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深呼吸が大事な理由〜認知症の家族の日記〜8
駐車場事件から5日後、また仲子さんは警察署に保護される。今度は自宅から南に15Kmの距離を南に南に…と歩いていたそうだ。1月の真冬に軽装だったため、たまたま警察署の近くを通った時に警察官が不審に思い保護してくれたそうだ。国道とはいえ夜になると暗くお店も少ない地域なので脇道に入っていたら見つけてもらえなかっただろう…。
警察署に迎えに行くと、低い声の年配の警察官に私への労いと共に、仲子さんをどうにかして1人にしない方法がないか※家族※で考えるようにと優しいお叱りを受け帰宅した。
私は運転しながら半分泣いていた。
仲子さん、きっと自宅で1人でいるのが寂しいんだろうな。ずっと1人でやってきて、できると思っていた事ができなくなって。だんだんわからない事が増えて。私の問いかけにも答えが来なくなりぼんやりと助手席の窓の外を眺めている。
私は深呼吸して
『さ!仲子さんなんか食べようか!お腹空いたでしょ』
そうゆう言葉はよくわかるようで
『餃子が食べたい』
と即答だった。
その次の日、いよいよショートステイの利用が始まった。仲子さんは母のように愚図ったり嫌がったりはしないのでそれだけでも助かった。
仲子さんはお泊まりとはわかっていなかったので荷物は後から運び入れることにして、先に仲子さんを施設に送り届けた。その施設はいつもデイでお世話になっているので向かって左がデイで右奥がショートの入り口になっている。昼間はデイの方で過ごさせてもらい、夜はショートの個室で預かってもらった。
仲子さんがデイでお茶を飲み始めた頃を見計らって荷物を運んだ。運ぶ際にショートの責任者の方と私で個室で面談させてもらい簡単に事情を説明した。姪っ子さんがお母さんの介護も大変なのによくやってますね…。今はお一人暮らしの方は多いけど姪っ子さんがダブル介護なんて、なかなかいないですよ。
と優しい言葉をかけられると泣けてしまう私。憎たらしい叔母なら投げ出してしまうんだろうけど、辛い事や面倒が重なって愚痴を吐きたくなるたびに母や祖母の顔が浮かび
『トワちゃん、仲子をよろしくね』
『トワちゃん、ありがとうね』
そう言われているようで投げ出せない。ある意味呪いなんですよぉ〰︎なんて言ってやり過ごしている。もう仲子さんの徘徊や失禁の多さ、姪っ子の立場ではできない手続きなどにお手上げ状態なんだけど、私が放り出したら仲子さんだけじゃなく、施設の方、その他のお世話になってる方、ケアマネ香山さんに迷惑がかかるから…。
だから深呼吸するしかないのだ。
※家族について※
ここまで私1人で仲子さんの介護を引き受けてるように書いている。下の叔母の末子さんにこれまでもどうしたらいいか、ずっと相談してきたが、末子さんは
『私じゃわからないから。私は運転もできないし何にもできないからトワちゃんよろしくお願いします』
と私に丸投げ。ただ、私1人では契約できない事や決められないこともあり、末子さんの署名や委任状をもらい窓口に行くこともあった。
要はどこに行っても相続人か後見人を連れてこいと言われてしまうのだ。
また、私の従姉妹(末子さんの娘の四姉妹)にもLINEで相談したり意見をもらったりしてきた。最初こそ返事をくれたり相談にも乗ってくれていたが、だんだんと『トワちゃんありがとう!』『手伝えなくてごめんね』『お任せします』と報告への返信だけになっていき、そのうち既読スルーされるようになってきたので私も報告するLINEを打つ手間を省きたいのが本音でだんだんと報告も減っていった状態だった。
そんな中でも、仲子さんの用事を済ませた後によく末子さんの自宅へお茶菓子を持って寄っていた。末子さんはお茶飲みができることが嬉しいようで私がただ遊びに来ていると思ってる?
【仲子さんを1人にできなくなってきたけど末子さん一緒に住んであげられない?】
【私じゃ決められないから妹の末子さんに決めてもらいたいんだ】
【今日はこうゆうことしてきたからね】
【今度はこうゆう手続きが必要だよ】
わかりやすく説明しても末子さんはわからないの一点張りで私にやって欲しいと何度も突き返されるのでとにかく報告だけはして帰るようにした。
ここまで結構走り抜けてきたんだけど、ひとまず仲子さんが数日ショートでお世話になることができ徘徊の心配がなくなっただけでもホッとできた。受け入れてくれたショートの方に感謝です!