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ウイスキーの熟成年数は長いほど良いわけじゃない
ウイスキーを嗜むようになると、ラベルの表記に「〇年」と書かれているものを見るようになりますよね。
これはそのウイスキーの熟成年数を示すもので、年数表記がある場合は
【最低でも〇年以上熟成した原酒を使っています】
という意味です。
そしてウイスキーの値段というのは、この熟成年数が長ければ長いほど高くなっていく傾向があります。
その影響もあって、ほとんどの人がこう考えています。
「ウイスキーは熟成年数が長ければ長いほど美味しい」
もしあなたがこのように考えているなら、この記事は読む価値がメチャクチャあります。
なぜならこの誤解をしたまま今後ウイスキーを購入する事になると、必ずお金を損する事になるからです。
ではなぜ「熟成年数が長い=良いウイスキー」が間違いなのか?その理由を解説します。
熟成年数が長い原酒は単純に希少価値が高い
まずウイスキーの熟成ですが、樽にニューポットと呼ばれる原酒を入れます。
この熟成の段階で水分とアルコールが少しずつ蒸発によって減っていきます。これを「エンジェルシェア」と言います。
エンジェルシェアによって原酒が減っていく量。減少率は地域によってかなり違いがあります。
気温の低いスコットランドなどの地域だと、年間減少率は2~3%
しかしバーボン原産地のアメリカのケンタッキー州などの寒暖差の激しい地域だと熟成初年度で約10~18%、2年目以降の年間減少率は4~5%
ケンタッキー州では10数年経つと原酒が全て無くなってしまうと言われてます。
つまりスコッチだと10年程度の熟成期間だとまだ若いと言われますが、バーボンで10年前後はかなりの長期熟成品と言えます。
仮に年間減少率を3%とすれば、10年で30%。20年で60%も樽の中の原酒が無くなってしまうのです。
それで商品として出せる味に仕上がっていれば良いですが、中には嫌な味わいや香りが強くなってしまい、商品に出せないものもあります。
つまり長期熟成に耐えて、商品として出せるクオリティに仕上がった原酒というのは、それだけで相当に価値の高いモノなのです。
このような理由から、どうしても長期熟成のウイスキーは値段が異常に高くなる傾向があります。
熟成が進むと原酒の個性が薄くなる
もう一つ知っておいてほしい事があります。それはウイスキーは樽の中で熟成が進めば進むほど、香りや味わいが深まり、雑味が取れてまろやかになります。
一方で熟成が進むにつれ、樽から取り込む成分が過剰になったり、香味のバランスが変化しやすくなります。これはどの原酒であっても同じような変化を辿ります。
何が言いたいのか?
つまり熟成が進むと、若い時に持っていた個性が薄まり、代わりに熟成感が強いものに変化するという事です。
これ、人間にたとえると分かりやすい気がします。
僕達も若い時には色々とキャラが濃い人達が大勢いましたよね。
勉強ができる人、スポーツが得意な人、皆をグイグイ引っ張るリーダータイプ、周りを明るくするパリピな人、一つの事にのめり込むオタク気質な陰キャタイプ、ヤンチャな不良っぽい人、自分大好きナルシストキャラ・・・etc
でも40代、50代になると皆大人になって落ち着いて、同じような生き方や歳の取り方をしていませんか?
同窓会で久しぶりに会うと「あのクセの強かった〇〇君が今は随分落ち着いたオジサンになったね」なんて会話をする事も増えるのです。
歳を重ねていくと、良く言えば落ち着いた。悪く言えば個性が無くなっていきます。
ウイスキーも熟成年数が20年前後の長期になってくると、どの銘柄であっても同じような香りや味わいを感じやすくなります。
もちろん多少の違いはありますよ、でも大枠としては同じ傾向という感じです。
たとえばシングルモルトを買う人は、それぞれの蒸留所や銘柄の個性を味わいたいから買う人も多いはずです。
しかし熟成年数が長すぎると、その個性を感じ辛くなってしまい、本来の目的が果たせなくなる可能性があります。
せっかく大金を出してずっと欲しかった銘柄の長期熟成ウイスキーを買ったのに、期待していた個性が感じれない。これではお金を損してしまう可能性が高いのです。
一般的にスコッチであれば、10~12年程度の熟成期間がもっとも銘柄の個性を感じやすいと言われてます。
熟成感があるウイスキーではなく、銘柄の個性を楽しみたい。
そのような場合は下手に長期熟成品を買うのではなく、若い熟成期間のモノを買うという選択肢のほうが賢い買い物ができるのです。
このようなちょっとした知識を知っておけば、お得にウイスキーライフを楽しむ事ができまので参考にしてくださいね。