リンクした青春
えっと、これってなんていうんだっけ。
シンクロニシティ?
いやちがうな。
デジャブ?
ちがうちがう。
単なる偶然?
とは言い難いことがnoteの中で起こっていた。
それは2週間ほど前、おすすめにあったさぼてん主婦さんの記事を読んでいた時の事。
さぼてん主婦さんのnoteはいつもとてもおもしろい。
クスっとどころかぎゃははと笑ってしまう。
そのさぼてん主婦さんの5月10日の記事を読んでいた私はビックリした。すぐにもう一回読み直したくらい、とにかくビックリしたのだ。
さぼてん主婦さんのフォロワーさんの中で、この記事でこんなにビックリしてるのはたぶん私だけだと思う。
なぜこんなに驚いたのかというと
高校時代の私とマサエ(仮)に起きた出来事とそっくりだったから!
マサエは高校からの親友。
もう何年も会えてないけど、大切な友だち。
世代もシチュエーションも違うけどさぼてん主婦さんの身に降りかかった出来事と、そっくりでなまらレアな体験を私も高校時代にしていたのだ。
こんなことってある?
思わずコメントしてしまった。
いつか私も書きますと。
そのいつかが今日ということで書きます。
ちょっと長めです。
それでは聞いてください。
いや読んでください。
青春は「ありえない」でできている
蛍諸ちは編
それは私が高校三年生。夏の初めの頃の事。
私が通っていた頃の小樽C高校野球部は弱小だった。
高校野球が大好きだった私とマサエは、どんなに弱くても頑張って練習している野球部の練習を見るのが好きだった。
同じクラスに野球部のキャプテンの野口(仮)君がいた。
野口君は野球が大好きだけど、そんなに上手じゃない。
ただ一人の三年生だということでキャプテンになったらしい。
そんな自分の事を、自虐的に面白おかしく話す野口君はクラスの人気者だった。
この夏の甲子園に向けての大会が終わったら、野口君は引退する。
キャプテン野口はなんとか南北海道大会まで勝ち上がって、北海道の高校球児の聖地 札幌円山球場 へ行くんだとみんなに言って廻っていた。
ちょっと半笑いでガンバれよって言ってるクラスメイトたち。
初戦敗退が常の弱小野球部が、北海道大会の開会式に出られるなんてありえないと誰もが思っていた。
でも、野口君は(本気とかいて)マジだった。
そのマジで熱いキャプテンの思いに応えて後輩たちが頑張った。
なんと地区大会で二位になったのだ。
北海道大会に出場を決めたと校内放送があった時、クラス中が歓喜に沸いた。
これはもう
全校応援だべ!
と誰もが喜んだのもつかの間。
担任がホームルームで
「一回戦は応援団のみ参加。二回戦までいったら全校応援。」
と発表したのだ。
いや、それはないべさ。
実をいうと地区予選はくじ運が良かったのだ。
強い高校とは全くあたらず、決勝までいけたんだから。
南北海道大会だよ。
百戦錬磨の野球ばっかりしてる私立高校野球部が相手になるっしょ。
二回戦なんて行ける訳ないんだわ。
野口君の引退試合を応援しないなんて、そりゃないわぁ。
ってがっかりしていた私の耳に悪魔(マサエ)が囁いた。
「学校さぼって、円山行こ。」
マサエって時々すごい大胆なことを笑いながらサラッとやっちゃうのだ。
「○○君の事好きになっちゃったから、今から告白してくる。」
とか、
「○○ちゃんの彼氏の様子がおかしいから、尾行する。」
って言って現場を抑えてその彼氏に詰め寄るとか。
まあ、主に恋愛関係だったけど。
マサエといると、とにかく何か事件が起きておもしろくて仕方なかった。
その悪魔の囁きにはさすがに躊躇したけど、
「野口君の引退試合だよ。誰も見に行かないなんてだめだべさ。」
というマサエの言葉に思わず
そだね、行こう! って言ってしまった。
試合当日、いつも通り家を出て小樽駅でマサエと落ち合い、札幌行きの列車に乗った。
C高には制服がない。
女子はちょっとおしゃれをしたら市内の女子大の学生に間違えられることがあった。
普通にしてたら補導されるなんてことはない、小樽の夜の繁華街だって大丈夫!なんてマサエと笑いながらも、いけないことをしているというスリルとちょっとの罪悪感でドキドキしながら円山球場に向かった。
球場では応援団から死角になるところに座り、試合を観た。
野口君はがんばっていた。
けど、まったく打てなかった。
終盤になり、1-0で負けていたC高野球部にチャンスが舞い込む。
先頭バッターがフォアボールで出塁。
次のバッターは野口君だ。
今だ!打って!野口君!
一球目
野口君は送りバントを失敗した。
これがたぶん野口君の最後の打席だからと
マサエと必死に応援したが、あえなく三振した野口君の肩は、地に着くんでないかいってくらい落ちていた。
しかし、野球の神様は彼を見捨てなかった。
なんとその回に逆転。
そのまま勝ってしまったのだ。
ゲームセットの瞬間、マサエと立ち上がって抱き合ってきゃあきゃあ言って喜んだ。
勝利の校歌を背中で聞きながら早々に球場を出て、応援団に会わないようにすぐに帰路に就いた。
次の日、教室に入ると野口君はヒーローになっていた。
「最後の打席でさぁ、『監督、頼むバントのサイン出さないでくれ』って目で訴えたんだ。最後くらいヒット打ちたかったからさぁ。まあバントも失敗したんだけどよ。」って笑いを取っていた。
そうそう、そこ観てたよ私たち ってマサエとにやにやした。
放課後
「三年の蛍諸ちは、斉藤まさえ、倫理のS先生の職員室に来なさい。」
という校内放送がながれた。
なして倫理社会のS先生に呼ばれるのかわからなかった。
あるとすれば昨日のあれだけ。
しかし、S先生は応援団の顧問でも、野球部関係の先生でもない。
私とマサエはバレてるはずないよねとお互いに大丈夫大丈夫と頷きながら職員室に入った。
S先生はニコニコしながら、私たちに言った。
「昨日ね、ニュースを見てたらね、
映ってたんだよね。」
S先生の倫理の授業くらい言ってる意味が分からなかった。
マサエも首を傾げてた。
無言で突っ立ってる私たちに
S先生はさらに言った。
「円山行ってたでしょ君たち。
抱き合って喜んでたね。」
は?
ニュース?
テレビ?
全道ニュースに映っちゃってたってこと?
学校サボって円山球場に行ってた私とマサエが?
うそだ。
ありえないっしょ。
てか、先生なんで私たちだってわかったの?
もしかして生徒全員の顔と名前覚えてるの?
いやいや
ありえないって。
こわっ
先生
こわっ
あたふたしてたのは私だけ。
マサエは笑いながら
「ごめんなさ~い。ゆるしてせんせぇ。」とかなんとか言っていた。
S先生はマサエの言葉をガン無視して
「昨日は僕の授業だったよね。
さぼった分はちゃんと勉強してもらわないとね。」
と、机の上の小難しそうな本を数冊私に手渡した。
「この中のどれでもいいから一冊読んで、感想をレポート用紙に書いてきて。来週の授業までにね。」
って言った先生は、おもしろいことを思いついちゃった子どもみたいに楽しそうだった。
それから一週間、読んでも読んでもなにも頭に入ってこない哲学書と格闘し、感想を書いた。何を書いたのか全く思い出せないけど、とにかくレポート用紙を文字で埋めて、ニヤニヤしているS先生に提出した。
野口くんは全校生徒に応援されながら
2回戦で引退した。
これが私のなまらレアな青春のひとこま。
そして、こちらがさぼてん主婦さんの青春。
絶対読んで!
ね?
これってすごくない?
こういう現象をなんていうのか、知っている方教えてください。
したっけ