「おばけリバース」が「みさき工房杯」で最優秀賞を獲れた理由
自己紹介
ボドゲ制作サークル『タロ大』所属の沢庵と申します。現在は名古屋大学の4年生で、ゲムマの準備と卒論作成に追われています。
今回の記事では、ゲムマ2024秋出展予定のゲーム「おばけリバース」が、第4回みさき工房杯で最優秀賞に選ばれた理由について自分なりに考え、まとめてみました。全体的に主観を多く含むため、あまり参考にはならないかもしれませんが、最後までお読みいただけますと幸いです。
みさき工房杯に応募するメリット
その前に、みさき工房杯に応募するメリットについて話したいと思います。
メリットは制作費を全額融資していただける点と、外的評価を得られる点です。
みさき工房杯で最優秀賞を獲ると、制作にかかわる全費用を主催者のみさきさんに無利子で援助していただけます。しかも、売れなかった場合は返済義務がなくなるという借り手に超有利な条件つき。お金のない学生や若い人にとって、とてもありがたい制度です。
次に、外的評価について。同人ボードゲーム作品は面白さを確かめにくい、という課題があります。
例えば、デジタルゲームなら無料で体験版を遊べたり、漫画や小説なら最初の数ページを試し読みして購入を検討することが出来ますが、ボードゲームは実際に一通り遊んでみないとその面白さを実感しにくく、購入のギャンブル性が強いです。(逆にそこが魅力に感じるという人もいますが。)
そのような中、「賞」という形で「これは面白い!」という外からの評価を頂けることは、ネームバリューを持たない作り手にとって大きな保証・宣伝効果となります。これは他のコンペにも言えることなので、自分の作品を多くの人に知ってもらいたい!という方は、とにかく色んなコンペに応募してみましょう。
余談ですが、みさき工房杯で最優秀賞を獲ると、みさきさんが作品に関するポストを高頻度でリポストしてくれます。⬇️
これは例えるならレベル10の勇者がレベル90の剣士に助太刀してもらうようなもので、宣伝面でかなりの助けになっています。みさきさんには、この場を借りて感謝申し上げます。
理由⓵"表裏構築"というゲームシステムの考案
本題に移ります。
カードゲームで「構築」というと、大体の人は「デッキ構築」をイメージするかなと思いますが、本作「おばけリバース」は"表裏構築"という、新しい(当社調べ)構築システムを採用しています。これはカード2枚をセットで同じ透明スリーブに入れ、両面で1つのペアを作るという構築システムです。
強み
このシステムの強みは、少ないカードで多くの組み合わせを生み出すことが出来る点だと考えています。例えば、異なる12枚のカードから6枚のカードを選ぶ組み合わせは12C6=924通りですが、そこからさらに2枚のペアを3組(計6枚)作る組み合わせは、12C6×15=13860通りとなり、かなり選択肢が増えます。これにより、ユーザーはより少ないカードの情報量で、より幅広いカード構築を楽しめるというわけです。
そして、本作は"表裏構築"システムを存分に活かせるようなゲームデザインとなっています。交互にカードを出し合っていき、場に残ったカードの合計ポイントが高い方が勝ちというシンプルなルールですが、「相手のカードを挟んで裏返す」「相性が有利な色のカードで相手のカードを挟んで除外する」というアクションがあります。これらに各おばけカードの能力が加わることで、
・どのカードを裏返すか
・どのカードを裏にして隠しておくか
・どのタイミングでカードを出すか
といった駆け引きが生まれ、最後の最後まで展開の分からないゲームを楽しむことが出来ます。
(詳しくはゲムマ公式ページのルールブックをご覧下さい。)
このようなシステムを生み出せた点が、賞獲得理由の一つかなと思います。
理由⓶テストプレイ会
アイデアを形にして賞まで獲れたのは、テストプレイ会の存在が大きかったと感じます。テストプレイしていないゲームはゲームではない、という有名(?)な言葉がありますが、本当にその通りで本作はスタート段階では到底ゲームとは言えない"何か"でした。
前述した"表裏構築"というシステムは元々就活中に企画書で生み出したアイデアで、かなり自信があったのですが、実際にモック(テストプレイで使う試作カード)を作って遊んでみるとまぁ全然面白くない……。
そのような、数値化すると1程度のアイデアを、1→50に引き上げてくれたのが弊サークル内のテストプレイ会で、50→90に引き上げてくれたのが名古屋テストプレイ会でした。
弊サークルでは、主にユドナリウムでテストプレイを行っていました。これはオンラインでもテストプレイが出来るサイトで、インストール等の準備を必要とせずすぐに使えるので便利です。サークルメンバーにも有益なアドバイスを沢山頂き、ゲームとして成立するレベルまで持っていくことが出来ました。
名古屋テストプレイ会とは、月に一度名古屋市で開かれているボードゲームのテストプレイ会で、こちらはバランス調整やデザイン面で非常に参考になりました。他の方の試作ゲームを遊ぶことも出来、良い刺激になります。プロのボードゲームデザイナーの方も多くいらっしゃり、参加費500円が安すぎると感じるレベルです。
かくしてアイデアの原石をピッカピカに磨ける環境にあったことも、かなり大きかったです。
テストプレイで意識していたこと
そんなテストプレイ会において私が意識していことは、以下の2点です。
⓵ 最小要素からの足し算
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⓶ 最終的な引き算
⓵の『最小要素』とは、徹底的にカード効果を簡略化or無しにして、かつルールに関してもゲームがギリギリ成立するレベルまで削って生み出したゲーム要素のことです。これはみさきさんの受け売りですが、テストプレイはそもそも自分のアイデアを試す場であり、言わば実験です。その中で、好き放題自分が考えるカード効果をテストに持ち出すと、不純物が混じり、実験が成立しなくなります。
面白いルールを考えた際に、色々な種類のテストカードを作りたくなる気持ちをグッと堪え、まずは必要最低限の要素でテストをする。
そこから一つずつゲーム要素を足していき(足し算)、各要素を足した面白さを測っていく。このフェーズは言わば対照実験です。どの要素を追加すれば面白く/おもんなくなるのか。ここに最も時間をかけたと思います。
次に⓶の『最終的な引き算』。良い形のゲームにはなっても、どこかしらに不必要な要素が含まれています。その不必要な部分をちょいちょい削っていく作業です。うっかり削りすぎてもゲームの魅力が減ってしまうので、周囲の意見に耳を傾けながら、特に注意して行いました。
最終的に、戦闘力の高いゲームが完成した
そんな感じで、周りの皆様のおかげで最優秀賞を獲ることが出来たのですが、これにスーパー可愛いイラストが加わり、結果的にかなり強いゲームが出来たと自負しています。
デザイナーのまえはるさんには、この場を借りて感謝申し上げます。
いつもありがとう!
最後に、宣伝になってしまい恐縮ですが、本作「おばけリバース」は、2024年11月16,17日に幕張メッセで開催される「ゲームマーケット2024秋」にてサークル『タロ大』から販売予定です。以下のフォームからご予約頂けますと、今(10/17時点)なら確実に購入可能なので、この機会に是非よろしくお願い致します!
ここまでお読み頂き、誠にありがとうございました!これからアナログゲームを作ろうと考えている方や、実際に作り始めている方の一助になれば幸いです。
最後に、個人的に注目しているゲームマーケット2024秋の出展作品を数個載せて終わりたいと思います。