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初夏の干し野菜


海が近くにある暮らしは、
いつも風とともにある、と感じます。

晴れた日の昼間は海から陸地に向かって海風が、
夜は反対に陸地から海へと湿った陸風が吹き、
特に5月の今頃は、薫風というにふさわしく、
一年で一番清々しい、風の季節。

まだ日差しも柔らかく、風が爽やかな春から初夏の今頃は、干物や乾物がなんでも上手に仕上がります。
冬の乾燥した頃のキリッと乾く干し物より、セミドライな仕上がりがまた良いものです。

釣り具屋さんなどにある干物かごを魚用、野菜用と二つしつらえ、
季節の野菜をそのまま、あるいは水分が切れやすいように切り分けて並べます。

カリカリに干して長期保存もよし、
プチトマトなどは、セミドライにしてかじると、ぎゅうっと濃くなった甘みと旨味に驚きます。
大根は、このまま浅漬けにしたり、戻して煮たり、カレーに入れてもよい食感。
しいたけも乾かしきらずに、一回り小さくなったくらいが食べごろです。

残り野菜をいろいろ干してみました。

干す時間は種類にもよるけれど、
表面が乾き、生のときよりも軽くなるまで干します。
すぐ使わなければ冷凍しておくと
買い物に行けない時などにも便利。
旨味がぎゅっと凝縮されて、
炒め物にも煮物にも、味のベースになりやすくなります。

週末に作ることの多い、肉の煮込み料理。
スペアリブが安いときに、おすすめしたいのが、
コリアンタウン・新大久保の松屋さんのとんこつとじゃがいもの鍋(カムジャタン)をまねた煮込みです。
出来立ての干した野菜をベースにじっくり煮込み、
じゃがいもとキムチをあわせました。

つぶしたにんにく2片と、干したまねぎ、干し大根、干し人参を炒め、
小さめのスペアリブを入れてしっかり焼きます。
しょうゆを回しかけ、醤油が焦げる寸前に酒を振ります。
ゆでて冷凍しておいた牛すじも残っていたので、
ここに加えて、キムチも好みの量加えて炒め、
昆布だしをひたひたに加えました。

40分以上、肉から骨が外れるくらい煮込んだら、牛すじもトロトロになります。
ここに食べやすく切ったじゃがいもを加えて
コチュジャンか、なければ味噌を加えてさらに煮ます。
じゃがいもが柔らかくなったら出来上がり。
見よう見まねでは、松屋さんには敵わないよねと思いつつ、
旨味と辛味にご飯のおかわりががまんできなくて、嬉しくなりました。


これは、松屋さんのカムジャタン。
大きなやかんはマッコリです。
見た目は悪いけれど、旨味の濃い、愛すべき料理です。


干し野菜は味のしみも良いので、浅漬けもあっという間に出来ます。
大根のスライスを一晩干したら、
味つけだけで、もうたくあんの食感。

干し大根の梅じそ漬けにしてみました。
スライスした大根を干したものを軽く洗って、梅干の赤じそ3枚分くらいとこんぶの粉末でもみこんで、
色がついたらもう食べられます。

葉も軽く干し、ごま油で炒めてご飯のおともに。


他の野菜、
干したトマト、ズッキーニ、たまねぎ、人参は
次回ラタトウイユにしようと思います。


このところ気忙しく、いろいろ張り切りすぎたのか
今日は一日、
背中と頭の痛みが消えなかったけれど
調子のよくないときにも、
こうした保存食品は強い味方になってくれます。

一から作らなくて良いし、仕上がりまでがあっという間。
使うものをもとに、料理も決めやすくなって、
ずいぶんと気楽にいられました。

このセミドライな椎茸は、一緒に干したローリエと一緒にオリーブ油で炒め、塩胡椒するだけでじゅわっとおいしくなっています。

干した半割りのプチトマトは、そのままにんにく風味のオリーブ油で軽く戻し、バジルを刻んで混ぜます。
この二つをバゲットにのせて、ブルスケッタにしてみました。

今は、出始めたいちじくをじっくりと干しています。
なにに使おうかと、
仕上がりが今から楽しみです。

仕事も、趣味も、全部が料理で大変では?とよく言われることがあります。
他にさしたる趣味がないことが、恥ずかしかったりもしますが・・・
でも確かに、こんな風に干し物をしたりしていること自体が、確かな愉しみになっているようで。

今日を愉しむ事ができたら、
何となく、明日はもっといいことがあるかもしれないと、前を向けそう。
なんの根拠もないけれど、
そう思うだけでも、毎日が少し違ってくると思えるのです。

実際には、いいことどころか、いやなことが起こるかもしれないし、
実は悔やんだり後悔したりするのがものすごく得意な?私。

梅雨が来てしまう前の、束の間の小さな愉しみ。
5月の風に吹かれながら大切に満喫してみよう、と
わくわくしながら過ごしています。


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