闇の承従 ヴォルフガング 6話「二刀流、青の剣士」
周囲に見える山並みが美しい、デレイラッド城へ続く石畳の城下町。
普段は、店々の看板がいくつも上り、その下には街路を埋め尽くすように並ぶ露店。
それを目当てに、多くの人が行き交っていた。
だが、ナイウェルトとディネスが訪れた日は閑散としていた。
「いつもはもっと賑やかなのに、今日はやけに静かだな」
異変に気づいた二人は、辺りを見回した。
すると、二人の存在に怯えるかの様に様子を伺っていた住人たちが急いで身を隠した。
「やはり、我々は歓迎されていないようだ」
町外れにある湖の袂に近づいた二人。
手前には石を土台にした木橋、その先に続く吊り橋の向こうに目指すデレイラッド城があった。
「ハルクフトが殺したはずなのに、本当に蘇ってきやがったな!」
そこから、ナイウェルトを呼ぶ大きな声が聞こえてきた。
二人は声の方向を見た。
そこには、行く手を遮るよう立つ短い茶色の髪をした鉄製の青い鎧を身に纏(まと)った剣士メトフェイルと、その兵士達が待ち構えていた。
「ひさしぶりだなメトフェイル。俺も、またお前に会えるとは思ってもいなかったぜ」
他の兵士達よりも短い二本の剣を構える、メトフェイル。
それを中心として、小刻みな鉄製装備の音と共に部下達がナイウェルトとディネスを囲んでいく。
「お前たちをこれ以上、先には行かせん。橋を上げろ!」
メトフェイルの号令で、目前の吊り橋がせり上がっていく。
「ここは私に任せて、あなたは先を急いで下さい!」
ディネスの意見を聞き入れ、軽く頷くナイウェルト。
次の瞬間、ディネスがその場から上空に飛び上がった。
メトフェイルたち、驚いてディネスの方に目をやった。
「さあ、早く!」
上空で両腕を伸ばし、メトフェイルに狙いを定めながら無数の光弾を放った。
「う、うああ!」
ディネスの光弾に、吹き飛ばされるメトフイルたち。
ナイウェルトはその混乱に乗じて、その場から離れ迫り上がっていく吊り橋に向かって走って行く。
「今行くぜ、テフィソネル!」
吊り橋に一旦跳び渡り、迫り上がっていくのを利用して城壁の通路部分に飛び降りようとするナイウェルト。
その進入を予測していたデレイラッド城側では、ナイウェルトに向けて城壁の通路部分から矢を放とうとしていた。
「ヴァローア、頼んだぞ!」
ナイウェルトは、ヴァローアを抜いて、矢を放とうとしている兵士達にブーメランのように投げつける。
「ぐああ!」
無事に城壁の通路部分に降り立ち、戻ってきたヴァローアを掴むナイウェルト。
「行くぜ、ヴァローア!」
ナイウェルトは、城内の中庭に飛び降りた。
そして、行く手を阻む無数の兵士達を蹴散らしてながら、城内の回廊を抜け、狭い螺旋階段を上り、テフィソネルがいる城内四階にある謁見の間へと急いだ。