闇の承従 ヴォルフガング 5話「光の罠」
首都デレイラッドへ続く、木々に囲まれた山道。
タウセンフェルグ山中のダンケルヘイトの砦を出発した、ナイウェルトとディネス。
二人は、辺りに注意を払いながらその先にあるデレイラッドを目指していた。
「テフィソネルの奴は、あなたのダンケルヘイトの力を恐れたのかもしれません。だから、討伐を口実に殺そうとした」
「だが、それをきっかけにこのヴァローアを手に入れ俺は、ヴォルフガングとして蘇った」
「今ごろ奴は、我々の力に戦き自分の周りを固めているでしょう」
会話の途中、周囲の生い茂った木々の中から金属音の合奏と共に多くの兵士達が姿を現した。
そして、長い黒髪に赤色のローブ姿で、太陽をモチーフにしたロッドを持った魔女のルフィットナが現われた。
「そう易々とは、行かせてくれないか……」
ルフィットナとその兵士達が、ナイウェルトたちの周りを固める。
「フン。本当だったんだね。まあ、いいわ。こっちはあんたのために、わざわざアイエン討伐の最中から戻ってきたんだから。さっさと片を付けさせてもらうよ」
「ルフィットナ。悪いが、こっちも急いでいるんだ。さっさと片をつけさせてもらうぜ」
ナイウェルトは、背中のヴァローアに手をかけ臨戦態勢をとった。
「それじゃあ、早く始めなきゃね。(周りの兵士達に向かって)やってしまいな!」
ルフィットナの兵士達が、雄叫びを上げながらナイウェルトたちに剣で切りかかる。
ヴァローアを抜きながら真上に飛び上がり、命令するナイウェルト。
「ヴァローア!奴らを蹴散らせろ!」
ナイウェルトの手から放たれたヴァローア。
装飾にある獣の目が光って自分の意志で回転しながら兵達に切りかかった。
悲鳴を上げながら、次々と倒されて行くルフィットナの兵士達。
「だらしないわね」
見かねたルフィットナが、持っていたロッドをナイウェルトの方に向け無数の光を放った。
「これでもくらいな!」
それに気づいたディネスが、上空に飛び上がり、ルフィットナの放った光を全てかき消した。
「我々の邪魔はさせん!」
「な、何!」
「助かったぜ、ディネス」
ナイウェルトは地上に降り立ち、右手に戻ったヴァローアを握った。
「そういうことだ。そこを通してくれないか」
「なるほど……。お前はそいつのおかげで蘇る事ができたのか」
「俺の相手はテフィソネルだけだ。悪いが、お前の相手をしているは時間はない」
周りを見渡し、少し考えるルフィットナ。
「……わかったよ。お前も、元は私達の仲間だったんだ。私も本当は、お前となんかやり合いたくなかったからね」
それを聞いて、安堵の表情を浮かべるナイウェルトたち。
「(ナイウェルトの右腕にさわり)さあ、さっさと行きな。テフィソネル様がお前を待ってるよ」
ナイウェルトは、ルフィットナの言葉に頷いてデレイラッド城へと急いだ。
だが、ルフィットナは、ナイウェルトの後姿を見て不気味な笑みを浮かべた。