現場監督の失敗から学ぶ
こんにちは。建設会社で長年現場監督を務めてきた渡邉です。今回は、私が経験した大きな失敗とそこから得た教訓について、皆さんにお話ししたいと思います。特に建設業界を目指す若い方々に、この話が何かの参考になれば幸いです。
現場での想定外の出来事
建設現場では、日々想定外の出来事が起こります。今回お話しするのは、私が現場監督として6年目を迎えた頃の出来事です。東京都新宿区早稲田で、鉄筋コンクリート造の地下1階、地上5階の新築工事を担当していました。
台風直撃、そして予想外の事態
その年の9月、大型の台風が東京を直撃しました。記録的な大雨が降り、現場の状況が心配で見に行くと、驚くべき光景が広がっていました。
道路には足首くらいまで水が溜まっていました。
工事中の地下に大量の水が流れ込み、まるでプールのような状態に。
急いで土嚢を用意し、現場周辺を囲みました。
翌日は台風一過の青空。地下に溜まった雨水を早急に汲み上げようと、ポンプ2台を投入して作業を始めました。そんな中、思わぬ事態が発生したのです。
隣接建物の地盤沈下
作業中、隣のお弁当屋さんから「シャッターが上がらない」と声をかけられました。原因を調査していると、ゾッとするような事実に気づきました。
隣の建物が現場側に傾いている。
原因は昨日の大雨で、現場の地下山留の矢板やH鋼の隙間から隣地の土砂が流れ込んだこと。
結果として、隣地側の地盤沈下を引き起こしてしまった。
この瞬間の背筋が凍る思いは、今でも鮮明に覚えています。
復旧への道のり
1. 保険会社との相談
まず、保険会社に連絡を取り、以下の点を確認しました:
補償内容
復旧費用
休業補償
2. 専門家の力を借りる
下請けの土建屋さんの紹介で、「曳家」という専門業者を知りました。曳家の方々と以下の点について打ち合わせを行いました:
施工方法
施工期間
予算
3. 復旧工事の実施
木造2階建ての建物を、以下の方法で復旧しました:
土台の下端の基礎にH鋼を通し、両端に油圧ジャッキをセット(1.8m間隔)
外壁に部分的に穴をあけ、土台と基礎をつなぐボルトを緩める
油圧ジャッキで土台を水平に保つように上げていく
左右が水平になったら、沈下した基礎と土台の隙間に無収縮モルタルを充填
1~2週間養生後、あけた穴の補修等の復旧工事を完了
失敗から学んだこと
この経験から、私は多くのことを学びました:
事前調査の重要性:現場着工前に地域の特徴や地形を詳細に調査することの大切さ。
リスク予測:大雨で道路が冠水する地域と知っていれば、現場周辺の盛土や山留の工法で対策ができたはず。
危機管理能力:予期せぬ事態に直面した際の迅速な対応と判断力の必要性。
コミュニケーションの大切さ:隣接する店舗や住民との良好な関係構築の重要性。
新人現場監督へのメッセージ
28年前の失敗ですが、当時の状況を今でも鮮明に覚えています。この経験から、私は以下のことを心がけるようになりました:
工事着工前の調査を様々な視点から行う
現場で起こりうるトラブルを予測し、事前に対策を講じる
失敗を恐れず、むしろそこから学ぶ姿勢を持つ
最後に、新人の皆さんへ。失敗は人を大きく成長させます。大切なのは以下の3点です:
失敗と真摯に向き合うこと
原因や対処方法を冷静に分析すること
迷惑をかけた方々に誠意を持って対応すること
これらを心に留めて、日々の業務に取り組んでください。皆さんの成長と活躍を心から応援しています。