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人って

人って、
して貰ったことはすぐ忘れるのに、
して貰えなかったことは忘れない。

そんなことってないだろうか?

この前、美容室で
カラーリングの待ち時間に
「お飲み物はお茶にしますか?コーヒーにしますか?それとも紅茶?」と訊かれて、
「あったかい緑茶で!」とお願いしたのだけれど、
ついぞ最後までお茶は出て来なかった。

私は一人鏡前で雑誌を読んでいた。

その時、スタッフの人達も一区切りして休憩モードに入ってしまったようで、すぐ傍のバックヤードで飲み物を飲み、お弁当を食べながら話す声が聴こえた。

いつもの私なら、
「お茶まだ貰ってませんけどー」とか
どこかで言えちゃうタイプなのだが、
その日は“認知症”のことを話題にしていて、「私もすぐ忘れるー」「私もー」なんて言っていたので、私より歳上のそのスタッフの方に、なんだか忘れていることを指摘できなかった。

「疲れてるんだろうなー。お茶なんて別に飲まなくたって平気だし…」と良い子の私も顔を出して、指摘しないまま、
全て終わって「有り難うございましたー!」と送り出された。

たぶん、どこかで気付いたと思う。
でも、何事も無かったかのようにそのスタッフの方は私の施術を終え送り出した。

私は「まぁ、いいさ」とは思ったのだけど、(私なら、注文まで取ったのだから、『お茶と聞いておきながらお出しせずにすみませんでした!』と気付いた時点でひと言正直に言うなー)と思った。

商売って、上手い下手もあるけれど、
相手に対して誠意があるかどうかがモロ見えになるものなので、
私が気になったのはそこだった。

(この人になら良いだろう。この人なら文句を言わないだろう)
そう思われたのだとしたら、嫌だなと思った。

出されなかった、たかだか一杯のお茶を、私はきっと暫く忘れない。

その証拠に、ここに書くくらい
まだ根に持っている。

人って、結構、繊細な生き物なんだ。