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2-9. 60点主義で即決せよ。決断はタイムリーになせ。決めるべき時に決めぬのは度し難い失敗だ。

  経団連元会長 土光敏夫
 

 この意見には、60点主義で進めよ、ということと、タイムリーに即決せよという2つの要素がある。これは前出の「石橋を叩けば渡れない」と基本的には同じである。

 間違いのない決断をしようと時間をかけて検討したからといって、結局、決断はリスクを持った状態で行わなければならない。それならば、タイムリーに決断することを優先させよというわけである。

 計画がどの程度達成できたら成功と言うか、ということについては、松下電器産業創立者松下幸之助は、

   「60点なら合格。」

 と主張している。これはいいかげんな決断でいいと言っているわけではない。細部は気にせずに、本質をとらえて、それで行けそうだと判断したら意思決定せよと言っているのである。
 このあたりの、ある意味での大ざっぱさは非常に重要であり、大経営者といわれる人に共通しているのは、その大ざっぱさの頃合いをよくつかんでいることである。

 小林一三は、あとで触れるが、

要らんことは、どんどん忘れろ

と勧めているが、これなどはその辺のニュアンスを伝えるものだ。

 意思決定の時のリスクをどのくらい容認するかは、置かれた環境により違ってくる……と主張するのは立石一真である。彼はこう言う。

 「リスクのない決定は決定と言えない。普通は7対3のリスクでいいが、早い転換期には3対7のリスクの原理で決定せよ」

 つまり、立石は70パーセントの成功確率ならば意思決定せよ、もし、それが変化の激しい時期ならば、逆に成功確率が30パーセントしかなくても意思決定していいと言っているのである。

 これは立石自身がそうしてきたということであろうが、30パーセントの確率でゴーを出す度量は、おそらくオーナー経営者、創業経営者にしかないであろう。

 一種のカンによる判断であるが、それを成功させてきたことが、創業経営者のカリスマ性や強烈なリーダーシップの根源になっているとも言える。

 しかし、新しい事業などに乗り出す場合の、意思決定時の心がけとしては、前述のエーザイの内藤の言葉にもあるように、失敗することをも覚悟しながら、いかに社員たちを引きつけてその計画に全力を傾注させるか、そのリーダーシップの有無が結果を左右すると言ってもいいかもしれない。


 

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