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人って当てになるんだ

この話の続き。実際に、親友に話してみた。


橋を渡る

親友との電話を終え、vastlakukkelを食べ、私はcafeを出て橋を渡った。今まで見ていなかった方角の景色を見ながら、libraryに向かう。

…人って当てになるんだ、と思った。

悩んでいること

今日は週1の掃除で部屋を空けないといけない日だったが、昨日Tallinnから帰ってきたら朝ごはんを切らしていたので、cafe breakfastにして電話をした。私は聞き上手で、同じように聞いてもらうことは、カウンセラーでもない限りできない、友達には期待できないと思っていた。だけど親友は、きちんと聞いてくれた。

「大変だったねー!」
「そうなのよ。エストニアにいい会社があるって教授が言うから連絡を取ってみたら、連絡が来なくてさ。そうしている間に学生ビザも寮の契約も切れて。仕事と家が同時になくなるって結構なストレスだよね」
「言葉にしてみると、たしかに!!!」
「インターンが見つからないからクラスを取ろうと思ったら、それもキャンセルとか言うしさ」
「うわああー、どいひー!」
いつもこうして、私の代わりに怒ってくれる、感情豊か…というかリアクションのいい親友に、私は救われている。

そうしてひととおり私の状況を聞いたあとに聞いてくれた。
「Hazeが今一番悩んでいることは何?」
「…悩んでいること?」
親友にこうして悩みを聞かれたことなんてあっただろうか…
インターンは見つかっていないけれど探していけばいい。卒論もやる気はないけれど、やるだろう。卒業が延びたところでどうってこっちゃない。家の契約もサインしたところだ。出会いがほしいわけでもない。
「…特にないかも」
そして、今回一番話したかったことを伝えた。

「私、きついこと言うでしょう?だからそれを隠そうとして、相手をすべて受け入れようとしていたら疲れちゃって。言えないとなると、距離を取るしかなかったんだけど、その場で怒っても、仲直りできる方がいいなと思って」
「わかるなあ。仕事でも、よくそんなことまで言うよね、って言われるもの」

ほう、と思う。私がきついなら、親友もきついのかもしれない。だけどこの人は仕事で評価されて、いち早く出世して、部下までいた。仕事で怒っていても評価されるんだなあ、と思いながら、"それって子供みたいに怒るの?"とか、"口が悪いわけではなく、constructiveに言うんでしょう?"なんて聞く。

「親友にきついこと言われたと思ったことはないけどなあ。"その服エジプトで買ったの?"って言われたことはあるけど」
「ハハハハ!それはひどい!」
「だからって、別に嫌いになったりしないけどね。けんかとかする?」
「親とも、彼とも、するよ」
「それで仲直りするの?根に持つ?」
「根には、持つよ。笑」
「そうだよね!覚えてはいるよね。うちは母が被害妄想で、何か言うと責められたと思ってずっと根に持つからさあ。けんかはしたけど、そういうこと安全に言えなかったんだよなあ」
「言って終わる関係なら、それまでってことだよ」

変わった

「親友の娘ちゃんの名前、キラキラネームだなって思ったんだけど、怒ると思ったから言えなかったんだよ。笑」
「…Hazeに言われるなら、わかるかも」
私が言えずにしばらく連絡を取ったこれを聞いても、親友は腹を立てなかった。

そうして、親友の話を聞いていると、思うことがあるので伝える。
「大人だね」
「大人?」
「親友は自立していないと思っていたから。一人暮らしの家に親が掃除に来てたからね」
「自立してないよ~。今だって親と彼に家事やってもらってるし!笑」
「ハハハ。彼氏って親代わりなんだと思ってたけど、大人なんだね」
「子供みたいに怒ると思った?意外と大人なのよ」

その彼とは、相手の弱みを受け入れられる関係になっているらしく、聞いてみる。
「それはさ、最初はいいところが見えて、好きだと思ってつきあって、そのうちに悪いところも見えてきて、でも一緒にいたいと思うってこと?」
「相手のいいところしか見えていなかったときよりも好きじゃないわけじゃないよ。悪いところも見えるけど、それも可愛さだよ。尊敬できるところもあるしね。でもね、誰かと一緒にいなくても、いいと思うよ」
「…変わったね。"そんなんじゃ彼氏できないよ"って言ってたのに」
「それは若い時のことでしょう?一周回ったからね」
「確かに…10年以上前だ」

小中の時のこと、大学にいたときのこと。その頃の思い出で、親友はこうだ、と私は思っていた。それは過去としては正しいのだが、人は変わるらしい。それを見ようとせず、変わっていないと思っていたのは、どうやら私の方だったらしい。

そうして、仕事の話もする。
「本当は切り拓かないといけなかったんだけど、私は今まで、大変な思いをしたくなくて…何かやってるうちに解決したり、どうでもよくなったりしないかなって、すでにあるもので何とか埋めようとしてきたんだけど、それができなくて。都やらコンサルやらやったけど、やっぱりこれじゃないなって思ってて、新卒で入ったところで楽しく続けられる人たちが、うらやましくないけど、楽でいいなって思ってた。同じように満足できない自分を責めてたんだよ。
都市の仕事はしたいと思ったけど、具体的にはわからなかったし、応募してもだめだった。だけどやっぱり諦めきれなくて、勉強するためにこっちに来たの。興味ある分野はわかったし、舵を切るなら今だと思う」
「興味ある分野とは?」
「実はさ…私、交通、メトロとか、やりたいのよ。だけど東京メトロは既卒は受けられなくて、都でも交通局を希望したけど、かなわなかったの」
「やりたい仕事なんて、ないよね。私の業界は、あこがれて入って来て、これを変えたい!って思っている人が多いからさ。その中にいると、仕事は好きだけど、それほどの情熱は自分にはないなと思ったよ。キャリアパスについて聞かれるの嫌だったもん」
「私は今までやりたくてもできなかった経験が多かったから、それは取り払う必要があったけど、そうしたら見えて来たよ。情熱、親友にもあると思うよ。今は見えなくなっているかもしれないけれど、あるんじゃない?」

親友がごはんの買い出しに行き、料理をしている間も、私たちは話す。
「これからは時差がなくなるから、電話しやすくなるね」
「"実家に帰らせていただきます!"やりたくなったらうちに来てね」
「それはいい!実家がなくなったところだった」
「気軽に行ける親戚の家みたいなものが、海外にはないのよ。1からそういう関係作らないといけないの」
そうして会話を終えた。

再び、橋の上

これまで、友達と会うことは、気分転換にしかならなかった。
もちろんその間は楽しいし、名残惜しいし、逃避にはなるのだが、問題の解決にはならない。私が困っていても、どうせ誰も助けてくれないし、迷惑だろうし、うまく話も聞いてくれないし、私が聞いてあげないといけないしな…なんて思っていたから、不満にしかならなかった。
他人は、私の人生の責任を取ってはくれない。"インターン見つけるから、まかせといて!"とは言ってくれない。親友も、私にインターンを見つけてくれるわけではない。そういう意味では、やはり問題の解決にはならない。

だけど今回はちょっと違っていた。私の予想に反して、親友は一度も怒らなかった。お互いに、きつい?と思われることを素直にやり取りしたが、笑いもあり、今までにないつながりができた。勇気づけることも、やりたいことを宣言することも、これまで話さなかったことを話すこともできた。

こうして話をすることで、気が楽になったり、軽くなったり、元気になったり、ちょっと感動したりするなら、悪くない。というか、だからこそ人に話を聞いてもらうのかもしれない。人を頼るってこういうこと?これが醍醐味なのかもしれない。人を傷つけるのも人だけど、救うのも人…みたいな引用があったなあ、と思って調べたら、これだった。

他人は自分を傷つけてくる存在かも知れないけど、同時に、他人は自分を認めてくれて、傷を乗り越えていくための勇気を与えてくれる存在になってくれたりもします。

しいたけ占い

遊んだ後、話した後に、お礼を言うことがある。お互いに、親友じゃなくても。だけど、今回は、本当によかったな、と思いながら、ありがとう、と伝えた。

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