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老いてなお見果てぬ夢

来年から私はフリーになる。
年金が満額入ってくるので、金儲けに追われることから解放される。
決して十分な額の年金では無いが、学生時代の奨学金よりはよほど多い。
大学院時代は、その奨学金さえミスで貰えず苦労した。
そこで、学生のころからの夢の実現に、本格的に取り組もうと思っている。

一つは思想家になることだ。
研究においては修士までいけたのだが、博士には進学できなかった。
こつこつとその後も研究を続けて、一冊の本は出版できた。
しかし、二冊目が17年も経っているのに書けていない。
書いた本も、再版されないだろうと、高いプレミアがつく始末である。
出版した本が再版されるには、次の本を書き上げて、研究者の仲間入りをする必要がある。
これは、出版の際に自己負担の代わりにあてがわれて、部屋の隅にある150冊の本の販売のためでもある。
ただ、職を得る必要が無いので、専門に拘ることなく思想家となって自由に活動したい。

二つ目は、ミュージシャンになることだ。
大学時代は軽音楽部に入ってすぐに、続けていたバンド活動を辞めてしまった。
その後、音楽活動は趣味程度に留まっていた。
かつての軽音楽部の仲間も、アマチュアバンドで今でも活躍している。
若い頃はハードロックのバンドボーカルで、ギンギンだったが、これからは路線を変更しようと思っている。
心に染み渡る歌をどんな形であれ届けたい。
本当はミュージシャンになることが、中学生からの夢だった。

来年には六五歳となって、本格的な高齢者となる。
だけど、やっと諦めかけていた夢を追うことが出来るのだ。
なんと言っても強みは、夢を職業にして稼がなくていいのだ。
ただ、心身の衰えと戦わなければならないし、いつ死ぬかも分からない弱みはある。
私が教えを請うた、奄美に普通に暮らすご老人の方々は、百姓であり、歌手(ウタシャ)であり、語り手であった。
私も師匠にならって、百姓・ミュージシャン・思想家になりたい。
それが、来年から死ぬまでの大きな夢である。

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