やさしく、ゆったり作ること
料理を作ることは、人が生きて行くための手段の一つでもあり、必要に迫られれば誰でもできることです。
この春からも、一人暮らしなどをきっかけに始められる方も多いことと思います。
今は料理レシピのアプリもたくさんあり、作り慣れないうちは、美味しそうな写真についたレシピを探して、その工程に沿って作ることができ、心強いものでしょう。
けれど、そのレシピを見ながら作っている途中で、今ひとつ表現のニュアンスが掴めなかったり、少しでも状態が違うと心配になったりしたご経験は、ありませんか?
そうなるとたちまち、焦ったり、力が入ってしまったり、慌てて修復したりと、とかくゆとりを失いがちになって、より失敗を引き寄せてしまいがちです。
若い頃から慌て者の私は、そういうことを度々やらかしていました。
例を挙げてお話ししたいと思います。
前回お話しした唐揚げと同様に、学生時代に失敗を繰り返した料理の一つに、ハンバーグがありました。
本のレシピ通り混ぜて成形してフライパンに乗せたら程なくひび割れてきたり、割れないよう粘りを出そうと混ぜているうちに手の熱で全体がだれてきてしまったり、今度こそきれいに焼けた!と思ったら、中心が生焼けで急遽煮込みに変更したり。
次から次に違う失敗が見つかるのです。
失敗や成功それぞれに回数を重ね、子供ができてからは、ハンバーグを作る頻度やバリエーションもぐんと増えました。
お麩を擦って混ぜてみたり、ささがき牛蒡で包んだり、パウンド型につめて焼いたり、時間に追われてフライパンいっぱいの大きなものを作ったり。
ハンバーグにまつわる思い出も、実にたくさんあります。
そんな中で、次第に自分なりのルールもだんだんと増えて来ました。
材料をどんどん次々に混ぜるのでなく、温度上昇しないように手を度々冷やしながら、ひき肉と塩だけを先にしっかり練ることが第一。
次に、他の材料も冷やしたものをさっくりと混ぜて、たねも自分もひと呼吸。
しばし休ませるとひび割れにくくなります。
そしていよいよ焼く段階へ。
たねを成型した後の空気の抜き方も、バン、バン、と力を入れすぎず、気持ち優しく叩いて整えるくらいがちょうど良い感じ。
油を薄くひいたフライパンを火にかけたら、すぐにハンバーグを並べます。
火は弱めの中火で片面をじっくりと焼き、温度が上がりすぎないようにこまめに油を拭きながら7割焼いて、返して3割。蓋をして蒸し焼きに。
仕上げに火を強め、またはグリルに入れて、カリッと焼きめをつけて出来上がり。
こうすればうまくいく、と思うやり方の発見は、度重なる失敗のおかげでもあり、
既存のレシピに頼りすぎず、出来上がりを思いながら、素材と、そして過去の失敗とも向き合うことが大切なのだと気付かされました。
急がずやさしく、丁寧に扱う。
心配なときこそ深呼吸して、
忙しくとも敢えてゆっくりを心がける。
ハンバーグだけ、料理だけにとどまらず、
これは仕事や子育てにも、人との関わりにおいても、あらゆることに言えるのではないでしょうか。
料理は誰にでもできるからこそ、
前例がない(やったことがない)ことに毎回小さな挑戦をする勇気をもらいやすい、とも言えます。
日々、小さな自信を積み重ねていたら
知らず識らず、色々なことに前向きに臨む胆力も、きっとじわじわと備わって来るはず。
慣れない新生活で料理も億劫になりがちな時に、そんなふうに考えてみるのはどうでしょう。
…と、ここまで相当偉そうに語っていますが、
ついついあり得ないところで躓いて転んだり、うっかり倒してこぼしたり、そんな自分にがっかりしている私。
どなたかのお役に立てればと願いつつ、
実は自分自身に一番、言い聞かせたい言葉でもあります。
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