友達と行った、何一つ上手くいかなかった旅を振り返る〜中編〜
日陰で腰を下ろしながら
次第に小さくなっていく船の背を見送る三人
それにしてもなんだろうか、この疲労感は
炎天下に荷物を運んだだけなら
きっとここまで疲れはしないだろうと
思いました
しかし、三人の目はまだ死んでいませんでした
渡航券売り場に目をやると
地元の人間らしき大人が複数人で
談笑しているのが見えました
僕らはおもむろに立ち上がり
そこまで歩いていき
「近くに、キャンプが出来る場所って
ありますか?」と尋ねました
そう、僕らは何が何でもキャンプをして
無理矢理にでも一泊二日にしたかったのです
でなければ、昨日の夜の不安と
朝に祈りを捧げたテントの神に示しがつかない
ここで諦めて、釣りとダイビングだけして
日帰り旅行に変更しようものなら
きっと何かしらの形でバチがあたる
多分、履歴書の最後の最後に書き損じたりする
自分達でも色々と調べたものの
やはり地元の詳しい人に訊くのが
一番正確で安全だろうと思いました
すると、犬を抱えた坊主頭のおじさんが
「ここから10分車を走らせたところに
キャンプ場があるよ
釣りとダイビングなら、またここまで車で
来てやったらいい」と教えてくれたのでした
捨てる神あれば拾う神あり
不幸中の幸い
人生万事塞翁が馬
おじさんに後光が差して見えました
実際には照り返す日差しがおじさんの頭に
反射していただけでしたが
いいのです、そんなことは、後光、後光
僕らは仏のおじさんに深く感謝をし
早速、車に荷物を積み込みました
500mlのジュースと15分ぶりの
感動の再会を果たした僕は
キャンプ場に電話をかけ、予約を取り
ナビを起動
三人を乗せた車は恐ろしいほどの手際で
漁港を去り、キャンプ場へと向かいました
ナビに従い、キャンプ場へと到着した僕らは
駐車場に車を止め、予約の電話の際に
立ち寄るように告げられていた
事務所へと歩いていきました
そこで事務員さんに
1.敷地はブース毎に分かれていて
一台までなら車を横付けできる事
2.事務所は18時に閉まるので
レンタルしたい物があればそれまでに
借りに来る事
3.21時以降は騒がない事
4.22時に駐車場の出入り口が閉門する事
等の説明を受けました
再び車に乗り込んだ僕らは
自分達のブースへと向かいました
道は細く、向かい合うブース同士の間には
車がギリギリ対向出来るかどうかと
いうほどの幅しかありませんでした
そこをそろそろと徐行で進んでいた最中
右前のタイヤが何かを捉えました
捉えて、おそらく踏み越えました
家族連れの団体の何かしらのものを
轢いてしまったらしい
助手席から外を見ると
お父さんらしき人がこちらを怪訝そうな表情で
睨んでいる
どうやら、お子さんの水鉄砲がブースの外に
出ていて、それを轢いてしまったらしい
謝罪すると、引き攣った笑顔で
「大丈夫ですよ」と許してもらえた
本当に申し訳ない
気を取り直して、事務所でもらった
地図を見ながら僕らのブースを確認する
「なん...だと...」
なんと水鉄砲ファミリーの前である
マジか、なんじゃこれ
地獄のような空気の中
テントを車から下ろして
いそいそと組み立てている間
ずっとじとっとした視線を送られ続ける
ハメになりました
いや、わかるけども
そんな「10:0でお前らが悪い」
みたいな視線やめてくれよ
水鉄砲敷地から出てましたやん
それにこちとら友ヶ島行きの船を見送った
あの瞬間からずっと気が動転しとるんじゃい
テントの設置が終わり
ふと、水鉄砲ファミリーの方に目をやると
子供たちは再びキャッキャと水鉄砲で
遊んでいました
壊れてなかった、よかった
よく見ると、スプラトゥーン仕様の
水鉄砲らしい
そりゃ壊れない
車に轢かれたくらいで壊れる武器を
ブキチが売るわけないんだから
俺は何を言ってるんだろう
その後、釣りとダイビングの
装備を携えた僕らは海水浴場横の
岩場へとやってきました
が、荒波
これはひょっとしたら死んじゃうのでは?
死なないにしても魚獲るとかの
話しじゃないのでは?
結果、2時間で得た物は無く
代わりに網を1つ失いました
後、怪我もした
海はこわい
午後18時、友ヶ島行きの船を見送った
駐車場へと戻ってきた僕らは
釣り竿に糸を通していました
ここでなんとしても魚を手に入れなければ
美味しいヤミー❗️✨🤟😁👍✨⚡️な魚に
感謝❗️🙌✨🙌✨🙌感謝❗️🙌✨🙌✨🙌
しながら
ハッピー🌟スマイル❗️❗️❗💥✨👉😁👈✨💥出来るほどの晩飯にしたい
堤防から釣り糸を垂らし、ただ待つ
すると、海面の向こう側、見えない場所から
たしかに竿を引っ張る力を感じ
リールを巻きました
次第にうっすらと浮かび上がる魚影
かかっている!確実に!
陸にあげると、釣り針には小さな鯵が
かかっていました
ここまで何も上手くいっていない旅に
やっと吹き始めた、好展開の風に
某ハッピーセットのCMの少年少女達が
「釣れたあああああ!!!!」と
全員の胸の内で叫んでいました
少なくとも俺の胸の内では
もうめっちゃ叫んでいました
そこからはもう入れ食い状態
ひとたび釣り糸を垂らせば
10秒もしないうちに竿に当たりがあり
欲をかいた僕らは時間を忘れて
釣りまくったのでした
そして、帰り支度を終えて
車に乗り込んだのは20時半
思えばこの日、まともな食事をしておらず
腹ペコだった僕らは
急ぎ、キャンプ場へ戻り、バーベキューの
準備をするため
再び、この漁港から車を走らせました
続く