タイムマシーンの如く
80年代アメリカの夏休み映画といえば、1985年7月3日公開の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(日本ではお正月映画だが・・・)。
その主題歌は、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「パワー・オブ・ラヴ "The Power Of Love"」で定着しているが、最初にこの映画の主題歌の依頼を受けたとき、映画音楽の仕事に関わった事がなかったことと「バック・トゥ・ザ・フューチャー」というコンセプトにヒューイ・ルイスは乗り気ではなかったという。
「ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース=主人公マーティ・マクフライのお気に入りのバンド」という設定にするつもりだったという映画製作チームのボブ・ゲイル、スティーブン・スピルバーグ、ロバート・ゼメキスと会い、設定はNGながら、渋々曲を提供するという事に同意したヒューイは、映画のストーリーには一切触れていない「パワー・オブ・ラヴ」と、ライ・クーダーとの共作「イン・ザ・ニック・オブ・タイム "In The Nick Of Time"」を提示した。
「バック・トゥ・・・」の音楽監督ボーンズ・ハウは「イン・ザ・ニック・オブ・タイム」の方を気に入ったが、ヒューイのマネージャーと映画会社側の弁護士との交渉が長引いてしまい、じれたヒューイ側は、別の映画「マイナー・ブラザーズ 史上最大の賭け "Brewster's Millions"」に渡してしまった。
「イン・ザ・ニック・オブ・タイム」を提供してもらえると思っていたボーンズ・ハウとスタッフは、大きな落胆ともにとてもあわてふためいたそう。最初は乗り気ではなかった筈のヒューイだが、そこは人情に厚い江戸っ子ならぬサンフランシスコっ子(?)、映画をイメージして書きあげたという「バック・イン・タイム "Back In Time"」を提供し、映画のワンシーンにノンクレジットで出演までしている。
二転三転の末「バック・イン・タイム」は不採用、「パワー・オブ・ラヴ」が主題歌に落ち着いたのは映画完成の数日前だった。
「パワー・オブ・ラヴ」が映画共々大ヒットとなったのはご存知のとおりだが、主題歌には不採用となってしまった「バック・イン・タイム」も劇中とエンディングで流れ、隠れた人気曲となっている。(日本ではシングルカットされている)
めでたしめでたし。
それにしても映画の主題歌って、権利やイメージ、コンセプトなどなど、いろいろ絡んでいて複雑である。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」だけに、ピンボール、ジェットコースターならぬホバーボード、タイムマシーンのように目まぐるしかったということか。
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