くれあい
愛したい人がいました。
愛してると伝えたい人がいました。
愛してると言ってほしかった人がいました。
その人は私の特別でした。
それでも
暖かく柔らかい匂いを纏ったあの人は冷たく塊となっていました。
たくさんの人から愛情を貰っていたあの人は喜んであの世に飛び込んでいきました。
後悔が曇天をつくりだして
私の中は愛情の代わりに
濃霧で満たされていました。
鬱々とした日々に嫌気がさしてきた頃、
久しぶりの、少しばかりの、青空が見えました。
夕空になりかけていました。
遠くに見えたそれに手をのばして
最高に、お洒落に、おめかしして着飾って
紅差し指で手首をなぞり、涙で口角をあげました。
そして気がついたのです。
ああ、そうか、こんなに簡単なことだったのか。と。
「いまからむかうね」
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