"界隈"に翻弄された2年前の『ドラ1候補』(2024 .8.24)
「夏の甲子園が終わった。次はいよいよドラフトだ。」
アマチュア野球好きの思考回路はおおよそこんな感じではないだろうか。かくいう私も例外ではなく、甲子園の閉会式前にはスイッチが切り替わる。大学野球秋季リーグ戦を見る前から10月24日が待ち遠しい。
今年のドラフトで個人的に注目している選手の一人に山田健太(日本生命)がいる。
山田は2年前のドラフトで指名漏れの屈辱を味わった。立大から日本生命へ進みドラフト解禁となった今年、指名があるのか大いに注目している。
山田が味わった屈辱は通常の「指名漏れ」のケースとは事情が異なると思えるだけに、ことさら気になるのだ。
『ドラフト1位候補』からの指名漏れ
昨今、"アマチュアスカウト”らによるドラフトちゃんねるが活況を呈しているが、山田は2年前、チャンネル各所で『ドラフト1位候補』としてお墨付きを得ていた。
22年度を振り返れば、山田がまだ大学3年時、年明け早々に「世代屈指」「走攻守三拍子揃った大型二塁手」などドラフト候補おきまりの「枕詞」がついて回っていたように記憶している。
当時から「右の長距離」のニーズは大きく、ネット界隈のドラフト愛好者たちはDeNA牧が入団1年目からプロで示したパフォーマンスと同等の可能性を山田にも見てとったようだった。
「評価」を助長させたあの報道
そして2月、界隈の山田への「高評価」をさらに助長するニュースが入ってくる。栗山英樹侍JAPAN監督による山田の「飛び級」報道だ。
当時のスポーツ紙によれば、栗山監督は矢澤(日体大)と山田の大学生2人を3月開催の"ENEOS 侍ジャパンシリーズ2022”対台湾戦のメンバーとしてリストアップしていたという。
結局、コロナ禍により当該シリーズは流れたが、この報道により、ドラフト対象年はやくから山田の1位指名を有力視していたドラフト愛好者たちの見立ては、いっそう強固なものとなっていった。
ドラフト直前まで「評価」は揺るがず
実際この年の山田は、六大学での成績に波はあったものの、ドラフト上位候補に資するプロセスを歩んでいた。
7月のハーレムベースボールウィークに主将として選出され、8月には恒例の侍JAPAN壮行試合 高校日本代表対大学日本代表にも出場している。
また各メディアヘの対応もしっかりとこなしていた。ドラフト間近には、関西の某情報番組で阪神OBの野球評論家から直接の取材を受けるなど、ドラフトヘの心構えは十分、伝わってきた。
こうした一連の 「裏付け」を背景に、あくまで私の知る限りだが、ドラフト直前まで界隈の「山田ドラ1」のムードがしぼむことはなかったように思う。
知りたかった栗山氏の真意
結果として、山田は指名漏れとなった。22年ドラフトイヤーの初めからドラフト関連情報を追いかけてきたものから見れば、ネット界隈のドラフト愛好者たちの過大な評価に翻弄された印象は拭えない。山田と縁もゆかりもない自分がいうのもなんだが、不憫でならなかった。
そして今も疑問にのこったままなのが、山田を「飛び級」リストアップした栗山氏の真意だ。
意地の悪い見方をすれば、界隈を焚きつけた張本人といえなくもない。半年後に指名漏れする選手の実力をいったいどのように見積もっていたのか、非常に興味がある。
あの時の真相は、ひょっとして今年のドラフトを通じて見えてくるかもしれない。
栗山氏は今年から、北海道日本ハムファイターズのチーフオフィサーを務めている。球団運営とチーム編成の役割を担っておられるだけに、ドラフトに関してもなにかしらの関与はあるだろう。
栗山氏の目に今の山田の実力はどのように映っているだろうか。球団の指名候補リストに山田健太の名は入っているだろうか。
今年ここまで、ドラフト愛好者たちの山田への言及はあまり聞こえてこない。2年前と状況が様変わりした中で、山田は運命の日を迎える。
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