ジブリから着想を得る/千と千尋の神隠しのハナ氏。
こんにちは。ハナ氏です。
まずは、なんとなくでもこのページを開いてくださり、ありがとうございます。大変光栄です。
今回は千と千尋の神隠しの建築のお話をしました。
お話は何度もみたことがありますが、"建築"という目線では今まで考えたことがなかったので、新しい発見がいろいろとありました。
こんなに細かなところまで取り入れて、ジブリの作画は成り立っているんだ・・・と大変感動しました。
お話を見る機会があれば、今回のことも思い出しながら、少しだけ違った目線でも鑑賞してみたいなと思いました!
ゆる~く読んでてもらえるとうれしいです。
はじめに。
千と千尋の世界観って、ちょっと不思議じゃない?シナリオも不思議だし、建物だって不思議だし・・
うちは設計事務所だからさ、千と千尋の神隠しの気になるところ・・建物とかを今回は話そうか。
違和感のある建築。
千と千尋の神隠しって、違和感がある建物が多いなと思っていて。
擬洋風建築ってあるじゃん。明治の頃に流行った外国の洋館とかを日本の大工さんがまねてつくったやつね。あの、”見よう見まね”っていうのが違和感を感じさせるんだろうなと思っていて。
リゾートスパと神様。
冒頭のトンネルの中入るシーンがあると思うんだけど、お父さんが「モルタル製か まだ新しい建物だね」 みたいな話をいっているんだよね。
調べてみたら、あのお父さんって建築業らしいよ。建築・・建設かもしれないけど、建築・建設業という設定らしい。90年頃にあちこち建てられて、そこからバブルがはじけて、みんな潰れちゃったみたいな発言もしている。
バブルの頃に流行ったというか、建てられたリゾート地のリゾートスパみたいな・・千と千尋の神隠しって、たぶんその話なんだろうなと思っていて。千と千尋の神隠しのあの舞台は、バブルの頃に流行って廃墟となったリゾート地だと思う。
当時、リゾート法という法律があって、それも1980年後半らしいんだけどさ。 だからリゾート法というのができて、地方もリゾート地化して。日本経済を全体的に底上げしようみたいな。そのためには、税制優遇があったりとか金融公庫とかの貸出がしやすくなった。その時に建てられたリゾートスパはバブルがはじけたことで潰れていき、そこが廃墟になったんだけど。たぶん、そこの建てたエリアというのが、神様が住むようなエリアを森林伐採して建てたということなんだろうな・・というのが、その話を見て思って。
一番最初、車でトンネルに行くまでの間にさ、大きな木があって鳥居が立て掛けられてるじゃんね。一見、罰当たりみたいな感じ?神木の下には祠(ほこら)がいっぱいあって。祠(ほこら)って神様が住む場所じゃん。それがよけられて、たぶんリゾート地がつくられたんだと思う。それで神様たちの保養所になったんだよね、人間の保養所から・・という話だと思う。
食堂街の話。
看板建築。
これは、いわゆる看板建築ってやつだよね。
正面だけデザインして、建物は普通の建物みたいな。
前回話したときは、いろんな建て方があるね、みたいな話したよね・・RCとか木とか鉄骨とか。でも、看板建築だったら、たぶん全部木造だと思う。木造の建物の正面だけ、ちょっと洋風にするために。
この空間って、時代がバラバラした建築がいっぱい入り込んでいるイメージがあるんだよね。
関東大震災の前と後で建築って結構変わっていて。
例えば、それまでは店舗付き住宅とかって蔵が多かったんだよ。
蔵って壁がすごい分厚い・・竹小舞下地があって、土壁があって、漆喰で。火に強いというのが蔵の造りなんだけど、地震で土壁が崩れちゃって、耐火要件が弱まっちゃったから、震災後というのは軽い木造とかが多いんだよね。それに、お金もない時期だから、RCとかも建てられない。
でも、見た目はハイカラなものも流行った時代だからさ。ちょっと洋風にしたい・・それで看板建築だよね。
ファサードだけきれいにして、じつは家っぽいみたいな。これは今でも店舗デザインとかでいくとよくある話だよね。
食堂街の空間って、雑多なデザインに見えるし、中を見ると赤い提灯が並んでいるんだけど、お店の中にはBARって書いてあったりするでしょ?ネオン管とかで。昭和感があるよね。
でも、この雰囲気がなぜかきれいだと思う・・その理由って、いろんな素材とか文字とか、時代に合わないものがありながら、柱が均等にあって、赤提灯で方向性があって・・こういったことが絡み合って、なんか建築的にきれいに見えるんだよね。
魚の顔をした要石?
食堂街の階段をのぼった上に石を置いてあるんだけど。
これたぶんね、要石という石だと思う・・魚っぽい顔をしているんだよね。
予想だけど、これナマズなんだよ。昔さ、地震起こる時に地中のナマズが暴れるみたいな・・そういう表現ってあったよね。
この要石って、地面の中にいるナマズが、暴れるのを防ぐために、石を刺したとかそういう話だから、昔から神社とかにあるんだよね。
太鼓橋の話。
なぜ太鼓橋なのか。
あと建築的に気になるのは、油屋に行くまでの太鼓橋あるでしょ?
両端からカーブして、一番上が盛り上がっていて、アーチ状になっている橋。太鼓橋って、人の世界から神々の世界にいくみたいな意味があるらしいんだけど。
建築目線で考えても、アーチの構造の柱って非常に合理的なつくり。
千と千尋の神隠しのこの橋って、結構な距離があるように見えるんだよね。
アーチになっていて人が歩く。その人の荷重がこの橋にかかったときに、それが全部圧縮力になるんだよね。
例えば、橋の一番盛り上がった部分に人が乗ったときに、両端の基礎とか地盤に対して力を分散することになるんだけど、もしこの橋を水平につくった場合は、梁せいの高さとか材料とかをしっかり検討しないといけない。それにたぶん、このアニメのこの距離をとばすには、結構なタチが必要になるんだよね。
太鼓橋にしている理由っていうのは、人の世界から神の世界に行くというのもあると思うんだけど、構造的にもこういうアーチ型っていうのは非常に理にかなっているなとは思うよね。
ちなみに、調べたら出てきたんだけど、群馬県にある伊香保温泉というところにある河鹿橋というのがモデルになっているらしいよ。
朱色だし、擬宝珠(ぎぼし)っていう装飾があるし、たしかに似ているよね。
伊勢神宮の宇治橋からも着想を得ている?
それから、これは完全に予測だけど、伊勢神宮の五十鈴川の上に掛かっている橋、宇治橋という橋からも着想もを得ているんじゃないかなと思っていて。 宇治橋って、もちろん木造なんだけど、橋の上の歩くところを支える 梁があるんだけど、梁の小口にちっちゃい屋根がついているんだよ。
木材って小口から水分をよく吸うから、腐らないようにするためにこういうちっちゃい屋根をつけていたりするんだよね。
で、千と千尋の神隠しの太鼓橋を見てみると、屋根・・あるんだよ。
あと、これ見てもらうと分かるけど、どちらも手すりの部分。
上が開口あいてて、下が2つあいている。一緒だもんね。
だから、僕の中の結論では、どことなく伊勢神宮の橋も背景美術の方とかは 一回見ているんじゃないかなと思って。
じつは木造ではなく鉄骨。
伊勢神宮って、下に柱があって・・川のところにね。支えていたりする。
千と千尋の神隠しはさ、そんな多く柱がない。宙に浮いているでしょ?
この距離をなにもなくとばすって不可能だろうなと思っていて・・
はじめは、木(もく)の橋だと思ったんだけど。よく見たら、下に鉄骨あるでしょう?千と千尋の神隠しの太鼓橋って、木造じゃないんだよ。
ちゃんと両サイドの断崖絶壁に基礎があって、RCで組んであって。そこに鉄骨をはわせて上の部分だけが木(もく)になっているという。
だから、それがジブリの建築って実現可能性が高いっていわれる所以なのかなと思ってさ。
太鼓橋の擬宝珠(ぎぼし)もなんだけど、擬宝珠(ぎぼし)って主要な親柱の上につけるんだけど、 (千と千尋の神隠しは)スタートと終わりにしかない。木造だった場合、構造的になんかおかしいなと思っていたんだよ・・擬宝珠が間にないから。でもそれは、たぶんこの鉄骨でとばしているからという理由だと思う。全部予測だけどね。
擬宝珠(ぎぼし)って、大体銅とか青銅でつくるんだよね。ちゃんと意味あるんだよ。親柱があって、木って小口から水を吸うから、そこに銅とか青銅をいれること・・かぶせることによって、錆たりする。その錆みたいなのが、抗菌作用で木材の腐食を抑えるというのがあるんだよ。
もちろん、飾りの要素もあるんだけど、材質っていうの?材料を銅とか青銅にする理由って、そういうものなんだよね。
だから、踏むところの木の色もさ、ちょっと淡い木の色しているでしょう?これはたぶん、ヒノキとかヒバとかケヤキとか・・まぁヒノキだと思うけど。 というのも、耐久性が高いから。雨とかに濡れても耐久性が高い。よく在来のお風呂をつくるときとか、ヒバとかヒノキとか使うんだけど、伊勢神宮の橋もたしかヒノキだったはずだからさ。そういうのもあって面白いなと思っていて。
油屋の建物の話。
ファサード。
油屋の正面もさ、昔ながらの右から左の文字だよね。
それから、唐破風(からはふ)もあるんだよね。神社とかにこういうのが多い。これも関東大震災後だと思うんだけど、劇場とか料理店とか銭湯とかにも使われてたらしいからさ。そういうのも踏襲してるんだろうなという・・より豪華にみせるためだよね。
内装。
内装ってさ、折り上げの格天井になってたじゃん。宮造り銭湯といわれるものの特徴だし、金屏風があったりとか金襖だってある。鬼の絵もあって、あの辺は割とうちの銭湯どうですか?みたいな感じで、みせるためのものなんだろうなという。神様をもてなすリゾートスパだから、そういうふうに豪華にしてるんだろうなという・・商売繁盛のためって感じだね。
微妙に違和感があるのと、違和感があるんだけど、ちゃんともしている。
すごい時代を感じるんだよね。いろいろな時代が混ざっているというかさ 特にね 昭和 大正 明治あたり その辺が混ざっていて
バラック建築。
従業員が住むところとか、釜爺のところってさ、なんか継ぎ足し、継ぎ足しでつくられてるよね。建物がトタンとか、あり余った材料で建築してる。
いわゆるバラック建築っていうんだけど・・そういうところもなんか時代的にあるよね。戦前戦後とか、震災前震災後とか。そういうなんか大きなことが起こったときってさ、建築って結構変わっていく。そういうときの混沌とした感じとか、きれいにスマートにいってない、ちょっと違和感のあるものとか。そういうのをいれ混ぜているんだろうなという。
公衆浴場の話。
建築業界では、銭湯とかでなくて「公衆浴場」っていうからさ。その中でも、公衆浴場にも種類があるんだよね。
簡単にいうと、公衆浴場って 2つあって。一般公衆浴場とその他の公衆浴場というのがあるんだよね。 一般公衆浴場というのは、銭湯とかのこと。その他の公衆浴場っていうのは、リゾートスパとか、健康ランドとか。
油屋は、リゾートスパっぽいつくり方しているなっていうのは見てて思った。 あとは、遊郭っぽいっていうかさ。建築的には面白いよね。
銭湯、リゾートスパっていうけど、実は法律がいっぱい分かれていたりするんだよね。そういうのって結構多くてさ、スナックっていうと、風営法かかるけど、BARだとかからないとかさ。それ以外の法律ももちろんいろいろかかるけど ・・
最近だったら、民泊もそう。民泊ってなんなの?それは旅館なのか、簡易宿所なのか。それによって法律も違うし、シェアハウスもそうだよね。寄宿舎なのか、集合住宅なのかといったら寄宿舎だからさ。世間で一般的に通っている名前の裏には、建築用途の種別の名前があるからさ。そこをしっかりおさえないと建築はできないよね
まとめ。
ボス:改めて、千と千尋の神隠しをしっかり見てみると、リゾートスパの廃墟に神様たちが住みついて楽しんでいるっていう・・そういうお話です。
どうだった?
ハナ氏:印象的なのは、建築的に・・屋根って家の上にあるものっていう 頭があったんですけど、橋の木を守るためのものってかわいいなと思いました。そういった細かいところまで取り入れているジブリも、改めてすごいなと感じました。
ボス:ああいう部分って、たぶん実際の建築にも使えると思うんだよ。本当に水をかけちゃいけない場所に、ああいう、ちいさな小屋根をつけてあげるとかさ。C.D.WORKERSでいう、ヌケ感だよね。
そういうアイデアを拾っていくというのが、大事だと思う。なので、ジブリの建築って僕の中のバイブルという感じだよね。そういうちょっとしたヌケ感をデザインするときに
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参考資料 ジブリの立体建造物展 監修:藤森照信、コンセプト・デザイナー:種田陽平 編集発行:株式会社スタジオジブリ 出版年:2014年7月25日(初版)・2016年4月1日(5刷)
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今回も前回と同様、少しでもイメージがしやすくなればということで、なれないイラストをかきました。薄目で見ていただけますと幸いです。
もっと詳しく知りたい方は、ぜひYouTubeをご覧ください▾
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\ ♡押すとcdw看板犬の「羅王(ラオ)」くんが喜ぶみたい /
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