シリアスレジャー×シチズンサイエンス研究会 開催報告(2024/11/26)
2024年11月26日、福岡大学商学部シチズンサイエンス研究センターは、杉山昂平先生(東京大学大学院情報学環 特任研究員)をお招きし、趣味や余暇活動に関する新しい考え方を探る研究会を開催しました。「シリアスレジャー」と「シチズンサイエンス」という二つの概念の接点を探ることで、余暇活動や科学的活動の関連について議論が交わされました。
「シリアスレジャー」とは:趣味への真剣な取り組み
「シリアスレジャー」とは、趣味や余暇活動に真剣に取り組む活動を指す概念です。例えば、週末の気分転換で行うジョギングは「カジュアルレジャー」ですが、マラソン大会に向けて計画的に練習を重ねる活動は「シリアスレジャー」と呼べます。この概念はアマチュア音楽家の活動研究から、1980年代にカナダの研究者ステビンス博士が提唱し、生まれました。
研究会での議論
シリアスレジャーをめぐる議論
研究会では、杉山先生から、卓球スクールでの指導者の活動を例に、シリアスレジャーの具体的な姿が紹介されました。例えば、プロの選手として活動するのではなく、アマチュアの愛好家に向けて丁寧な指導を行うコーチたちの活動は、単なる仕事以上の「シリアスレジャーを支える活動」として捉えられることが示されました。
また、現代社会でも「趣味は仕事が安定してからするもの」という考え方が根強く残っていることや、政府の統計などにおいてはシリアスレジャーとして熱心に趣味に取り組む時間が「単なる余暇」として扱われてしまう現状についても議論されました。
杉山先生ご自身は、アマチュアの学びの豊かさに注目し、教育学習の分野からアプローチした研究をされているとのことでした。
シチズンサイエンスとの接点
シリアスレジャーと、市民による研究活動であるシチズンサイエンスに共通する特徴として、以下の点が挙げられました:
- 継続的に活動を行う
- 活動を通じて専門的な知識やスキルを身につける
- 同じ興味を持つ人々とのコミュニティが形成される
学問的な整理をしたときにどのような関係にあるのか、たとえばシリアスレジャーの中にシチズンサイエンスが包含されているのか、などは今後の研究課題として挙げられました。
参加者の声
研究会に参加した方々からは、興味深い感想が寄せられました。
「シリアスレジャーという言葉の存在自体が、自分の趣味を誇らしく思えたり、意識が変わったりすることにつながるのでは」という声があり、真剣に実践する趣味活動を表現するための言葉を持つ重要性が指摘されました。
また「真剣な趣味が収益を生み出すようになった場合、それは仕事となってシリアスレジャーとは別物になってしまうのか、という疑問も出てきた」との感想もあり、趣味と仕事の境界線について考えるきっかけとなったとのことです。
今後の展望
シリアスレジャー(真剣に取り組む趣味)やシチズンサイエンス(市民による研究活動)は、個人の生きがいとなるだけでなく、社会的にも価値のある活動です。その価値を伝えるためにはどうすればよいのか、愉しさを社会に共有していく方法を考えていきたいと思わされました。
開催概要
日時:2024年11月26日(火)18:00-21:00
形式:会場(福岡大学)およびオンラインのハイブリッド開催
主催:福岡大学商学部シチズンサイエンス研究センター
メインスピーカー:
- 森田 泰暢(福岡大学商学部シチズンサイエンス研究センター センター長)
- 杉山 昂平(東京大学大学院情報学環 特任研究員。著書『「趣味に生きる」の文化論』)
(文:商学研究科 阿部太一)