ヤマノシオノ

喫茶店でざわめきを感じつつ、音楽に浸りつつ、ひっそり過ごすのが好きです。 頭に浮かんだこと、心に残っていること、すれ違った人たちの印象的な話などを書き付けてます。 でたらめに想像が広がる一方、表現力や語彙力が乏しく収拾に手間取うばかり。 どんな世界も奥深いと気付くこの頃です。

ヤマノシオノ

喫茶店でざわめきを感じつつ、音楽に浸りつつ、ひっそり過ごすのが好きです。 頭に浮かんだこと、心に残っていること、すれ違った人たちの印象的な話などを書き付けてます。 でたらめに想像が広がる一方、表現力や語彙力が乏しく収拾に手間取うばかり。 どんな世界も奥深いと気付くこの頃です。

最近の記事

好奇心のまま、自転車を走らせた小学生の方向感覚の話

小学校3、4年生の頃だったか、よく、幼なじみと二人で「旅」という遊びをした。 好奇心にまかせて、自転車で見知らぬ場所を走り回っただけの遊びだ。 わりと結構な距離になることもあった。 それがどのくらいの距離だったのか、大人になった今ではわからない。 往復2時間くらいだったか。 地図を持つ発想はなかった。なかったが必ず帰宅できた。 ふと、当時を思い出し、あんなことができた能力は何だったんだろうと考えることがある。 で、思い立ってインターネットで検索してみた。 すると案外、いろい

    • 共感覚か連想か、どこまで共感覚なのか(ほか)の話

      私は、数字やアルファベット、漢字、ドレミの文字、曜日などに色のイメージが浮かぶ。 匂いや音色にもなんとなく。音階には浮かばない。 味にも、色のほか、形が浮かぶ気がする。 舗装された歩道には、白線で描かれた三角形が幅いっぱいに敷かれるイメージが浮かぶ。 歩道の左端にまっすぐな塀や敷居があったり、何かしらの境やカドが程よい長さで直線に結ばれたりすると、それらが底辺となり、歩道の右端に頂点が接して三角形になる。 アスファルトの補修跡やマンホール、街路樹、ガードレールなども変則で結

      • 前話「超自然的世界観に心が静まった彼女と‥」のおまけ

        私(シオノ エリ)の大学の先輩 ”ヒタくん“ は、私にだけ、その姿が見えななかった。透明人間に映った。 ほかの人たちには普通に見えるらしい。私だけが彼を捉えられなかった。彼からは私の姿は普通に見えているという。 その彼と私は付き合うことになった。 姿が見えないのに、どうやって付き合えるのか? 私にも不思議なんだが、彼の気配は感じられ、それで案外、心象が結ばれ、上手くいくのだった。 なんで私だけ、ヒタくんの姿が見えないのか。 視覚の奇妙な不具合か。まさか、スピリチュアルな要

        • 超自然的世界観に心が静まった彼女と静まらない私の話

          郊外に向かう電車の車内。乗客がほとんどいない。 久しぶりのお出かけだったのに、車窓が濡れ始めた。 私(ヤマノ)は、空席だらけの車内を見回しながら、ふと、満員の通勤電車を思い出した。 ─たまに、満員電車で、なぜか、  ポツンと空席ができていることが  あったな でもそれは、多分、偶然なのだ。 空席の周囲に立つ客が、たまたま、「次で降りるし」とか、座れない生理現象にあるとか、ただ、座りたくないとか、そういうのが揃うのだ、きっと。 私はいちいち、物事の理由を考えてしまう。 そ

          人は見かけによらない‥じゃなくて、その人が使い分けが上手かった話

          地下鉄のプラットフォーム。 元同僚のマキタさんと帰りの電車を待っていた時、彼がふと、呟いた。 「あんな“ウゾウムゾウ”な奴らさぁ‥‥」 “有象無象”? ついさっきまで私(ヤマノ)とマキタさんは、数人の元同僚たちと飲んでいた。 “ウゾウムゾウ”とは、今日の参加者ではなくて、彼が以前、一緒に働いた人たちのことのようだった。 温厚なマキタさんが、そんな厳しい言葉を使うのか、と私はハッとさせられた。 マキタさんと私は、数年前まで、学習塾で事務員として働いていた。 今は、彼は私立大

          人は見かけによらない‥じゃなくて、その人が使い分けが上手かった話

          “モチベーションは火事場にあり”の同級生(現在、教師)の話

          私(ヤマノ)とイタカさんとの付き合いは40年近くになる。中学、高校が同じだった。 イタカさんは地元で小学校の教師をしている。 私は長年、勤めた学習塾を辞め、主婦になり、今は時短パートをしている。 新型コロナウイルスが猛威をふるっていたさなかのこと。 私は、感染者数が下火になるのを見計り、なんとかお盆に帰省した。 帰省すると、ほぼ、必ずイタカさんと食事をする。コロナ感染に不安はあったが、例によって彼女と店で再会した。 出されたお通しの沖縄豆腐には食用花が刺さって、いや、飾ら

          “モチベーションは火事場にあり”の同級生(現在、教師)の話

          自分の気持ちを置き去りに、斜めってしまう人の話

          秋の終わりの居酒屋。 私(ヤマノ)は同僚のT氏とサシで呑んでいた時、彼から思わぬ言葉を聞いた。 「ヤマノさん、僕、そういう時、どうしたらいいのかわからないんです」 T氏は照れ笑いなのか、妙な笑顔をしていた。 わからない、というのは女性との深い付き合い方のことだった。 T氏は私の勤める学習塾の教室長をしていた。 30代後半。独身。私より3、4歳、年上。 中学・高校生向けの理数系の授業を担当していた。 女性の好みが独特なT氏に、ようやく相手が現れた。 私は、ちょっと嬉しくて

          自分の気持ちを置き去りに、斜めってしまう人の話

          情緒不安定で引いたカードが最悪をもたらした友人の話 その2

          モエの離婚から1年。 私(ヤマノ)は久しぶりにモエと会った。 バブル経済が終わりを迎える頃だった。 高校の同級生のモエとは、大学時代からたまに会って、カフェや居酒屋で互いの近況を話しあう仲だった。 ビールを何度も注ぎ足しながら、私は彼女の離婚の経緯を聞いた。 その日はモエの激励会のつもりだった。空気は重く、私はモエを励まさねば、と前のめりな感じで話を聞いた。 が、話が一段落するやいなや、彼女の目が突然、輝き出した。 「やまちゃん、私ね、彼ができたの」 と、モエがいった。 「

          情緒不安定で引いたカードが最悪をもたらした友人の話 その2

          情緒不安定で引いたカードが最悪をもたらした友人の話 その1

          私(ヤマノ)の高校の同級生だったモエが離婚した。 まだ、26歳。2年弱の結婚生活だった。子はなかった。 離婚理由は、モエの危機的な心理状態の時に、ご主人が彼女のそばにいてやらなかったことだった。 当時、モエは特別支援学校の教員をしていた。 ある日、彼女の教え子が貯水槽にはまって亡くなってしまった。 昼休みを過ぎても児童の一人が教室に戻ってこなかったので、スタッフ数人で校内を探すと、裏庭の貯水槽の蓋が空いているのを見つけた。覗くとその児童がはまっていた。 モエはショックと担任

          情緒不安定で引いたカードが最悪をもたらした友人の話 その1

          能力を眠らせて見えた彼女 その2 30年後、ネットで見つけた彩りある姿の話

          メミちゃんは、私(ヤマノ)が20代の時、事務員として勤めていた塾で、答案を採点するアルバイトをしていた。 私は彼女とだんだん親しくなり、お家にまでお邪魔する仲になった。 しかし、彼女は30歳で結婚すると、しばらくしてご主人の転勤に伴い、アメリカへいってしまった。 その後、彼女とのつながりはフェイドアウトしてしまった。 あれから‥。 メミちゃんは還暦だ。 私も50代半ば。 そんな年齢に、なって、しまった。 人生の下り坂が目の前だ。どんな風に過ごしていこうか。私、どんな風に過

          能力を眠らせて見えた彼女 その2 30年後、ネットで見つけた彩りある姿の話

          能力を眠らせて見えた彼女 その1 実は“何者か”になりたかった話

          メミちゃんは27歳だったが、ほぼ、高校生に見えた。 身長148cm。ハッキリした二重の目に小顔の童顔だった。 関西の私立大学の雄の心理学部卒。就職はせず、学習塾の答案採点のアルバイトと中華レストランのウェイトレスをしていた。 私(ヤマノ)は、メミちゃんが答案採点のアルバイトをしている塾の事務員をしていた。その縁で彼女と知り合った。 職場の慣習で、私は彼女のことを「先生」と呼び、彼女の能力の高さとそつのなさに一目置いていた。 そんな人が、一方でウェイトレスをしている、と聞いた

          能力を眠らせて見えた彼女 その1 実は“何者か”になりたかった話

          “本の虫”を自称した人、(ほか)の話

          突然、40代前半の女性上司の口から「本の虫」という言葉が聞かれた。 “本の虫”‥ 久々に聞いた。 今じゃ、レトロ語か。 “本の虫”って感じの人、以前にもいたな~、と私(ヤマノ)は思った。 自称・自認しないが多読だった人も。 みんな、その人自身に物語があった。 40代前半、職場の女性上司 聡明で上品な色白美人。少々、潔癖で心配性。仕事のミスにやや、過敏だった。 私が加齢による眼病を患った時、その女性上司が励ましてくれた。 そして、ふと、寂しそうに漏らした。 「私、27歳の

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          友人はクレーマー?、いや、私が自重(じちょう)し過ぎかも、と思った話

          初夏の美しい植物園。ラベンダー園に面したカフェで、私(ヤマノ)は、高校の同級生のハスミちゃんと久しぶりに会って、おしゃべりを楽しんだ。 その時、ハスミちゃんが学校に対してしたコトが、それってクレーマーじゃ‥と思った。 🐑 「だって、美しくないのよー。 娘には美しい解き方を学んでほしいのにさあ。 先生が、あんなドンくさい、ムダの多い証明さぁ」 と、昔から美人だったハスミちゃんがいった。 娘さんの高校の数学教師の板書した証明問題の解答が美しくないと憤慨する。 「だからさ、わ

          友人はクレーマー?、いや、私が自重(じちょう)し過ぎかも、と思った話

          三味線の先生らしき高齢女性と、その友人たちの話 その2 仲のよい男性の退院

          私(ヤマノ)が十数年来、通う道路端の小さな喫茶店。 最近、よく見かける70代くらいの女性は、どうやら三味線の先生のようだった。 女性は、同年代のいろいろな相手とこの店に来ていた。 🐑 今日も喫茶店で、私が雑誌を読み流していると、高齢の男女一組が入店してきた。 女性は男性を壁側の席に促し、自分は通路側の席に座った。 二人はコーヒーを頼むと静かに雑談を始めた。 「‥‥‥さん、もう退院したかしらね」 女性の声が聞こえてきた。 細くて軽くて気だるい独特な声。 私は、あの三味線の

          三味線の先生らしき高齢女性と、その友人たちの話 その2 仲のよい男性の退院

          三味線の先生らしき高齢女性と、その友人たちの話 その1 仲のよい男性の入院

          私(ヤマノ)が十数年来、通う道路端の小さな喫茶店。 最近、店でよく見かける70代くらいの女性は、会話の様子から、どうやら三味線の先生だった。 女性は小柄で品がよかった。か細い声で気だるそうにしゃべるが、会話は軽妙だった。 その女性は、店で見かける度に異なる相手と一緒だった。みな、同年代で、どの相手ともそれなりに話がはずんでいた。 多分、その女性がいろいろな相手をお茶に誘うんだろう。 何かの仲間うちなんだろうか、と私は思った。 私が初めてその女性を見かけた時は、落ち着いた男

          三味線の先生らしき高齢女性と、その友人たちの話 その1 仲のよい男性の入院

          昔、私の高校で起きた“マラソンボイコット事件”の話 その3 卒業式、新聞記事と30数年後の手記

          マラソンボイコットから一ト月半。 卒業式。 ゲストがきていた。 前の校長だという。 前の校長が卒業式に呼ばれる? 私は不思議に思った。 今日、その人が来てるということは、定年退職した人なのだろう。 前校長は登壇すると、まずは招待への礼を述べた。早速、懐の深そうな人柄が感じられた。 講話は知的で、かつ、何度か会場を揺らした。 人気アイドル歌手の歌詞を、弁士のような口調で流した。  ああ、わたしの恋は。  南の風に乗って走るの。 主旨は思い出せないが、笑顔の記憶になって今

          昔、私の高校で起きた“マラソンボイコット事件”の話 その3 卒業式、新聞記事と30数年後の手記