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残念と後悔
茨木市へ向かう阪急電車
4人掛けと2人掛けの席が並ぶ車両が続き
私はどこに座わろうかと席を探した。
できるだけ、心地良さそうな人の隣に座りたいがなかなか見つからない。
ふと、あそこが1番よかったかもと思えた席があったので少し引き返し、4人がけの席に座った。
前を見ると女性が文庫本を読んでいる。
小川糸さんの『きらきら共和国』だった。あっそういえば、小川糸さんの著書気になっていたんだと思い出し携帯の”読みたい本リスト”にメモをした。
そして手に持っていた荷物をしまい
私も読みかけの図書館から借りた本を出した。
その時隣に座っていた女性もほぼ同時に本を出した。
買ったばかりだと思われるブックカバーに輪ゴムがついた文庫本だった。
彼女も本を読むのか。
私の座ったこの4人がけの席は
前の女性も右隣の女性もそして私も、本を読んでいる。
この時代、周りを見れば携帯電話を触っている人ばかり。
その車両全員が携帯電話を触っていると言っても過言ではない。
それが、この小さな4人席ゾーンの3人が本を手にしているなんて、私にとってはパラダイス。
さて、
私の右前の席が空いている。
ここに誰が座るんだろう。
特急は次の停車駅に停まった。
おじさんが入ってきたが通路を挟んで左側の4人席の方に座った。
私の右斜め前には後からきた女性が座った。
あれ?なんかここの空気違うぞ という顔をしたように思う。
3人とも本を開いていることになんとなく違和感というかそういうものを感じたみたいだ。
しかしその女性は私の期待通りに本を出すことはなく、携帯を取り出した。
『ちょっと連絡し終わったら、本取り出すよね?
本出してね。どうか本読んでください。』
そう私は願ったが、願いは届かず
手に持った携帯をそのままずっと触っていた。
あと一歩でビンゴが揃ったのに。そんな悔しい気持ちだった。
残念!思わず声に出して言いそうになった。
左側に座った先程の男性が気になり見てみると
なんと彼が本を開いていたのだった。
そっちかい!
それにしても、右側の女性の文庫本のタイトルはなんだったのだろうか?
彼女は表紙を開いてから1ページづつめくっていっていたので、
横目で、タイトルを、タイトルを見せてと心で叫びながら見ていたが結局タイトルは分からずじまいだった。
もうこれっきり会うことはないだろう彼女に
茨木市駅に着く寸前で聞けばよかった(そんなことしたら絶対ドン引きされる)
ビンゴが揃わなかった残念さより
タイトルを聞けなかった後悔の方が尾を引いた。