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7.小売店は消費者の購買代理店である7-1. 頭を下げなくてもいいから、商売を仕事に選んだ。
ダイエー会長 中内 㓛
「商人とは頭を下げてナンボ」とは、ビジネスの世界で何かにつけてよく聞かされる言葉である。
あるいは、商人は犬にも頭を下げるとか、いやなお客に対しては「相手に頭を下げるのではない、金に頭を下げるのだと思って我慢しろ」……などと言ったりする。
これに対して、それは違うと、中内はこんなことを言っている。
「僕には特別に能力はありません。人にお世辞を言うこともできないし、ペコペコ頭下げたり、接待して一杯酒をついだりなんてようせんし、麻雀で負けたり、ゴルフで『ナイスショット!』なんてよう言いません。
そんなことができないから、できることは商売くらいしかありません。小売業というのは、良い品をどんどん安く売っていさえすれば、まいどおおきに、言うだけでね。頭下げる必要はいっさいないですから」
中内 㓛が「エブリデイ・ロープライス」をひたすら目指して流通改革を進めてきた神髄が、この言葉の中に隠されているのである。
また、中内は、以下のようにも言っている。
「100グラム39円の牛肉を売っていれば、現金もらって、手形が落ちる心配せんでいいし、堂々とやっていける」
中内が考えている商売とは、儲けることではなく、「儲かる」ことである。儲ける仕組みを用意しておけば、儲けようとしなくても結果として儲かる、それが商売だと言うのである。
中内はこの主義を徹底して進めてきた。儲かるようになるための手段には徹底してアイデアを絞り出し、結果を待つ、それが中内流である。
ここには、日本人が苦手としてきた、緻密なシステム化=仕組み作りの発想がある。
頭を下げなくても商売はできる、というのは、逆に言えば、
「頭を下げない商売のほうが成功する」
ということでもある。
常識を覆す、まさに逆転の発想である。