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デザインフェスタで初めてライブペイントをした話

デザフェスイラスト勢の華、ライぺブースに初めて挑戦した記録です。反省ポイントも楽しいポイントもいっぱいあって、本当に楽しい2日間になりました。

前提

10数年間デジタルで制作してきたため、Ctrl+Zのない世界で絵なんて描けないと思い込んでいました。しかし、今年たまたまアナログ作品制作にトライする機会があり、手元にあったアクリルガッシュを使ってみたところ割と描けちゃった(個人の感想です)ため、「あれ?もしかしていける…?」と思ったことがきっかけです。

申し込みの前に

とはいえいきなり3メートル×2メートルの壁面に絵を描く自信がなかったため、Twitterで壁面をシェアしてくれる人を募りました。

ちなみにですが、私のフォロワーさんは9割がたリアルでの面識はありませんし、気軽にリプやDMをしあうような関係性にいる人はいません。そのため、仮にシェアしてくれる人が見つかったら超ラッキー、申し込み手続きや支払いは全部自分でやる、最悪バックレられても壁面の半分を既存作品で埋めればいいや、ぐらいの期待値でいました。

こんな緩い募集でも乗ってくれる人がいるのがTwitterのすごいところで、相互フォローさんと無事ブース代・備品代を折半して壁面をシェアすることができました。世界は意外と優しい。

8月ごろに申し込みし、ぶじブース番号の連絡が来ました。

事前準備(1)色を塗るテスト

とはいえ今までA4サイズの絵しか描いたことがないので、とりあえず大きな紙に絵を描くテストを始めることにしました。

手元にある20mlとかの小さい絵具チューブでは絵具の使用量がまるで足りないだろうと思い、また練習のために割高な絵具を使うのは嫌だなと言うケチ心も発動して、まずはリキテックスの安い大容量アクリル絵の具を買いました。

とりあえず家にあったおおきめの段ボールに下書きをしてテストをしました。

この後、線は黒のポスカで塗って仕上げました。

この時点で分かったこと

・思ったよりずっと絵具を消費する
・なので、混色するときはたっぷり絵具を作るのが吉 同じ色の絵具をもう一度作ることは非常に難しい
・一回色を塗っただけでは色むらと筆の跡が目立つので2回塗りが必要
・リキテックスベーシックは色が薄め

事前準備(2)線を塗るテスト

もともと線はポスカで塗ればいいと思っていたのですが、ポスカは意外と時間がかかること、また線の色に制限が生まれることから、筆で塗る方法を模索し始めました。

最初に購入したのは大きめの丸筆。こういうやつ↓

あまり長い線が引けないのと、線の強弱がつけられない(入り抜きが細くならず、全体的にぽってりしてしまう)のでダメでした。

じゃあ、先端がとがっていて、でも本体は幅広いやつがいいのでは?と思って平筆を買ってみました。こういうやつ↓

こいつは筆先の角度を調整することでかなり細い線も引けるのだけれど、一度に含める絵具の量が少ないのでストロークを描くのには難あり。一方、広い面積をむらなくベタっと塗るにはとても便利だったので、色を塗るように2本ほど購入。

で、一番良かったのがこれ。

 書道用の筆です!

しゃばしゃば手前ぐらいまで絵具を薄くすると穂先にたっぷり絵具を含んでくれて、ワンストロークでかなり長く引けます。

穂先が墨の黒じゃなくてカラフルな絵具で染まっているところにちょっぴり見慣れなさはあるものの、小学生から高校卒業まで書道教室に通ってきたこともあり、細いところは細く太いところはしっかり太く線の勢いをコントロールできるところも気に入りました。

ただ、このサイズの書道用の筆では細い線を安定的に引くのが難しいということがわかったため、書道筆のちっちゃい版っぽいなと思って面相筆を買ってみました。これも良かったです。

この時点で分かったこと

平面の塗りは平筆がよさそう
線は書道用の筆がよさそう

事前準備(3)下絵を元に絵を描くテスト

大きな絵を描いたことがないということもあり、ぶっつけ本番でゼロから絵を描くのはリスキーすぎる。ということで、今回はあらかじめ下絵を用意し、それを拡大しようと考えていました。

ということで、まずは手始めに、A4サイズで作成したイラストをA1サイズに拡大できるかを試してみました。

元の絵に15cm四方のグリッドを引き、これを目印にして元の絵を引き写していきます。

これがめちゃくちゃ難しくて途方にくれました。

A4サイズの下書きは画面全体を俯瞰しながら部分を描くことができましたが、A1サイズでは、そもそも強制的に超ズーム状態で描かざるを得ません。全体のバランスを取ることがすごく難しい。

特に、ふだんからフィーリングで描いている手や指がまったくうまく描けず何度もアタリを取って修正を繰り返す羽目になりました。

「手が描けない」という現象には、本番のライぺでもだいぶ苦しめられることになります。

色を塗って、今度はポスカではなく筆で線を引いていきます。

水で薄めると絵具がうすくなってしまって、筆跡は目立つし塗りの境目も隠せないし全然ダメでした。

もしかして、絵具をしゃばしゃばにして筆で線を引くという手法は透明度が上がるのでダメなのでは…?とちょっと嫌な予感がしました。が

リキテックスベーシックスじゃなくてターナーアクリルガッシュを使ったら余裕だということがわかりました。
上のツイートの画像だと、画面上半分の曲線はリキテックス 下のマットな部分がターナーです。おなじアクリルガッシュでも絵具の濃さってだいぶ違うんだなあということがよく分かった。

完成版がこちら

グリッドを引いて一生懸命模写しようとしたけど、ざっくり全体の構図ぐらいしか引き継げていないことがわかりました。塗っている色も全体的に鮮やかで、ふだんデジタルで何気なく選んでいる色を絵具で再現するのはめっちゃむずいということにも気がつきました。(ちょい彩度低めにするという調整がスーパーむずい)

ここでは「もうちょっと小さい平筆があってもいい」と言っていますが、実際にはもう2周り大きい平筆を広範囲のベタ塗り用に買い足しました。本番はこの絵の4倍のサイズで描くので、ベタ塗りを効率化する必要があります。

ここまでで分かったこと

・ターナーのライラックはしゃばしゃばにしても透けない
・リキテックスベーシックは隠蔽力が足りない
・グリッド模写やってみたけど超むずい、というかできない
・彩度低めな色を作るのは難しいから本番では鮮やかな色を使おう

リキテックスベーシックスの透けやすさがわたしの描きたい絵にあんまりあっていないということがわかったので、アムステルダムのガッシュを10本ほど、メインの線を引くためにターナーアクリルガッシュの紫のチューブを買い足し当日に備えることに。

当日(一日目)

11時開場のところを、9時ちょい過ぎに入場。

ちゃぶ台をレンタルしていたので、まずは物販の設営からスタート。ZINEとポストカードを配置して20分足らずで完了しました。

下書きにてこずる

で、1時間弱かけて20cm四方のグリッドを描き、下書き開始。

ここで完全に失敗しました。

パニくっててグリッドを正しく数えることができておらず、当初の予定の1.5倍拡大ぐらいのサイズになってしまいました。これは単に自分がアホなだけなのですが、このミスによって下絵に沿って描くことができなくなってしまい、完全にカンでアタリを取って描きちょっと遠くから引きで見て修正しと言うのを繰り返すハメになりました。

自分の感覚ではしっかり大きく描けているつもりでも、引きで見るとストロークがちっちゃくて全然イメージ通りじゃない、もっと大きく描かなくちゃ……みたいなのを延々やってたと思います。

下書きがなんとか完成した時点ですでに1日目の正午を回っています。下書きだけでめちゃくちゃ時間使っている。

下書き時点で分かったこと

・グリッド模写はグリッドを描くだけで時間を消費する
・グリッド模写は数を数えられないやつがやると破滅する
・でかい画面に慣れていないやつがいきなりでかい絵を描くのはとても難しい

ちなみに、グリッド方式を取っている別の方のやりかたを聞いたところ、鉛筆で線を引くかわりに糸を張ってグリッドを作り、下書きができたら糸を撤去するという方法を採用していました。
水平・垂直が担保しやすいうえ、線を引く手間とあとで消す手間の両方が不要になるのでとても合理的。次やるならマネしようと思いました。

色塗り開始

やっと下書きが完成したので、いよいよ色塗りです。

まずはパーツごとに色を塗り、最後に線を描いて仕上げという流れになります。

このステップでも思い返すとあまり良くない作業をしていました。

この時点で1日目の15時、だいぶ入場者も増えてきた時間でこの完成度です。

①白いところが多すぎ

小さいパーツや色の薄いパーツから塗っているので、まっしろな部分が多い。これが圧倒的な「未完成っぽさ」を強めています。絵のシルエットとかも全然見えてこないので、見ても楽しめません。
見る側もつまらないし、描く側は焦るし、全然いいことがないです。

ローラーなどを使ってまずは壁の前面に色を塗ることからスタートするという手順で制作しているブースもあり、「とりあえず白いところが少ない、色がたくさん塗ってある」というだけで安心感や進捗出ている感が出るということがわかりました。背景などの目立つ部分をまずはつぶすというだけでも、この未完成感を解消できたのではと思っています。

②色数多すぎ

絵柄を複雑なものにしたため、用意する色が多かった。これにより混色などの手間がめちゃくちゃかかり進捗が出ないという面もありました。

チューブから出してそのまま使える色をメインにするなどでかなり改善できるポイントだと思います。面積の狭い部分は20mlチューブで必要な色をそろえて使うというのもアリだったかも。

デザフェス1日目終了時点でこの進捗。

服の色はもともと白の予定なんでいいんですけど、背景部分に色がついていないため未完成っぽさがすごい。主観として当人もかなり不安感を持っていますし、この状態で写真を撮ったりシェアしたりしようと思う人はいないだろうな、というクオリティで折り返しとなりました。

ここまでで分かったこと

・面積が大きくて色のはっきりしたところから塗った方が良い
・細部から埋めていくのは悪手
・色をたくさん使う絵柄はライぺに向かない

2日目 線を引く

1日目の色塗りの進捗が悪すぎたので2日目も9時に会場に入って色塗りをスタート。

10:30(開場の30分前)、背景のブルーを塗り終えて色塗り終了。背景を塗ったことで一気に画面がしまり、「あっ、これを先にやっておくべきだったんだな」とわかりました。

ここでようやく線を引くフェーズに突入します。

書道筆、めちゃくちゃ良い!
上の写真はちょっと絵具が濃すぎる状態でざっくりと線を引いている状態です。ちょっとビビッてて線がガタついているけれど、まさに書道の感覚で線の強弱が簡単につけられます。

また、水含みが非常に良く、30~40cmぐらいのストロークは息継ぎ無しで一気に引けるのもとても良いです。

今回はこの書道筆というチョイスにかなり助けられました。ここで書道筆を使わず、二回り小さい面相筆(大)と平筆で描いていくことにしたら時間切れでアウトだったと思う。

ここからはひたすら線が引かれていくだけです。

2日の正午を回ったあたりでようやく顔や手指などができてきて、ようやく作品に何が描かれているかわかるようになってきた。

さらに30分でほぼほぼ線が引き終わり、残すは髪の毛の細い線と細部の調整のみとなりました。

ここから先は中サイズ面相筆にバトンタッチして引いていく。

完成!

線を引くのには2時間弱ぐらいしかかからなかったということになります。

結果、デザフェスでの時間の使い方はこんなかんじ。

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反省点

①下書きに時間かけすぎ

グリッド模写をしようとしたけど完全に失敗し、下書きでめちゃくちゃ時間を使ってしまいました。これは完全に慣れの問題な気がします。下書きなしでいきなりライぺという方法もありますが怖すぎてトライできない。

②色塗るのに時間かけすぎ

面積のちっちゃいところからちまちま塗るという方式がそもそも良くない。大きいところから色を付けていって、とにかく塗られた面積を大きくすると完成に近い感じがして精神衛生上に良くなるように思います。

あと、色数を意識的に絞った方が良い。たくさん色を使うにしてもグラデーションで混色の手間なく色が作れるとか、そういう工夫が必要。カラフルにすればするほど完成が遠のく。

③線細すぎ

書道筆で大勝利だと思っていたけど引きで見るとまだまだ線の強弱が足りない。もっと太いところは太く、重い感じの線を引いても良い。これも、遠くから引きで見るタイミングを確保しきれず、目の前のタスクをこなすことに没頭してしまった弊害だと思います。

④大前提として、来場者は作業中に話しかけにくい

1日目物販がぜんぜん動かなかったのはライぺに没頭していたせいだと思います。実際、パレットと絵筆を持って壁に向かっている人に声をかけるのはかなりハードルが高いし、なんか邪魔してるみたいで申し訳なくなっちゃうという人も多いのでは?

次回やるときは売り子さんも募集しようと思いました。

良かったこと

①目立つ

完成してから先は明らかに足を止めてくれる人の数が増えたと思いました。壁の絵が良いって思う人はZINEなどのグッズにも興味を持ってもらいやすいのかもしれない。

②描くのが楽しい

シンプルに、でかい筆ででかい壁に絵具を塗りたくる行為は楽しい。ストレス発散とかにいいんじゃないかなと思いました。

自宅にこのサイズのキャンパスを配置することはできないしアトリエや絵画教室などの制作空間もないので、こういうサイズで絵が描けるのは非常に貴重な機会だと思いました。

③達成感がすごい

一日目は10間、2日目も完成まで5時間ぐらいぶっつづけで集中して描いたこともあり、完成時の達成感と開放感がすごい。この面積を私の絵で埋めつくすことができたんだということを再確認するたびに自己肯定感が上がっていきます。

楽しかった!

反省点もいろいろありますし、めっちゃ疲れましたが、それでもライぺはとっても楽しかったです!

またやりたい。次の5月のデザフェスもライぺブースで申し込むつもりです。

受かるといいな!

おまけ

ミニミニ作品解説です



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