クミコについて
高校一年の時のクラスに
クミコとクミが合わせて5人いた。
私が通っていたのは某県立の女子校で、1クラスに当然ながら女子ばかり40人いた。
近隣の男子校の生徒にいつも待ち伏せされていたクミちゃんは、さらっさらのボブでおちょぼ口で、甘えた声で少し顎をあげてゆっくり話す、小柄でふんわりした子。
ショートヘアが似合うソフトボール部のクミは、お昼休みのみんなの会話の中心にいて、時々ふっと片方の口の端をあげて笑うカッコいい女子。クミコだけどクミと呼ばれていた。
クミコのミの字が実のクミコはいつも本を読んでてたぶん成績も良かったんだろうな。あんまり人と関わらないシュッとした人で◯◯さん と苗字で呼ばれていた。
クミコ、とそのままの名前で呼ばれていた陸上部のクミコは、背が高くて手足が長くて、黒目がちの目にはなんだか力があって、美しい唇はきゅっと引き結ばれて、日焼けした肌にはツヤがあって、とっても美しかった。
そして5人目のクミコは私。
どうしよう…ルックスも中身も当てはまる形容詞が見つからない。家ではクミと呼ばれていて、ほんとはクミって呼ばれたかったけど、カッコいいクミ優先だからダメ。中学の時はクミコって呼ばれていたけど、陸上部のクミコがクミコだからダメ。
その頃流行っていたらしいマンガの主人公がクミコで、愛称がクンちゃんだった。太いゲジ眉が似てるからって、私はいつのまにかクンちゃんと呼ばれるようになった。すごく不本意だった。
ついでにそのクラスの担任もクミコだった。
当時の流行りの名前だったのかなぁ。
結婚して、日本で何番目かに多い姓を名乗ることになった。フルネームでSNSなど検索すると何十人もヒットする。
先週ピラティスに行ったら、そのクラスのインストラクターさんが、「私も◯◯クミコなんです!」と。同世代のかわいらしい方だった。
二日前に、バレエの動きを取り入れた燃焼系エクセサイズの体験に行ったら、受付で「既に広尾のスタジオで体験受けてますよね?」と言われた。どうやらどこかの◯◯クミコさんもこの新しいエクセサイズに興味があるようだ。
去年インフルエンザの予防接種を受けたクリニックには、なんと生年月日まで同じ◯◯クミコさんがいたようで、住所や電話番号でようやく識別してもらえた。
同世代のクミコ達は行動パターンまで似てるのかもしれない。
今場面によって色んな呼ばれ方をしている。
クミコ
クミコ先生
クミコさん
クーミン
クミちゃん
クミクミ
クミ…
なんだかね、呼ばれたら
どれもくすぐったい気持ち。