かい

映画の感想文や日々のこと。過ぎ去っていく感情を文章に起こして残す訓練と思ってnote始めてみました。

かい

映画の感想文や日々のこと。過ぎ去っていく感情を文章に起こして残す訓練と思ってnote始めてみました。

最近の記事

女っ気なしーヴァカンスは終わる

ただただ生き抜くだけの夏が終わりそうだ。 年々夏が苦手になっている。 暑すぎると、極端に感情のコントロールが下手になってしまう。 汗をかきまくったと思ったら身体の芯から冷やされたり、まったく忙しくてついて行けない。 そういえばクーラーを導入したあたりから狂い始めたんだ、と思い当たった。 下の娘が産まれたあと事情があり保育器に長いこと入ってから、ようやく退院したのが夏の盛り。 頼りない新生児を置いておくには危険を感じるくらいに日中の部屋の中は暑かった。 こりゃ無理だ、と人生で

    • 悪は存在しないー深い森に迷い込む

      エンドロールが始まってしまってからずっと心の中で叫び続けていた。 ちょっと待って置いて行かないで! 出口の分からない深い森の中にひとりぼっちで置き去りにされたような心許ない気持ちでふらふらと映画館から何とか這い出した。 森の出口を指し示してくれるかも、という淡い期待を持ってパンフレットを買いに売店に行ったが、売り切れでさらに絶望した。 思えば、冒頭からずっと不穏だったのだ。 延々と続く木々を仰ぐショット、どこに向かっているのか分からない、見上げた視線のままカメラは動き続

      • ゴーストトロピック/かつて娘だった私の横顔

        ゆっくりと暮れていく部屋が映される、生活感がありながらも程良く整えられていて居心地の良さそうな部屋だ。 そして呟くように重なるモノローグ。 これが私に見えるもの、聞こえるもの全てー 新しい私たちが見える。疲れていない私たちがー この膨大な空間を私たちの人生で埋める、骨の折れる作業だー 誰か見知らぬ人がこの部屋に入って来たとき、何を感じ、何を聞くだろうー 私は恥じるだろうかー 暮れていく街並みにぼうっと浮かぶタイトル。 良い映画が始まる予感に胸が静かに高鳴った。 her

        • here ここにある静かな奇跡

          変わりゆく街を、じっとたたずむ森が見ているような視点から始まる。 建設中の建物から街を見下ろす青年の後ろ姿、吐き出されたタバコの煙が中空を彷徨う。 多様な人種と見られる労働者の人たちが、ひとつの言葉でコミニケーションし、笑い合う。 束の間の眠りに落ちる青年の黒く煤けた指先、膨らんだ背中の始まり、労働者の佇まいは美しいな、と自然に思う。 バカンスを前に冷蔵庫にある残り野菜で、たくさんのスープを作り、友人に配り歩く青年シュテファン。 訪れる先の友人ひとりひとりにある日常をゆ