空の便り
わたしが現在よりずっとずっと若かった頃
あゝ まだ人生の苦渋を知らなかった頃
空はいつでも真っ青だった
そして地平線はどこまでもつづいていた
あの朝の光があつまる 土手の道の上で
やさしくてよわくてつよい 春の風に
いつまでも いつまでも吹かれていた
わたしが現在よりずっとずっと若かった頃
まだ 愛すことのむつかしさを知らない頃
空はいつでもとおく明るかった
そして海鳴りはどこまでもひびいていた
あの庭にある あかしでの老樹の下で
やさしくてつよくてよわい 春の風に
いつまでも いつまでも 吹かれていた