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【第27章】これから必要なのは弱いけれども強いつながり

最近は様々なところで「ソーシャルキャピタル」「社会共通資本」といった言葉を聞くようになった。ネットで検索すると地域再生の文脈で使うこと多いようだ。いまや、経済学でも重要研究テーマになっている。と書かれているものの内容がピンとこないので、具体的なテーマとして「社会学ベースのソーシャルキャピタル」に絞り、その理論とメカニズムの意義を紹介していく。


2種類のソーシャルキャピタル

ブリッジング型のソーシャルキャピタル
ブリッシング型とは端的にいえば、全前章の「弱いつながり強さ」(SWT理論)、前章の「ストラクチャル・ホール理論」SH理論の2つのことである。2つの理論はA-B‐Cの関係性において、Cの関係性に位置づけられる人が便益を得られるのがポイントである。
ボンディング型のソーシャルキャピタル
A-B-Cの3者の関係性を同じくらい濃いというのが大きな特徴。ブリッジングとは真逆で「高密度に閉じたネットワーク」と言える。
そのメカニズムを説明するポイントは以下の3つである。
1.信頼(trust)
「相手が自分の期待を裏切るような行動をとらない」
2.ノーム(norm)
「我々のこのように振舞うべき」という規範が、ネットワークじょうの人々の間で暗黙に共有されること
3.相互監視(mutual monitoring)と制裁(sanction)
「仮にノームを破るものがいたら、そのものには十分な制裁が必ず加えられること。

ボンディング型ソーシャルキャピタルは至る所に

ボンディング型は至る所に存在する。一例として以下の紹介しておく。
・ご近所付き合いや、地域コミュニティの「安心」
最も身近な例ではご近所付き合いが挙げられる。子どもが返ってこない時「うちの子みなかった?」とlineで連絡すれば「講演で遊んでいたわよ」などと教えてくれる。このように明文化されたルールがなくても「他人の子どもでも見守る」というノームがインフォーマルに形成されており、「安心」というソーシャルキャピタルが生まれている。
・イタリアン・マフィアの「団結」
映画の『ゴッドファーザー』で出てくるマフィアも、ボンディング型ソーシャルキャピタルと言える。明示的ではないが、「相手を裏切らない」という強い信頼があり、暗黙のルール(=ノーム)として機能している。また、加えて「相互監視と制裁」も徹底して機能しており、抜け駆けすると厳しい制裁が待っている。
・企業の従業員・マネージャーの「知識・情報の移転」
企業内において情報・知識の移転は欠かせない。特に顧客情報、ベストプラクティス、コンプライアンスなどは企業内で共有される必要がある。一方で、大企業になると自身の知見・経験を共有したがらない社員も多くなる。
そのような課題に対し、中国のファーウェイでは、研修によるナレッジ可や、知見・経験をシェアした人を評価する仕掛け・工夫をすることで、共有すべきというノームをつくるようにしている。

デジタル時代では、リアルとデジタルネットワークをどのように上手く活用するかが課題

人と人を「弱く、薄く、広く」つなげられるデジタル上では、ブリッシング型ソーシャルキャピタルの便益の方が圧倒的に得やすい。ただ、フリーライダーが発生しやすいため、それを防止する仕組み(相互監視など)の仕組みは必要となる。
デジタルで上手くいっている企業はその2つの相反する特徴を巧みに解消している
1.SNS
一例としてフェイスブックでは実名登録を原則しているためか相互監視の機能が働き、開かれた環境であってもボンディング型ソーシャルキャピタルとして機能する。
2.C2C(シェアリングエコノミー)
メルカリのような相互評価を出来る仕組みを取り入れることで、相互監視と制裁の効果が機能し、「素人の参加者」壮士での安心感・信頼感を醸成して、円滑な取引を可能にする。
3.ブロックチェーン
ブロックチェーンの技術力を生かし「分散ネットワーク上でセキュアかつ改ざんなく共有することができる技術」であり、これにより互いにどんな行動をしているかを相互監視できる。

まとめると、ボンディング型ソーシャルキャピタルによる信頼関係の醸成は大事だが、イノベーションを起こすためには「弱いつながり」は欠かせない。ボンディング型の良さを残しつつ、ブリッジング型を取り入れていくかを考えることがこれからの時代には不可欠である。

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