おいしい干し草をつくる道具
今回は、むかしドイツで住んでいたときに撮影した写真にまつわる話を書いてみる。
当時、秋色に色づいた田舎道で自転車に乗っていたときのこと。牧草地で絵になる風景をみつけて、写真に撮った。その風景の中には、僕にとっては見慣れない道具が映っている。
今回の主役は、この道具。ひょっとしたら、日本で馴染みのある人もいるかも知れない。
この時は、見慣れない道具だな、どうやって使うのかなー、ってぼんやり眺めていたんだけれど、後日、これを使っている現場に出くわした。
実際に使用していた現場で
別の日に、自転車に乗って田舎道を走っていたとき。とおりがかった牧草地の一面に、刈り取られた牧草が敷かれていた。そしてその上をトラクターがグルグルと走りまわっている。後ろに、この道具をくっつけて曳きながら。
見ていると、この道具が牧草を力強くグルグルグルグルと掻き混ぜている、というか巻き上げていて、初めて見るダイナミックな光景に圧倒された記憶がある。舞いあがる草のホコリも、すごかったっけ。
ただ、その時はいったい「何のために、何をやっているんやろ?」という疑問が浮かぶだけで、答えは皆目見当がつかなかった。迫力満点だったということを感じただけで終わった。
何のための道具なのか?
それ以来、ずっとこの道具の使い道が心に引っ掛かったままだったけれど、今回はこの写真を手掛かりに調べてみた。
そしたら、なるほど。疑問は解決した。
名称は「テッダー」(tedder)と呼ばれるもの。
この道具について言葉で説明するのは難しいんだけど・・、試してみよう。
先ほどの説明どおり、この道具は牧草地で使用する。よく秋になると、薄茶色で大きく丸めて固められた状態の干し草が、牧草地の上にボン、ボンって置かれている光景をみたこともあるのではないでしょうか。北海道の牧草地の写真で目にするのが典型かな。この丸められた牧草の塊は「牧草ロール」もしくは「ロールベール」などと呼ばれるらしい。
牧草ロールは何に使うのか?それは、特に冬のあいだに牛や馬などの「家畜の飼料」として与えるものらしい。要は越冬する時期の動物の食料になるということ。
では、この牧草ロールはどのように作るのか?
まず、牧草は生えている状態では緑色。それを刈り取ったら、地面に広く晒しておいて乾燥させる。ただ、まんべんなくしっかり乾燥させておかないと、牧草の中にカビがはえたり発酵して不衛生になる。
そこでどうするか。ずっと動かさずに広げたままだと、広げた牧草の上部しか日が当たらず、風も通らない。だから表面付近しか乾いてくれない。そこで、刈った牧草をひっくり返したり、かき混ぜることで、牧草をまんべんなく日光や空気に触れさせる。
そのとき、人力であれば熊手でひっくり返すけれど、人の手で作業するのは重労働で時間もかかる。そこで、この道具の出番となる。
まず、この機械をトラクターの後ろに接続する。スイッチを入れると、下に向かって生えている金属の爪のような部分が、クルクルとすごいスピードで回転する。その状態でトラクターを運転し、地面に寝かして乾かしている干し草の上を通ると、この道具によって干し草がいい具合にクルクルとかき回されて上下がひっくり返る。そうやって天日にあたっていなかった湿った部分が空気にさらされて天日にあたり、干し草を全体的にムラなく乾燥させることができる、という塩梅。
そうやって干し草がムラなくしっかりと乾燥する過程で、緑色の牧草が全体に薄い茶色になる。そのような薄い茶色の干し草になってはじめて、冬のあいだ保存のきく衛生的で栄養価の高い家畜の飼料になる、ということらしい。
なるほど、こうやっておいしい干し草をつくるのか。って、干し草を食べたことがないから、人にとっておいしい味かどうかは知らんけど。
つたない説明で伝わっただろうか。ビジュアルで見るのであれば「tedder」で動画検索すると、この道具がダイナミックにはたらいている映像を見ることができる。
どうやって調べたか
ということで、今回はずっとナゾで気になっていたものを調べてみたら、僕的にはかなりおもしろかったという話でした。
これまでは、どうやって検索したら答えに辿り着くのかアイデアがなかった。今回どうやったのかというと、写真を画像検索して道具の名前を見つけ出し、それをもとにChatGPTさんに聞いてみたら、スラスラとこの道具について語ってくれた、という要領。
僕は、次の人生を自由に選ぶことができるならば、「オーストリアの山で羊飼い」になります。なので、こういう牧草地のお仕事がおもしろく感じるのです。フフ。
by 世界の人に聞いてみた