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時代を作るものって何?

一時代を築く力士が出る見込みもない現在。照ノ富士があっさりとはいわずとも優勝したことで証明された。

読売大相撲35年5月号には「時代を作るものの覚悟」と題して尾崎士郎、東富士、彦山光三、江馬盛による座談会の記事がある。時代は柏鵬時代の夜明け前。この夏場所栃錦が引退、若乃花も限界がみられるといった状況で大鵬柏戸がいずれ時代を引っ張っていくことは確実とみられる頃であった。

座談会の冒頭、江馬氏がこう始めている。

栃錦若乃花が稽古不十分でありながらともに全勝の成績で優勝を争ったというような仕儀で、新進と言われている者に昔のような修行がいささか欠けているものがあるのじゃないか、栃錦若乃花のような立派な精神が欠けているからああいう結果になったのではないかと言われています。


大正~昭和初期世代と昭和2桁には稽古や生活面に決定的な違いがあると思われていたようだ。確かにこの場所の栃若は体力十分と言えず押し込まれる相撲が多かった。逆に経験からくる土俵勘と型を超えた自由自在の相撲ぶりが勝っていたような感である。


尾崎士郎は冒頭で長く語っている。東富士が引退後相撲協会をすぐに追い出され、已む無くプロレスラーに転向したことに対し協会の処遇を批判している。

東富士ごとき力士がなぜ協会におれなかったか。なぜこんなつまらないことをやっておるか。(中略)ここに相撲界のガンがあると思う。

男女ノ川にこの間会った。色々話をしたが彼もなかなか立派ですよ。協会は横綱の権威という者を考えなくてはいかん。横綱は相撲の象徴なんだから。

丁度この頃協会を離れる横綱が数人おり、誌上でもたびたび議論されていた。

そして横綱が存在することが伝統の伝となって、体が全てを伝えていると評している。

横綱の存在意義から「時代継承の形態」と移り、彦山氏は時代を押さえる力士がいつの時代も出るものとまとめている。周知のとおり双葉山、栃木山、太刀山、玉錦、梅常陸といった具合である。時代時代に要となる力士がいるものだ。

さらに「すぐれた横綱を倒そうと努力する。これが伝なんです。伝統の力。優れた力を持ち得るということが伝の力ですよ。」とし、伝統の継承には横綱が不可欠とまとめている。

現在は完全にバランスが崩れている時代。時代を押さえる力士はいつ出るのか。今の幕内力士にはいないだろう。落合?大の里?どうなるか。つづく。

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