正欲:Audible感想ノート
はじまりは児童ポルノ事件についてのニュース:しかし、この話からは想像していなかった真相が最後まで読むとわかる。
Audibleで聞いていたため、はじめに事件のニュースで出てきた容疑者の人名を詳しく覚えておらず、最後に、そこでつながったのか!となって面白かった。
面白かった点:誰にも理解できないような特殊性癖を持つ人々が、その性癖一点を隠したいがためだけに、人との関わり方、性格や人生観全てが影響を受けており、自殺を考えるまでに追い詰められてしまったり、異性から向けられる視線、同性から向けられる敵意に生きづらさを感じていること。
>ネタばれあり感想>>>>
何人かの登場人物が主語を交代しながら一人称形式で物語が進む。異なる人物の価値観から見た世界をみることができ、いかに相容れないかがわかる。
前半で切り替わる三人の視点の役割:
>世の中の常識・正義の視点:不登校の息子を持つ検事の男性
>誰にも理解されない特殊性癖を持つ当事者の視点:世間との関わりを避けるアラサー女性
>性的マイノリティに対して表面的な理解と正義感を示す視点:男性嫌悪の女子大生
中盤から後半にかけて、水という共通する特殊性癖によって登場人物たちが繋がっていくことがわかる。
新たに追加された2人の視点:特殊性癖を持つ当事者
彼らが繋がることで、光が見えていき、読者としてはようやく主人公に訪れた幸せな日常に安心。ここから繋がりを広げて、助け合っていく輪を広げようとしていた矢先に、事件が起きる。
ここで、事件について、最も差別的な”世間の目”を代表する人物が好き勝手に想像して話す、嫌な会社の同僚が登場します。これまでの事情を知っている身としては、せっかく幸せになれると思ったのに!とやるせない気持ちに。
小説の最後は特殊性的を持つ当事者の女性と、検事の男性が全く相容れない話をして終わる。しかし、その女性が、特殊性癖という繋がりを持つ同士である逮捕された男性に”いなくならないから”と伝えてほしいと言い、逮捕された男性の方も同じことを女性に伝えてほしいと言っていた。その結束の強さに検事の男性(彼は世間一般常識に縛られているために妻、息子との関係が悪くなっている)が羨望を持つところで終わる。
検事のうちの一人は、理解を示そうとしていた。しかしそういう声も、上の世代の圧力で消されていく。変わりつつあるが、変わろうとしない勢力に依然として負け続け、世界は相容れないまま終わるところにリアリティを感じた。