わたしにしなよ(2人用台本)
2人用声劇or朗読にお使いください。
スキ(ハートマーク)と、コメントまたはXのリプライにてご一報頂けましたら使用可能とさせていただきます。
大幅な改変、無断転載、自作発言はNGです。
使用される際は著者名、タイトルを何かしらの形で明言して頂けますと幸いです。
登場人物
鳴汰(なるた)男子中学生
蓮花(れんか)女子中学生
「こんこーん。さなさんいますかー?」
(鳴汰:モノローグ)
屋上のドアを開ける。
しかし、そこにいた少女は目的のひととは違った。
「…あれ、蓮花?さな見なかった?」
「見てない」
「あれっ。どこ行ったのかなあ」
(鳴汰:モノローグ)
学校では携帯の持ち込みが禁止されているから、探そうにも人をあてにするしかないのだ。
「ごめん、さな見かけたらおれが探してたって言っといて!」
(鳴汰:モノローグ)
そいじゃ、と踵を返してドアノブに手をかけると、後ろからくいとブレザーを引っ張られて仰け反る。
「うお、どしたれんか」
「…そんなにさなが大事?」
「……れんか?」
「いっつもさな、さなってさ。それじゃ鳴汰、さなのこと好きみたいだよ」
(鳴汰:モノローグ)
彼女の言うことの訳が分からなかった。
確かにおれはさなのことが好きだけれど、それとこれとはどう違いがあるのか。
「蓮花、なんかへんだよ」
「変?……変なのは鳴汰だよ。誰といたって結局そこにさなが来たらさなの元へ行っちゃってさ、わたしのことなんて見やしなくて」
(鳴汰:モノローグ)
その顔色と表情はどんどん凍りついていって、おれの知らない蓮花がそこにいる。
ようやく振り向いて顔を覗き込めば、不意に触れる柔らかい感触、そして衝撃。
一秒遅れて、口付けをされた事に気がつく。
「あっ、え、れんか?どうしたのさ、す、好きでもない人とこんなことしちゃだめだよ」
「……好きだからしたんだよ、ばか。ここに呼び出したのは、さなじゃなくてわたし」
(蓮花)ねえ、さなのことなんかほうっておいて、わたしにしなよ、鳴汰。
(鳴汰:モノローグ)
そう耳元で囁いて離れた彼女の目には、段々涙が溜まっていって、おれは、それをおろおろ拭ってやることしか出来なかった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?