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PRスキル4「多段階配信スキル」

私はこれまでカレーの専門家とともに広報PRコンサルタントとして約20年にわたり、数多くの企業や団体に対してPR指導を300社以上に行い、企業取材を通じて多くの広報活動に携わってきました。その中で、特にメディアに頻繁に取り上げられる企業には、いくつもの共通したスキルや手法が存在することに気づき、まとめています。その実践的なスキルについて、具体的な事例を交えながら詳しくご紹介します。


情報を段階的に発信し、PR効果を最大化する広報のプロフェッショナルがよく使う手法が「多段階配信スキル」

広報活動の効果を最大化するためには、単発の情報発信だけでは不十分です。継続的かつ戦略的に情報を小出しにする「多段階配信スキル」が重要となります。これは、いくつもの話題を連続して提供し、関心を維持し続ける手法で、別名「ハリウッドアプローチ法」とも呼ばれます。なぜこの名前がついたかというと、大ヒットするハリウッド映画がこの手法を駆使して成功しているからです。

多段階配信スキルとは?

多段階配信スキルは、1つのPR案件を複数のステージに分けて配信することで、興味を段階的に高め、最終的に最大の効果を生み出す手法です。ハリウッド映画を例に取ると、そのPR戦略が非常にわかりやすいです。

映画PRのステージごとの詳細なアプローチ

<第1弾>映画制作決定の発表
映画のPRは、制作決定直後から始まります。ベストセラー小説の映画化権を獲得した、著名な監督や人気俳優の起用が決まったなど、制作初期のビッグニュースを第1報として発表します。この時点で関心を引き、話題の種を蒔くのが狙いです。
<第2弾>予告編やメイキング映像の公開
次に、「メイキング」映像や予告編を制作し、主要なシーンやキャストの表情を強調します。これをメディアに提供することで、視聴者の期待感を徐々に高めていきます。
<第3弾>試写会の開催とインタビュー
業界関係者向けに試写会を開催し、その模様をメディアで報道します。主演俳優や監督のインタビューも組み合わせることで、より詳細なストーリーや裏話が報じられ、関心が一層高まります。
<第4弾>公開直前の集中PR
公開1週間前からは、集中的なプロモーションが展開されます。キャストがテレビやラジオに出演し、舞台挨拶やイベントを通じてファンの熱量を最大化します。この段階で、観客の期待はピークに達し、映画館への動員が促進されます。
<第5弾>公開後のPR活動
映画公開後もPRは終わりません。公開後の観客動員数や興行収入をデータとして発表し、「歴代○位の動員数を記録」や「初週の売上○○億円突破」といった情報を発信します。これは「アトパブ」と呼ばれ、さらなる注目を集め、ロングランヒットに繋げる重要な要素です。


新商品や施設PRへの応用例

この「ハリウッドアプローチ法」は、新商品や新施設のPRにも非常に効果的です。具体的な事例として、横濱カレーミュージアムに札幌の人気スープカレー店を導入した際の戦略を見てみましょう。
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実際の企業にける多段階配信のPR展開の流れ

<第1弾>予告的発表
まず、「札幌スープカレーの名店が横濱に来る」という情報を、店名を伏せた状態で発表します。これにより、「どの店だろう?」という期待感を煽ります。
<第2弾>関連する情報提供
「ご当地カレー事情」という調査リリースを発信し、日本各地のカレーの多様性を紹介します。これにより、スープカレーという存在自体への関心を高めます。
<第3弾>正式発表
札幌スープカレーの名店「マジックスパイス」の出店決定を告知し、具体的な日程を発表します。
<第4弾>詳細情報の提供
「札幌スープカレーとは何か?」という詳細なニュースレターを発行し、スープカレーに関する理解を深めてもらいます。
<第5弾>記者向け内覧会
マジックスパイスの内覧会を開催し、メディアに店舗を紹介します。記者に実際の体験を通じて魅力を伝えることで、よりリアルな報道が期待できます。
<第6弾>開店当日のPR
開店日にメディアを招き、取材してもらいます。新規オープンのニュースとして広く取り上げられることで、注目度が一気に高まります。
<第7弾>開店後のフォローアップ
開業1週間後には来店者数などのデータを公開し、「好調なスタート」というニュースを発信します。これにより、さらに来店を促進します。
<第8弾>次の話題提供
「マジックスパイス卒業」と次店舗導入のリリースを発表し、話題が途切れないように工夫します。
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多段階配信の効果と活用ポイント

多段階配信スキルを駆使することで、メディア露出の機会を増やし、消費者の関心を継続的に引きつけることができます。単発のリリースではなく、複数のステージを通じて情報を発信し続けることで、ブランドの存在感を高め、最終的なPR効果を最大化します。


まとめ

このスキルを習得し、御社の商品やサービスに適用すれば、ハリウッド映画のような一大ムーブメントを起こすことも夢ではありません。ぜひ多段階配信を活用し、効果的なPR戦略を展開してみてください。


【参考情報】

井上岳久が講師で広報PRのスキル及びテクニックを伝授する

最高峰の広報研修機関「日本広報教育センター」とは?

日本広報教育センターは、企業の広報力の底上げを目指し、広報パーソンの教育や研修を展開する機関です。
広報の力によって、企業の価値は左右されます。広報を確実に展開させて企業価値を高めるためには、広報の基礎知識と実践力を持った広報パーソンの存在が不可欠ですが、国内にはその育成機関がほとんどありません。
そうした現状を踏まえ、日本広報教育センターでは、次の3つの事業を柱に、成果を出せる広報パーソンを育成していきます。

広報PRは「スキルとテクニックが必須!」をスローガンに掲げ研修及び講座を展開

<主な事業>
・広報PR研修事務局
 ~広報担当者や広報スキルを得たい方などを対象に研修を実施
・PRエキスパート資格
 ~広報の専門家を目指す方やキャリアアップを希望する方などに向けて  認定資格試験を実施
・戦略PR協会
 ~広報PRの専門家や実践者などが行う最前線の広報活動事例を紹介
日本広報教育センター https://nihon-prec.jp/>


◆ 講師紹介:井上岳久氏とは?

実は、井上岳久氏はカレー専門家に加え、戦略広報および戦略PRコンサルティングの分野で長年活躍している、広報界のトップコンサルタントです。最先端の経営戦略である「戦略広報経営」の研究と実践においても第一人者として知られ、その豊富な知識と経験で数多くの企業を支援してきました。中小企業診断士の資格を持ち、慶應義塾大学経済学部を卒業後、事業創造大学院大学では客員教授も務めています。

井上戦略PRコンサルティング代表として活躍中!

これまでに広報に関する著書を20冊以上出版し、コンサルティング支援を行った企業は300社を超えます。さらに、宣伝会議や経営合理化協会、広報専門学校などの教育機関で15年以上にわたり人気講師として教壇に立ち、広報人材の育成に貢献してきました。特に、宣伝会議主催の「広報担当者養成講座」では、広報の基礎から応用までを指導し、多くの企業広報担当者から高い評価を得ています。
その講演活動も非常に活発で、年間120回以上、大手企業の研修や広報講座で登壇し、実践に基づいた広報戦略の重要性と効果的なPR手法を伝えています。井上氏の指導を受けた広報部門は、確実に成果を上げ、企業の成長を支える強力な広報チームへと変革を遂げています。