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モディ化してきたインド!(ヒンズー至上主義のうねり)

「モディ化」するインド 湊一樹 著
インドが大国として「復活」してきて久しい。今や人口は中国を抜いて、世界NO.1の14億ともいわれる。GDPも現在世界5位。2030年には、日本やドイツを抜いて世界3位になると言われている。
大国化に功績があると言われているのが、モディ首相、インド人民党の党首である。
本書は、インドの大国化を推進してきたというモディ首相の政治の実績(実は大国化の流れは人民党政権以前から進んでいた。当然だが)と非民主的と言われる政治手法、統治のあり方を検証し、告発する本である。

インドについては私もそうであるが、日本人の多くは、経済的な伸長は知っていても、政治的状況や社会については、古い認識に引きずられていることが多い。
例をひとつあげれば、
インド独立の英雄といえば、ガンジー、ネルーなどであるが、ところが最近インド独立で取り上げられる英雄は、ガンジー、ネルーではない。ガンジー、ネルー以外の様々なリーダー(国民会議派以外の)にアングルがあてられている。近年日本でも大ヒットした映画「RRR」で独立の英雄として、20世紀前半に活躍したラージュとビームが取り上げらていて、ガンジーもネルーも全く描かれていないが、これが最近の流れだ。
また、そもそも、英国からの独立に国の画期を求めるのではなく、伝説の類と言っては言い過ぎだが、ずっと大古の文明からの接続が高らかに語られている。偉大なるインドの起源をインダス文明に求め、大国として存在感を高めるインドを、インダス文明を築いた偉大な民族の復興と唱える。この文脈では、イギリスからの独立という物語は、小さなエピソードでしかない。
あれ?こういう太古の伝承を国勢の伸張を目指す政治活動に活用する言説は、どこか日本の身近な国でもあったが、つまりそれは中国であるが、それと同じである。
こういう言説をリードしているのが、モディ首相率いる、人民党である。
因みに、人民党は、党員が一億人を超える世界一の政党である。中国共産党を超える党員数である。尤も国民会議も党員数5000万人の世界三位の政党だが(二位は中国共産党)。
そして、人民党は選挙によって多数派となり、政権を握ったわけだが、その後の統治手法は、中国共産党ばりの非民主的なメディアの締め付け、少数派国民への圧政である。日本の保守政治家では、インドを世界最大の民主主義国家と呼んで賞賛しているが、人民党、モディ首相下の統治スタイルは、むしろ反民主主義、反議会主義である。
日本の政界も近年、「原理的ナショナリズム」の色合いが濃くなっているが、それらに対抗するうえでも、モディスタイルの研究は、日本でも重要と思われる。
24年の選挙では圧勝を予想される中で、モディ首相率いる人民党は議席を減らした。これが今後どのような展開に変わっていくのかは、不明だが。

本書では、モディ首相が地方政治のリーダーとして注目される過程から現在までの功績とインドの現代史を扱う本である。






https://www.chuko.co.jp/zenshu/2024/05/110152.html#:~:text=%E6%9C%AC%E6%9B%B8%E3%81%AF%E3%80%81%E6%94%BF%E6%B2%BB%E3%83%BB%E7%B5%8C%E6%B8%88%E3%83%BB

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