傲慢と善良(本の感想)
ざっくり書くと、もともと婚活アプリで出会った婚約者がある日突然姿を消してしまうミステリーなのだけど、面白すぎて500ページ2日で読破した。
婚活というフィールドを舞台に人間の醜さをすごくリアルに書いた小説だったんだけど
婚活アプリに疲れる感じとか、ある種の宗教のような田舎に住む親との距離感だったり、文章がとても生々しくて共感の連続でした。
「真面目でいい子の価値観は家で教えられても、生きていくのに必要な悪意や打算の方は誰も教えてくれない」
「ピンとこない、の正体はその人が自分につけている値段」
この辺りのセリフが特に印象に残ったかな。
主人公たちは婚活アプリで出会ったからこそ、どこかで「普通の恋愛じゃない」と関係性にレッテルを貼って「これが過去の普通の恋愛だったら〇〇なのに」みたいに度々過去と比べてしまって苦しむのだけど、これは恐らく「婚活」って名前が付いている故だな、と。
婚活に限らず名前というものが付くと、その言葉の持つイメージが一人歩きをしてしまう、みたいなことがよくあるな、と最近感じていて。
「婚活」「結婚相談所」は自然な恋愛じゃない、タスクに感じてしまう、みたいな事だったり
「付き合う」ってなると、友達だった頃、保てていた適切な距離が保てなくなったり、お互いが所有物みたいになってしまったり
「ハンドメイド」は安い、誰でもできるみたいなイメージであったり
近年流行りの「推し活」についても
「推し活」って言葉が誕生して、その活動は世間に肯定されるんだってなって、爆速で推し活ブームが来た気がするんだよね(言葉が生まれると流行りが加速するみたいな)
別にこれらを否定する気持ちは全くないのだけど、名前が付くという事(その後の影響とか)へのちょっとした恐怖を感じたという話。
辻村深月さんを読んだのは、凍りのくじら以来だったけど、感情の解像度が高いというか、言語化能力が本当に凄い(語彙力w)
傲慢さと善良さは誰しもが両方持ち合わせているからこそ共感もできるし、読み手の心もじわじわと抉られる。
けど先が気になってついつい読んでしまう。
あとはラノベかなって思うくらい読みやすい文章とテンポ感だったから、500ページもあった感じが全然しなくてびっくり。
数年ぶりに面白い小説に出会いました。
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