THE MELODY AT NIGHT, WITH YOU
久し振りに、キース・ジャレットのアルバム(表題)を聴く。
冒頭の「I Love You Porgy」が沁みる…
以前、別所哲也さんのラジオで流れてきて、ズギュン!と撃たれて愛聴盤になった。それまでキースの演奏をちゃんと聞いたことがなかった。
療養からの復帰作だから、彼のメインストリームからは外れるのかもしれないけれど…
こわばりがほどけていくような、柔らかなピアノの響き…
これを聞きながら、お風呂につかるのも最高のリラックスタイム。
三年前に大学の同級生の闘病を知った時、どうしていいか分からなかった。難しい病気で先が楽観できない様子だった。
「お見舞いを…」とは思っても、どうしたらいいの。
コロナ禍で会いには行けない。
現金を包む…っていうのは…なんだかちがう。そんなドライな方法をとりたくなかった。
それで…手紙と一緒にこのアルバムを贈ったのだけれど…
彼は気に入ってくれた。
「乾いた心に沁みた」と返信に認めてあったけれど、続けて「僕の今のお気に入り」として「自然や人の営みが奏でる日常の何気ない”音”です…」と教えてくれました。
「目を閉じて、じっと耳を澄ませば、そこに世界が広がる。
風、雨、河のせせらぎ、虫、鳥、車、飛行機、人の雑踏…音というかノイズに近いかもしれません。そこに、漂う空気感、におい、触れる物の触感。そして空想で創る自分の中の映像が相まって、いつまでもいつまでもそこに浸っていたい感覚に陥ります…」
それから二か月ほどで他界した彼。
さいごは、音楽よりも日常の営みの音がなぐさめになったのか…
日々の名残りをこころに刻むように耳を澄ませていたのか……
一音いちおん、愛おしむように一刻いっときを愛おしんで過ごしたのだろうな…。
生きることを大事にしたい、と思い出させてくれるようにもなった1枚…