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線1本からのデザインーできることを自信にする「シブヤフォント」ー | インクルーシブデザイン事例インタビューVol.8

インクルーシブデザイン事例インタビュー第8回は、一般社団法人シブヤフォントです。「シブヤフォント」とは、渋谷でくらし・はたらく障がいのある人と、渋谷でまなぶ学生が共に創り上げた文字や絵柄をフォントやパターンとしてデザインしたパブリックデータです。シブヤフォントは、障がいのある人が描いた文字や絵をフォントやパターンデータとして社会に提供し、企業や団体に使ってもらうことで、 渋谷および社会全体を元気にしていく活動に取り組んでいます。
インタビューは、シブヤフォントが出展した「国際福祉機器展」会場に伺いシブヤフォントのアートディレクターであるライラ・カセム氏に話を伺いました。

障がいがある人が書く文字をフォントに。学生のアイデアから生まれた「シブヤフォント」

ーシブヤフォントが生まれたきっかけをお聞かせくださいー

ライラ氏:2016年、渋谷区長が「渋谷ならではのお土産を作ろう」と渋谷区のいろんな部署に呼びかけ、これに障がい者福祉課が手を上げました。そして、すでに世田谷区などで福祉施設でのものづくりをテーマに商品のパッケージ制作や販売を行っていたシブヤフォントの現共同代表の磯村に声がかかりました。
どんな商品がいいだろうと関係者で考えていた時に、磯村は講師をしていた桑沢デザイン研究所の生徒たちを巻き込み、学生たちにアイデアを募りました。たくさん集まったアイデアの中に障がいがある人の書く文字がユニークなので、この文字をフォントにして商品化をするというアイデアがありました。選考の結果、このアイデアが面白いと選ばれGOとなりました。

ーライラさんはどのような経緯で参加されたのですか?ー

ライラ氏:アイデアが決まって、翌年からシブヤフォントはスタートしましたが、障がいがある人と言っても様々な特性を持った方がいます。
文字を書くことはできないが、線を引くとか色を付けることはできるという方もいます。それならば、文字だけでなく絵や線などを含めた世間的に言う「アート」もやろうとなったんです。
その時私は、障がいがある人が書かれる線や色をどのようにデザインへと変換したり、彼らの創作活動を支援できるのかを自身の研究活動で模索していました。
丁度その前にお互い出席していた展示会で私は磯村と知り会っていたので、そのつながりで、障害福祉の現場でアート支援やデザインの企画をしていた私に相談が来ました。
私はグラフィックデザイナーなので、お話を伺って、障がいがある人が書かれた線や絵がデザインに活用できるイメージがつくレベルまで持って来ることができればデザインとして活用できる。であれば経験問わず誰もが参加できると一気にイメージが湧きました。そして、その2017年から正式にシブヤフォントに参加することになりました。
私の役割は、アートディレクターとして、デザインを担当している学生と福祉施設をつないでデザインのディレクションやアートワークのファシリテーションをしたり、めちゃくちゃ応援したりしています(笑)

シブヤフォントの参加アーティストと学生のの共同制作の様子(シブヤフォント提供)
シブヤフォントの参加アーティストと学生のの共同制作の様子(シブヤフォント提供)

ー社団法人化するときはどんな思いがありましたか?ー

ライラ氏:私は、参加する人たちにはより自分がプロジェクトの当事者であると感じて参加して欲しいと思っています。文字や線を書く障がいがある人であれば「シブヤフォントの参加アーティストです」、デザインで参加する学生であれば、「シブヤフォントのデザイナーです」と。そして施設や運営含め、関わるメンバーがワンチームとなれるように、2021年にもともと委託プロジェクトだったシブヤフォントは一般社団法人化しました。

ー社団法人化後の変化などはありましたか?ー

ライラ氏:ありました。大きく変わりました。まずはオフィスというシブヤフォントの拠点ができたこと。
ギャラリーも兼ねているので、興味ある人を招待し、足を運んでもらい、商品や作品(パターンやフォント)を観てもらうことができました。それによりその場で商談もできるようになりました。
また、シブヤフォントを知った他の地域からも声をかけていただく機会が増えました。私たちも待っているのではなく、まず行動して興味や関心を持っている各地域の福祉施設と積極的に新たな取り組みを始められるようになりました。それが「ご当地フォント」にもつながっているかと思います。

ー名前にも「フォント」を使っていて何か特別な思いとかあるのかなと感じましたー

ライラ氏:フォントだけでなくパターンもあるので「シブヤグラフィックス」という案もあったのですが、フォントは誰でも利用するので。フォントと名付けることでより多くの人に使ってもらいたい、という想いを込めています。
パターンだけでなく、フォントのひとつひとつにも名前とストーリーがついているんです。Googleフォントにも3つほど登録されていますよ。個人的にはフォントは100種類ぐらい登録されていても良いとかなと思うんですが・・・(笑)。

フォントのパターンデータの見本(シブヤフォント提供)
フォントのパターンデータの見本(シブヤフォント提供)
フォントのパターンデータの見本(シブヤフォント提供)
フォントのパターンデータの見本(シブヤフォント提供)

大切なのは、福祉施設の支援者とアーティストが当事者として主導権やオーナーシップを持つこと。

ーシブヤフォントの活動を進めていく中で困難だったことはありましたか?ー

ライラ氏:もともと共創のデザインプロセスを組み立てることが好きなので、悩みはあってもめっちゃ難しいと感じることはありませんでした。
よく当事者を含めたデザインプロジェクトにおいては、デザイナーが参加してから、デザイナー以外の人(デザインの対象ともなる当事者)がそのデザインや制作物に実感を持たないままプロジェクトが進み、解決策が生まれるといったことが見られます。なんでだろうと思った時にデザイナー以外の人たちが自分たちが持っている価値そのものに気づいていなかったり、発信できていないのではないかと思いました。

なので、私がシブヤプロジェクトを受けた時は、まず現場の人が主導権を持てるようにファシリテーションすることが大事だと思いました。何故なら、シブヤフォントのプロジェクトは、福祉施設の「支援スタッフ」、施設にいる「参加アーティスト(障がいがある人)」といういわゆる現場の人たちと「デザイナー(学生)」の3名で1つのチームを形成して進めていきますが、私としては、デザインされたものに対して現場の人たち(福祉施設の支援スタッフと参加アーティスト)が、オーナーシップを持ち、何よりも自分たち自身が感じている福祉の現場の可能性や魅力を伝えていかなければいけないと思うからです。
デザイナーにも福祉施設の現場の人とコミュニケーションを深めて作っていくことが大事だと訴えかけています。デザイナーには、「あなたたちは人を助けるんじゃない。一緒に歩んで行くんだ」と。

ー共創プロジェクトにおいてのファシリテーションでは、工夫する部分の大変さもあるように伺えますー

ライラ氏:福祉施設とデザイナーなど多分野による共創は、解決策とか制作物においてもパワーバランスのような変な上下関係を生まないようにしていくことが大変だと思います。

例えば、デザインが出来上がってから 福祉施設の人たちが自分たちのイメージと違うと私に言ってくることがあります。その時は私は言うんです。「自分たちで伝えないとデザイナーは分からないよ」って。
そして、デザイナーも自分が分からないことは聞く。自分の考えを言葉にして相手に伝えるようにと言っています。

また、プロジェクトの途中でデザインで悩んだ時など、みんなが私に正解を求めて来るようなこともあります。私は、とりあえずやってみてと促して自分たちで試行錯誤してもらいます。私がこれをやってと言ったらただの命令や暗記になってしまうので、その時は、ゆるい鬼教官役です(笑)
後でどこが良かったか、どこが悪かったかをそれぞれが感じてお互いに意見し合って振り返りをして、それを次に生かしていくようにしています。

福祉施設の支援者とアーティストである障がいがある人、デザイナーの3名の上下関係のない関係性が良いデザインを生む

ー福祉施設の支援者、アーティスト、デザイナーの関係性が重要なんですねー

ライラ氏:はい。良いデザインにするためには、福祉施設の支援スタッフと参加アーティストである障がいがある人、そしてデザイナーである学生の関係性がとても重要なんです。
デザイナーの学生には最低5回は現場の福祉施設へ支援スタッフと参加アーティストに会いに行くようにしています。1回目は遠慮しがちです。どこかで障がいがある人には聞けない、要求できないといった状況も見られますが、一緒に会う機会を重ねていくとお互いが遠慮もなくなり、徐々に意見し合いながら突破していきますよ。

福祉施設の人とデザイナーがお互いに任せず、義務とも思い過ぎないこと。お互いが遠慮などなく直接コミュニケーションを取って行くことを大切にしています。

シブヤフォントの制作は一年サイクルなので、福祉施設とは毎年、一年を振り返りレビューをします。そして来年どんなデザインスタイルをためしてみたいか、どのメンバー(障害のある参加アーティスト)に参加して欲しいかを意見交換をします。こういう状態になるのに数年かかったりしますが、徐々に福祉施設でも要望を出してきていて、今では各施設のデザインスタイルやらしさが出来上がってきている気がして嬉しいです。

私は、「福祉」は世の中の平和のキーとなる気がします。福祉にある精神が。みんながお互いもっと頼りあっていい気がするし、頼るべきだと思います。変にみんな誰かには頼れない、自分がやらなければ、となるから孤独が生まれる。頼る相手の存在を知るだけで、全人類の人生が豊かになる気がします。なので、シブヤフォントでもお互いができることを明確にして、伝えて、とことんワンチームになって進めていきます。

ーシブヤフォントを知った地方からも問い合わせなどがありますか?ー

ライラ氏:地方からもワークショップのファシリテートの依頼が増えています。最近では長浜でインクルーシブデザインのワークショップを行いました。シブヤフォントで得たノウハウを他の地域で活かしています。

商品に採用されたご当地フォント
商品に採用されたご当地フォント

シブヤフォントが広がっていく過程での周囲の変化、社会の反応

ー地方からも声がかかるようになったというお話がありましたが、シブヤフォントのプロジェクトを進めていくなかで、周囲の反応の変化など感じられますか?ー

ライラ氏:商品化された後の反応としては、実際にシブヤフォントやご当地フォントが採用された商品を手に取り、見てくれた人が、普通に「かっこいい」とか「かわいい」と言ってくれています。そして後から「あ、これ障がいがある人が作ったの?」みたいな反応をしてくれるんです。
フラットにいいデザインとしてみられているのが嬉しいです。なんで今までこういうのなかったの?って言ってくれたり。
私も商品としてのクオリティを担保するため、ディレクターとしてもクリエイティブに対しても遠慮なくデザインの過程で「もうちょっと」ってデザイナーと参加施設にフィードバックもしています。

地方でもパターンやフォントが採用された子供服がしまむらなどで売られています。シブヤフォントの参加アーティストが手がけたものが日常生活の中に入り込むことが大事だと思います。
その影響として、採用された参加アーティストの商品がお店に並ぶ。それを買いに自らお店まで足を運ぶ。それだけでも本人の行動範囲が広がります。ご家族も、「うちの子の作品がこの商品に使われたの!?」と驚いたり、びっくりしたり。本人だけでなく参加アーティストの周りの人たちや世界も変化してきたと感じます。

シブヤフォントは究極のコラボ。
「線一本でもデザインできる」「私にもできる」という自信や想いを広げたい

ーライラさんは、「障がいがある人とアート、デザイン」についてどのように考えられますか?ー

ライラ氏:世間で言われている「障がい者アート」って素晴らしいけど、何か一つのものに社会が確立させようとし過ぎている気がします。特別なものにし過ぎてしまっている気がするんです。それが、福祉施設の支援スタッフや障がいがある人たちにとっては大きなプレッシャーになったり、苦手意識につながってしまうケースもあります。そんな大きなことはうちではできない、自分にはできないと感じてしまうんです。

シブヤフォントは「障がい者アート」ではなく、「アートワークなど創作をやってみたい障がいがある人」とデザイナーのクリエーター同士の「究極のコラボ」なんです。
一緒にワンチームでやれば「線一本でデザインできる」というスタンスです。「私なんて」みたいな謙遜などなく、誰もがやってみたいと思ったことをやれる。

シブヤフォントでもご当地フォントでも感じるのが、現場で「私たちにもできるんだ」という気持ちが広がっていることです。なので、「障害者アート」という固定概念などなくして、枠を超えて、線一つでもデザインになることを知ってもらう、それは福祉施設にいる多くの人たちにとってHOPEになると思うんです。支援スタッフや障がいがある人たちがいる現場で「私たちでもできるんだ!」という思いがどんどん広がっていくことを目指しているんです。

また、これまで世の中では商品として採用されている「アート」は特定の一部の人やスタイルが確立している人が採用されがちです。そしてどこか手をつけちゃいけないものと使う側も思ってどこか特別で儚いものになってしまっている部分があると感じるんです。
シブヤフォントではパターン(柄)やフォントの色を変えたり、一部を切り取ったり、他のパターンやフォントと組み合わせても自由です。デザイナーや福祉施設の支援スタッフ、アーティストみんなで、実際の使われ方などを見て、「こう使われてるのか、面白い!じゃあ次はこうやってみよう!」と互いに刺激を受け学び合う循環が生まれていきます。

シブヤフォントのフォントやパターンが子供服や着物に
シブヤフォントのフォントやパターンが子供服や着物に

「シブヤフォント」での今後のビジョン

ーライラさん自身のシブヤフォントの活動でのビジョンや願いなどお聞かせくださいー

ライラ氏:アジアにも進出したいです。近年ヨーロッパとかアメリカは20世紀後半大々的に障がい者運動が活発だったこともあって、当事者や当事者家族が自分たちの手で障害のイメージを覆したり、社会参加の向上、表現者としてテレビや表舞台にどんどん出てきている傾向があります。アジアは欧米に比べたら、障がいがある人に対する世間的意識も、30年遅れてるかなと感じるところもあります。イメージをひっくり返すためには、障がいがある人ができるものを見せていかなければいけない。
障がいがある人は助けてもらう部分が多く見えてしまうだけで、できることがたくさんあるんです。そのできることを具体化し、媒介を通して見せていければ、世の中の見方にももっと変化が出てくると思います。

だからこれができれば「アジアってすごいことやってんじゃん!」となるのではないかと思っています。アジアだからできることがもっとたくさんあると思います。

そのために繰り返しになりますが、まずは福祉施設の支援スタッフや障害のある人たちが自分たちが作るもの、関わるものにどんどんオーナーシップをもって自信を持って取り組んでもらいたいと思います。現場の人が自信を持って元気だと良いコラボレーションが生まれます。

今は、福祉施設同士で勉強会や情報交換を行うことにより、施設間の新たな連携が生まれています。お互いが助け合ったり、協力し合ったり、そのつながりも広がりを見せています。そのことはとても嬉しく感じます。
福祉が元気な町は、町自体も元気で良い町になると思っています。

「社会」や「多様性」とは?

ーここからは少し視点を広げ、ライラさんが考える社会や多様性について伺えればと思いますー

ライラ氏:「多様性=社会」だと思います。複数の価値観、性質が混じり合っている状態が多様なだけであって、そこに正解はありません。存在を認め合い、肯定し合うのが大事だと思います。そういった意味でも形になったものがあるとお互いに繋がりやすいと思います。一緒に何かに取り組むことでお互い何かが見えてくると思います。

皆さん、障がいとか多様性とか頭で考えすぎているのではないかと感じます。お互いに能動的にできることを通して繋がって一緒に関わっていければ良い。多様な時代とは多様な価値が幾つも同時に存在することです。 
だから変に多様性に一つだけの意味を持たせないこと、型に当てはめないこと。お互いの存在を肯定し合い互いの自己肯定感を上げること、障害のある人もないと言われる人もそのために他者と一緒に何かをやる。学び合わなければ何も変わらないですから。

そして私自身は上下関係をぶっ壊したいと思っています。
上から目線と下から目線とか。そして、「私は車いすの○○です」とか「障がいがあって○○だから」とか自分の代名詞に「障がい」とかいる?って思うんです。デザインができるのであれば、何か障がいを持っていても「私はデザイナーです」と言えばいいのではないか?自然とそうなっていけば良いなと思います。

ーライラさんにとって、インクルーシブデザインがもっとこういう活用の仕方をされたらいいなとか伺えられればと思いますー

ライラ氏:それこそ多様性に繋がりますが、正解はなく、お互いの知恵とか実技をシェアし合えるものづくりがインクルーシブデザインであるだけだと考えます。それ以上も以下もないのかなと。お互い学び合える関係性でものづくりをしていく。
何か障がいのある人のために作りましたといって、完成した後に障がい者本人に提供するのはインクルーシブデザインではなく、ゼロから、本人とかいろんな人と一緒になって価値とか体験を共有していく中で、「世の中にはこんなものが足りないのでは?では何か作っていこうか!」というのが良いと思います。
デザイナー自身も身の回りの空気を感じて自身をアップデートしていく必要があります。相手の障がいのことだけではなく自分の身の回りの世界のこととも同時に考えていく。世の中や価値観の多様性も感じて、関わる人と一緒に課題に気づき、取り組んで行ければいいんじゃないかと思います。

インタビューに答えるライラ氏(左)

デザイナーの育成や海外のデザイナーに見る特長

ー最後に、海外を知るライラさんから見る海外のデザイナーの特長や日本のデザイナーの育成について伺えればと思いますー

ライラ氏:海外のデザイナーはクリティカルシンキングが備わっていると思います。デザイナーは、世の中には多様な人が存在しているという認識があり、自分たちの活動においても、市民国民として今世の中に必要なものは何か?を考えています。

それと海外のデザイナーは「WHY」をめちゃめちゃ強く持っています。
常に「なぜか?」「なんでか?」を考えます。

一方日本のデザイナーはどちらかと言うと答えを求めて、答えに先にたどり着こうとする傾向があるように感じます。つくることは上手ですが、手前の「なぜ?」があまり考えられていない状態で。
本来デザイナーはクリティカルシンキングができるはずなので、日本の若いデザイナーももっとクリティカルシンキングの組み立てが備わってくれば、必ずより強力な人材に育っていくと感じるし、期待しています。

シブヤフォントのダウンロードはこちら
シブヤフォントのダウンロードはこちら

【インタビュー後記】

シブヤフォントのライラさんへのインタビューは、共創や包括的なデザインを改めて考える機会となりました。シブヤフォントには福祉施設の支援スタッフと参加アーティストである障がいがある人、そしてデザイナーである学生の間に上下関係を生まない対話があります。質問ではなく対話。直接的に障がい者に対して、何か解決するソリューションへ向かい提供するという姿勢ではなく、まず目の前の人を知る。目の前の人とどう向き合い、どのようにその人と一緒に作り上げていくのか。目の前の人とその人を取り巻く現実を知ろうとする対話。そこからどのようなデザインの問いや疑問を持つか。この姿勢や向き合い方はインクルーシブデザインにおいて非常に重要なポイントであると感じました。
また、線1本からデザインできる、デザインになるという実践体験は、関わる人たちの想像力をも拡張させ、現場からはどんどんとアイデアが生まれています。現場が主体となり地域を巻き込んだイベントや活動も活発になっており、福祉という現場が地域の文化の起点となっているように見受けられます。地域の発展へもつながる持続的なプロジェクトであるシブヤフォントの活動に今後も注目していきたいと思います。


【シブヤフォント紹介】

渋谷区内にくらし・はたらく障がいがある人と「専門学校桑沢デザイン研究所」の学生がタッグを組み、フォントやパターンデータを制作、それらを渋谷区公認のパブリックデータ「シブヤフォント」として誰でも利用できるよう公式サイトで公開している。売上の一部は渋谷区内の障がい者就労支援事業所に還元しています。“共に制作する” ”気軽に使える” ”商品に採用する”という誰でも参加できるデータの特性を活かして、渋谷区のダイバーシティ&インクルージョンの理念を広げている。

Laila Cassim(ライラ・カセム)|一般社団法人シブヤフォント、アートディレクター。
日本生まれ世界育ちのイギリス人。人の持ち味を見つけ活かすデザインが得意。グラフィックデザインの専門性を活かし支援を必要とする障害福祉の現場の人々と共に、立場やアビリティー問わず包括的な社会参加や自立につながるアートワークや商品の制作・開発プロジェクトに国内外で取り組んでいる。大学でも研究職につき、福祉施設で定期的に重度障害の人のアート支援をし研究を続けている。2021年からACC TOKYO CREATIVE AWADS、 2022年はグッドデザイン賞の審査員にも選ばれる。東京大学特任研究員、桑沢デザイン研究所非常勤講師。
2023年度から奈良女子大学工学部特任准教授に就任。英エジンバラ芸術大学ビジュアルデザイン学科を卒業後、東京芸術大学大学院美術研究科で視覚伝達デザインを専攻、12年に修士号、16年3月に博士号取得。

【イベント開催(12/4月-12/15金)】

「シブヤファクトリー」シブヤ×フクシだからできる未来

渋谷で暮らし働く障がいのある人と学生の協働により生まれた「シブヤフォント」。 2016年に渋谷区事業として開始した取組みは8年目を迎え、生まれたアート作品の総数は500種類以上となっています。今年度は、シブヤフォントに関わるアーティストや日々のアートワークにスポットを当て作品展示をします。

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