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2-8.1勝2敗の哲学はチャレンジの精神でもある。

 ダイエー会長 中内 功
 

 時代が急速に動き、変化が激しくなってくると、新しいことにチャレンジする機会も増える。

 従来は何年に一度という長期的なサイクルで新しい事業が求められたが、最近ではサイクルが短期化し、常時、新しい事業にチャレンジしているという臨戦態勢でいないと、生き残れないほど、技術・市場の変化は激しい。

 そんな中で、手がけたすべての事業を成功させるのは難しい。成功/失敗の勝率は1勝2敗でいい、と言うのは中内功(功のつくりは、正式には刀)である。

 昭和の末から平成のはじめにかけてのダイエーの活動は活発だった。

 銀座に百貨店プランタンを回転したり、ローソンの急激な店舗展開、少し前には福岡ダイエーホークスの買収、福岡ドームやホテルを始めとするツインドーム計画、また、秀和への融資とマルエツ、忠実屋への対応……などなど。

 これらをすべて完璧に成功させるのは不可能に近い。そこで中内は1勝2敗を目指せばいいというのである。

 ここで言う2敗は当然、次の1勝への投資になる2敗でなくてはならない。要所で勝つためには、ある程度の投資も必要だという発想である。中内自身とダイエーの社員たちが、積極的なチャレンジを続けるための、わかりやすく言い聞かせる哲学と言うことができるかもしれない。

 しかし、あとに悪影響を残さず負けるということも、なかなか難しいことである。

 たとえば、動物の世界ではこういうことが起こるという。

 4匹のコオロギがいる。この4匹を闘わせると、強い順にABCDという序列ができる。
 そこで、こんどはこれをABとCDという2つのグループに分けて闘わせる。当然、グループ内の序列はそれぞれAB、CDになる。問題はここからである。
 この両グループを再び一緒にして闘わせると、序列は、ACBDになる。Aに負け続けて自信を失ったBが、Dに勝ち続けて自信を持ったCに負けるようになるというのである。
 このAでさえ、さらに強いグループに入って負け続けると、古巣に戻っても格下に負けるようになるという。

(竹内久美子「賭博と国家と男と女」)

 中内の言う2敗とは、ここまで深いダメージを被るものであってはならない。あまり強烈なダメージを受けるようでは、1勝くらいではカバーできないどころか、命さえ失いかねないからである。
 言い換えれば、負けてもいい勝負かどうかを、始めから心得ていなければならないということなのである。
 一方、挑戦する場合に、どのくらい成功の可能性があったら決断すべきなのかという問題がある。これについて土光敏夫は次のように言う。


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