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あの時の朝食
私の文章
あなたの文章には「湿度」を感じる
これは
ある人から言われた言葉
うれしかった
湿度
まさしく 私から出る言葉には「湿度」がある
潤い でもなく
湿気 でもなく
湿度
そこに含まれるのは 微妙な人間くささかな
決して完璧で綺麗じゃない
湿度のある文章
おじいちゃんとゆで卵
私が小さい時
時々祖父母の家で朝食をとることがあった
かなりモダンな おじいちゃんおばあちゃんで
白いエッグカップにのせられたゆで卵
トースト
そして 私のために入れてくれたあまいミルクコーヒー
オレンジ色のカップ&ソーサだった記憶がある(ああ 捨てなきゃよかったなあ・・・)
普段家ではコーヒーを飲めなかったので
この時だけの格別の味
おじいちゃんはいつも丁寧に
ゆで卵のうえから1/3ほどの周囲をぐるっと
スプーンでコンコンコンと叩き
できたヒビにスプーンをすべりこませ
ぱかっと まるで蓋の様に
卵を開ける
ほんの少し お醤油を垂らして
半熟になっている黄味を
スプーンですくって口に運ぶ
私は まねをしていつも同じように
半熟ゆで卵食べに挑戦するのだが
おじいちゃんの様にうまくいかない
まず 卵の周囲をコンコンコン がうまくいかない
おじいちゃんの あの ゆで卵を食べる姿を
ある種の尊敬のような気持ちで
毎回眺めていた
窓から差し込む朝日そして湯気
冬
東向きの窓から
朝日の温かい光が降り注ぎ
ミルクコーヒーから立つ湯気と香り
まさしくそこには
居心地の良い「湿度」があった
ゆっくりの流れる時間
今私が家でいる時間の大半を過ごす場所は
あの時のダイニング
今でも変わらず 朝 太陽の光は降り注ぐ
おはよう と言いながら
目を閉じて
あの時の光景を思い出す