや宣伝だけでなく、こちらのほうにも研究リソースをつぎ込む価値はあると思います。あんまり確認してないんで間違いはあると思いますが、大筋の主張は正しいと思うので、温かい目で見ていただければ幸いです。