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『となりのトトロ』と環境保全
最も見たことのある人が多いジブリ映画といえば『となりのトトロ』だろう。子供の時にだけ出会うことができるファンタジーの世界、それがこの物語の根幹である。愉快なファンタジーとしてみれば、の話だが。
トトロをどう見るか
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青井汎氏によれば、『となりのトトロ』は、スペインの映画『ミツバチのささやき』(1973年)をオマージュしているという。これは冒頭のトラックで引っ越しをするシーンから分かることであるそうだ。『ミツバチのささやき』もまた、サツキとメイのような姉妹が田舎へ引っ越すというところから物語が始まる。
なぜ『ミツバチのささやき』をオマージュしたのか。それは、両者の環境の違いを見れば見えてくる。
『となりのトトロ』の舞台は1950年代の所沢である。その頃の所沢はの自然豊かな作中の風景そのままの姿であった。
対して、『ミツバチのささやき』の舞台はイベリア半島の木が育たない荒野である。ただし、人間の手によってその土地は荒野になったのである。
人間の罪
ローマ軍は征服した土地の森林をことごとく伐採した。これは植民地の住人が森に隠れて反乱軍を組織するのを防ぐためである。ベトナム戦争をイメージしてもらえればわかりやすいと思うが、森というのは、ゲリラ戦にすごく有効である。
我々にしてみたら想像しずらいだろうが、イベリア半島の風土では、1度森林が伐採されるともう再生しないのだそうだ。したがって、『ミツバチのささやき』の舞台は、人間の行いによって現代も木が育たなくなった荒野である。
このオマージュが何を示しているのか。
『となりのトトロ』は、1960年代に所沢で宅地造成が行われてすっかり緑が失われてしまうことを暗示しているのだ。
つまり、『となりのトトロ』で宮崎駿氏が描いた世界というのは、日本人が理想とする田園風景であると同時に、我々が永遠に残さなければならない自然(森林)なのである。
そういうことを知るとまた作品を見ようと思うのは、人間の常である。