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金子兜太「私はどうも死ぬ気がしない」幻冬舎

銀行員でありながら「定住漂泊」という自分の生き方を決して曲げず、退職後は俳人として活躍した氏の生き方に感銘した。

「『あのときああしておけば、幸せだったのに』とは思わないのです。起こったことはすべて客観的な現実です。ただ起こるだけ。そこに幸も不幸もありません。幸不幸はなくても、運不運はあります。そういうものだと思って受け止める。嘆く必要はありません。甘んじてもいけません。それはただ起こり、私はそれに立ち向かえばいいのです」

簡単ではないが、俺もそういう思考に陥った時期があっただけに思わず膝をうってしまった。やっぱり58歳という年齢から見える視界はまた違うものがある。本著にキーワードが2つあったので記録しておきたい。

一つ目が「産土(うぶすな)」
「自分を育んでくれた土地」といった意味で、これが人生を支えてくれるということらしい。何かが失われ、崩れ去ってしまった時、この産土が支えてくれる。それだけではない。産土を意識することで腰の据わった仕事ができるようになるという。「土につながっている」という思いが根っこになっていくと人生自体も豊かになる・・・本当にそうだなって思う。俺にとって産土はやっぱり浜松ってことになるな。

二つ目が「荒凡夫(あらはんぷ)」
「自由に煩悩のままにいきる平凡な人間」という意味。小林一茶がまさにその典型らしいのだが、「愚のままにいきる」「欲のままに俗人としていきる」といった意味にも通じる。俺が大好きな岡村太郎や寺山修司といった人間もその極みだといっていいだろう。ただ、氏は「人に迷惑はかけない範囲で」と釘をさしている。「本能をいたわる」という表現がいかにも俳人らしい表現だと思った。運命を受け止め、現状に甘んずることなく、突破口を求めて汗を流す。迎合することなく愚直に自分を貫く。かなり共感できる人生観だと思った。

産土である浜松を根っことして一生抱き続け、生き方は「荒凡夫」!いままでもそうだったが、これからもその生き方を貫いていきたい。そんな思いにさせられた一冊だった。

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