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【白井未衣子とロボットの日常《反転》】7・供述の日《19》

※先に《共闘》ルートの『1・正夢の日』『2・復讐の日』を読む事をオススメします。
※予告なく変更のおそれがあります。
※設定上、残酷な描写があります。


※今回の章のみ、性的な匂わせが強い描写がございます。苦手な方はこの章だけ飛ばして下さい。


私の首が曲がる感覚がした。頭部の、目の焦点がズレていた。
私は相変わらずベンチと反対側の、エントランス用のドアの窓の外を見続けていた。
まっすぐから、斜めの角度から眺める形へと変わっただけ。

これだけでも、私は咄嗟の動きに驚いた。
私は何も動いたつもりがないから。
私の頭の上に、誰かの手のひらが乗っているのが伝わってきた。

私の長話を聞いてくれた、マルロの手だった。
頭上で手のひらを丸ごと当てたり、指だけ離れたりしていた。
この仕草も私自身に伝わっている。

彼は私の耳の近くで、こう言った。
「気持ち悪くないか?俺の手は。」

…ああ、そっか。
もしかして、私の話に共感してくれたのかな?
「終わった事だし、あなたが気にしなくていいのよ?」
「洗いざらい話す奴が、心配するなと言えるわけがないだろう?」
「…そうね。」

マルロの手は、私の頭を包み込んでいた。
HRという、地球人より強い生命体なのに。
今の、ポンポンと軽く当たってきている感覚は、『気持ち良かった』。
『気持ち悪い』と、私の過去の回想で繰り返し言ったから、逆の温もりをあげようとしたんだろうな。

でも、急すぎるよ。えらそうな態度はなりを潜めたけど、どうしていきなり優しくなったの?
私は気になった。

マルロに疑問をぶつけた。
かえって怒るそぶりもなく、素直に答えてくれた。

「俺も昔、女に出会った。それだけだ。」
「女の人に会っただけでそうはならないでしょ?」
「その女も、いわく付きの奴だったんだよ。」
「じゃあ、私も『いわく付きの女』って事?」
「似ていると思っただけだ。」
マルロの手は、ポンポンから撫でる方向に変わっていた。
上から下へ、スッと優しく。

彼は私の過去の回想を話した後の、自分の発言に戻った。
「どうだ?俺の手も、『気持ち悪い』か?」

私は自分の今の気持ちに、素直になった。
「…ううん。意外に『気持ち良い』わよ。あなたの手。」

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明日もお楽しみに!

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