除外診断について
僕は最終的に今、お世話になっている後遺症外来の受診に至るまで、結構たくさんの検査を受け、色々な病気についての除外診断を受けてきた。
これはこれで中々大変であったり、その都度思うことが色々あったりとしたので、今回はそのあたり、少し書いてみようと思う。
●何故そんなに検査をしたか
これは主に
・自分は後遺症の方々とよく似た症状のもしかしたら全く別の病におかされているのではという不安
・もしこれが後遺症によるものであっても、その後遺症の機序が不明のため、いつ別の病気を併発するのか分からない不安
というふたつの不安を少しでも解消しないと先に進めない状況に陥っていたからである。
後者に関しては、正直「じゃあどうしろと?」という話ではあるんだけど。
これに関しては、後遺症の方々のたくさんのデータが集まりつつある専門クリニックが存在する事を知り、そうした先生に患者さんの症例や予後などを聞くことで見えてくるものもあるかと一旦後回し。
まずは他の恐ろしい病気におかされていない事をできる限り確認したうえで、後遺症クリニックの受診に臨もうと思った次第。
●どんな検査を受けてきたか
パッと思い出せるだけで、以下の項目の検査をこれまでに受けた。※血液検査の中身は全て暗記していないので、この他にも医師の判断でとった数値などあったと思う。
・頸椎MRI
→身体中の痛みに対して、まず最初に整形外科で受けた検査。なんとなく、整形外科的な問題であってほしい(致命的な疾患でありにくいという素人のイメージ的に)という気持ちから、最初に骨格的問題を疑ってみた。
猫背やストレートネックを指摘されたものの、これが全身症状に至るような状態とは考えにくいという事で、検査としては陰性。
・脳MRI
身体全身の痛みとピクつきあたりをしらべるて脳神経系の病気に行き着いた方も多いと思う。そういった方々はご存知の事と思うけど、脳神経「内科」で受ける検査、特に重病関係にかんしてのそれは、色んな意味でかなりハードルが高い。
一方、脳神経「外科」ではこのMRIやCTなどを比較的受けやすいという事情もあり、完全ではないものの、脳梗塞や脳出血、神経難病に関しても、画像に現れるものに関しては調べられるため、まず受診対象となった。
ここの結果は完全に陰性。全く異常無し。
・胃カメラ、腹部エコー
この頃は、謎の消化不良(汚い話で恐縮だが、食べたものがそのまま出てしまうレベル)や広域の腹痛、喉や胸のつかえ、声のかすれなどの症状にやられていた。
年齢などふまえ医師の見立ての本命としては逆流性食道炎あたりなんだけど、これも症状ググった方はご存知の通りの恐ろしい病気の可能性を否定できない症状だったりする。
ちょうどTwitterで、コロナやワクチンと癌の関連なんかがまことしやかに囁かれはじめたタイミングとも重なり、かなり重い気持ちで受診に至った。
結果は軽い逆流性食道炎。他は陰性。
・心電図(労作後込み)、心エコー、ホルター心電図
これも後遺症患者さんだと結構あるある症状&検査なのかも。
自分は胸痛にPOTS様、頻脈に助脈、息苦しさ、入眠時の苦しさなど。
症状が症状だけに何回か検査してもらうも、これも異常無し。
・各種血液検査
基本的な健康診断項目に加えて、dダイマーという血栓関連の数値、リウマチ関連、甲状腺に抗体関連、免疫関連など、思いつくところをひと通り。胃がんや膵臓がんのマーカーなどもやった。
結果、重病は見つからずだけど、ある時赤血球の数値がやたらと高かったのと、LDLコレステロールが心当たり無しで倍近くに。
今はどちらも下がってきて正常付近だけど、何故こうなったのかは、謎である。
● 各種検査の中で感じた事
細かい血液検査の数値はさておき、こうして色んな検査を経ても結果、重病の類は発見されずではあったが、この検査の日々はなかなかに辛く、しんどいものだった。
まず、後遺症症状はそのメカニズムがまだ解明されていない。
そんな中、各種症状を見た場合、それぞれの症状の一番末端というか、最悪のところには、どれもそれなり致命の病が存在したりする。
年齢的にも急になり得るものでない事も多く、各医師からもそこまで心配は要らないと言われるものの、こちらは目下、謎の不調群の中にいて、いわば何が起きてもおかしくないという思考に陥っているのである。
そうなると、毎回、検査を行う決断やその結果を待ち、聞かせてもらいに行くという行為に、
「最悪の場合」の告知を受ける覚悟を固めて臨まないといけないわけで。
これはまだまだ幼い子供をかかえた身にはなかなか堪えた。
検査もこれだけ受けるとなると数ヶ月単位の取り組みとなる。
都度大丈夫に決まってる、と思いながらも、どこかで有事の際の立ち振る舞いを想定したり、最悪の場合の後処理、なんて事を考え出すともういよいよである。
そんな思いを何度もしながらでも、僕にとっては、治療相談を後遺症外来一択にするための儀式であったし、同時に、日常生活の制限を少しづつでも解除し得る手段でもあったため、3〜4ヶ月をかけて専門の病院を受診し続けた。
その中で感じた大切な事として
・プロ(少なくとも自分よりその道に詳しい人)にアドバイスを求める時はオープンマインドで。
・後遺症への理解と専門領域への理解は全く別という認識
・患者も人なら医師も人である
という事だ。
当初はやはり不安が勝ってしまい、兎に角自分がどうもコロナなりワクチンなりの後遺症にかかってしまったようである事、それで途方に暮れている事を理解してもらい、ささくれ縮こまった心を包み込んでくれる人として、医師を探していた部分もあった様に思う。
そうした想いと、医師の認識と相互のズレで歯痒く孤独な思いをした経験は、もちろん僕にもあった。
しかし、反面それは受診の目的の本当の意図から自ら遠ざかっている事に他ならなかった。
今、自分に本当に必要なのは、この諸症状の原因追求はもちろん、後遺症と思っているものが、実は全く別の差し迫った危機によってもたらされているものではないかの除外診断である事は明白だったわけで。
なれば、心臓の医師に聞く言葉は
「先生、僕の心臓は大丈夫でしょうか」
これのほかに無いのだ。
プロフェッショナルに、その専門領域の事を、リスペクトの気持ちを持ってたずねる。
過酷な状況に我を忘れていて、この当たり前の行為を横に置いて、自分の状況を理解してもらおうと一方通行なコミュニケーションには、やはり無理があったように、今は反省している。
医師といえど人。お互い、相手の立場や状況を手探りで、ゆっくりとコミュニケーションを取り進めていかなくては、信頼関係など出来ようもない。
そんなふうに思い直し、一軒一軒それぞれの病院の先生とお話をさせて頂き、検査を進めて頂いた。
結果、正直後遺症に関しては殆ど進展らしい発見や知識は得られなかったが、心臓、消化器、リウマチ関連あたりでは、何かあったらいつでも相談できるパートナーのような医師との関係ができあがったように思う。
そんなこんなで、自分なりに最低限納得行くまで身体のいたるところを検査し、また、大変ありがたい事に、何人かの医師がこちらの質問を、これまた納得いくまで何度でも答えてくださった事もあり、いよいよもってこれは、コロナ関連の後遺症一択で良いだろうと、そう判断したというのがこの数ヶ月の間の僕の除外診断の日々でした、というお話。