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【こぼれ落ちた断片05】パンの耳


いい?
この「断片」にはどうでもいいようなことしか書かないんだからね。
心暖まるエピソードとかを書く予定でもないし。
でも、私にとっては忘れたくない、大切な記憶なの。

・・・・・・・・

あれは確か、彼の家で初めてサンドイッチを作って一緒にお昼ごはんを食べたときのこと。
冷蔵庫に入っていた1斤69円の食パンにマヨネーズ(正確には、卵不使用の「マヨネーズタイプ」という商品)を塗り、レタスと冷凍のアジフライを挟むだけの簡単なもの。
彼はマリのいる前でひょいひょいと作り、
「キミも食べる?」
と言って、マリの分の材料も準備した。そして、
「自分で作って。」
とマリに作らせたっけ。

そのときに、
「パンの耳も平気なの?」
というようなことを彼はマリに聞いた気がする。

マリって、パン屋バイトをしてた貧乏学生経験のせいではないけれど、パンの耳が好きだった。
絹よりは木綿豆腐、こし餡よりつぶ餡、どちらかというと何でも歯応えのあるほうを好むから、単にその食感が好きという理由で、食パンは真ん中よりもむしろ耳のほうが好き。それって少数派、なのかな?

だから彼のその質問に、
「むしろ耳のほうが好きなの!」
って、たぶんちょっと熱っぽく答えた。

すると彼は、
「身勝手じゃないことはわかった。」
って納得したように言ったの。

マリは何も返さずに
「へへへ」
と笑った。なんか、認められたような気がして嬉しかったからね。でも心の中では、
パンの耳を(喜んで)食べるか否かが、身勝手かどうかのバロメーターなんだ!
と小さな花火が次々と上がった。

私の場合は、身勝手かどうかとか関係なく、単純に好きなんだと思うけどね。
でも、
「パンの耳、嫌い」
とか言って残す子を見て、「身勝手だな…」って感じちゃう彼の目線は痛くよくわかる。
それって彼も長男だし、私も長女だから、かな。
私の妹も、パンの耳を残す子だった。
もしかして、私がパンの耳が好きになったのは、妹の姿を「身勝手」だと感じて、「耳を残すのはいけないこと」って判断して、「耳って美味しいよね、この食感がね」って積極的に感じるようにした結果なのかもしれないな……。

同じ歴史を持つのかもしれない長男の彼と、改めて握手。


【このこぼれ話はどうしましょう課】

→彼と初めてサンドイッチを作ったエピソードの回に挿入予定。

☆【こぼれ落ちた断片】シリーズは、必要に応じて本文の中に回収していきたいと思います。


※ヘッダー画像はあざえみのるの広場様よりお借りしました。ありがとうございました。

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