2番線

隣の席に座っていたはずのあの人が、気付けば隣の車両に移っていた。

なるほど。歩けばまだ届く距離だ。

隣の車両に座っていたはずのあの人が、気付けば更に隣の車両に移っていた。

なるほど。見えにくいがまだ届く距離だ。

電車は駅を出発する。
あの人の姿は見えないが、まだ隣の隣の車両に居るんだろう。 



そしていま、並走する路線を眺めている。

隣の隣の車両に座っていたはずのあの人を眺めている。

手の届かなくなったあの人を眺めている。

別々の終点へ向かうあの人を眺めている。


なんてことはない。

そもそも隣に座っていたあの人は元々別の路線から乗り換えて来ただけじゃないか。

たった数駅ぶん、席を分け合っただけの人じゃないか。

これを失恋と呼ぶには青すぎる。




…………学生時代のブログの下書きに残ってたんだけど
こういう痛々しい文章書くのホント上手かったんだな私

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