墓石なんて、いらない
夏、墓参りに行った。暑くて、汗も滴り落ちる中で線香をあげた。顔も見た事ない人の墓に思うことなんて何も無くて、ただ暑かった。その時改めて自分の墓石なんていらないなと思った。
夏はダメだった。いつもじめじめして、いつでもうっかりと足を滑らせて死んでしまえる気がしてたから。
どんなに腕を切っても、泣いても、十何回目の夏を迎えても死ぬことも解放されることも無かった。
でも、あの子は違った。
私よりひとつ先に夏を知ったあの子、顔も、名前もなんにも知らないあの子。私と違う場所で苦しんでい