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ゆで卵となまたまご

社会を数十年かけて沸騰する大きな鍋に例えるなら、
温度の上がり始めに発生する小さな泡。
そんな出来事を身近に感じることが多い。
やがて沸騰して吹きこぼれるまでその火を消すものは現れない。

村上春樹がガザでのエルサレム賞のスピーチで「壁と卵」の話をしたのが2009年。
壁をシステム、卵を個人に例えた秀逸なスピーチだった。
それ以降も鍋の温度はゆっくりと上昇を続ける。
SDGSしかり、道理や道義すらシステムとして利用されながら。

主に都市部で、
私はハードボイルドの主人公気取りで無理をする人たちを目にする。
悲しくもそう遠くない未来に、立派に茹で上がった卵たちが生卵たちを押しつぶす地獄絵図を見るだろう。

私は生卵が割れないように藁をしきつめる仕事をしている。
決して無理をせずに。
まるで「ライ麦畑」のような話だけどほんとうの話。

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