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3-13. 経営者が忙しいのは自慢にならぬ。
余暇開発センター元理事長 佐橋 滋
忙しがっては経営者は失格である……と言うのは、通産省時代に異色の官僚と言われた佐橋滋である。得意の太極拳を引き合いに次のように言う。
「スポーツならば、50メートルを速く走るのが普通だ。しかし太極拳では、この距離に30分かけろということになるので、ゆっくりとバランスを取って動く必要がある。」
これは平常心がないとできない。
武道では、平常心をいかに保つかが根本テーマであった。生死の境目に立った時、平常心のある人は、敵のどんな動きにも対応できるが、平常心のない人は、必ず敵に乗ぜられる。
経営においても同じだろう。平常心にあって身も心もゆったりとしていればこそ、良いアイデアも出ようというものだ。セカセカと忙しがって、平常心を欠いた状態では、的確な判断などできるはずはない。
社長が忙しいということは持ち込まれる決済事項が多いということだが、いい会社であるならば、社長が決断しなくてはならない場面はそんなに多くないはずである。それが多いというのはどこかに問題がある……というのが佐橋の意見だ。
だから、経営者が忙しいのは、少しも自慢にはならないのである。