182 盲目の布教師の話

仕事を辞めて天理教1本になり、
妻子供2人を自教会に残し
上級教会に単身で住込み勤めていた当時。
齢30歳。

上級には毎日参拝に来る方がいた。

その中の一人。
その方は眼が見えないのです。

毎日。

雨が降っても雪が降っても必ず参拝に見えた。

その方は天理教の布教所長。

1日の食事は2回だと聞いた。
どんぶりに味噌汁を注ぎ、
それを飲む。それが食事だ。
(仙人かと思った)

その方が参拝に見えたら、
まず1時間はお仕込み
(とにかく私を仕込むのだ)

それが連日。

なので、その方が参拝に来たら隠れるようにした。
が、
必ず隠れた場所まで来て
「おるんじゃろ、出ておいで」とくる。

こうなるとお仕込みが2時間になる。

後で分かったが眼が見えない方は
人がそこに居ようが隠れていようが、
意味のないことだと分かった。

全て心眼 気配で察しておられた。

お仕込みの時必ず言われた言葉がある。
それは

「今の教会長は碌なのがおらん」だ。
テキビシイ

「知らんがな」
とも思っていた。


これから教会長になろうとする自分にとっては、
とても耳の痛い話が多かった。

内容は
御用ばかりして人たすけをしない会長が増えた
それでやった気になっている。
おやさまに申し訳ないと思わんのか。

だからとて、私にどうこうしろ、とは言わない。
こんな会長になるな、ということだったのだろう。


1年間の上級勤めが終わり自教会へ帰った。

そこからは月に2度しか会わなくなった。
1度は上級祭典準備の日。
1度は祭典日。

そうなると、なんとも寂しい気持ちになった。

上級祭典日には早朝から準備に行っていたが
その方も早朝から来ていた。

おつとめ着に着替えながら
お仕込み半分 
ねぎらいのお言葉半分になった。

それから数年後。
盲目の布教師は出直した。

後は頼んだぞ
と言われた気がした。

今、もし生きておられたら
俺のこと なんと言うのだろうか。
と考える。

お前も碌な会長じゃないな。
おやさまに申し訳ないと思わんのか!

そう言われそうだ。


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タロ芋座右衛門
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