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長野県立大学安藤理事長が語る「脱ふつう」part2


長野県立大学ソーシャル・イノベーション創出センターでは、大学内外の様々な人や資源を結び付け、社会課題の解決や新たな取組みを生み出す土壌づくりを支援しています。この記事では「学生コーディネーター」として活動するメンバーが、地域での様々な取組みをご紹介します!


長野県立大学理事長の安藤理事長インタビューVol.2。テーマは「挑戦する力は、後天的に身に着けられるか?」です。




挑戦する力は後天的に身に着けられるのか


内田:挑戦する力は後天的に身につけられるものだとおもいますか?

安藤理事長: 素質もあるかもしれませんが、私は十分、後天的に経験によって身につけられると思っています。私が思うに挑戦するときに一番大事なのは、必ず実現したいという、強い熱量、エネルギーですね。これを別の言葉で言ったら「情熱」や「パッション」、「使命感」とも言えるでしょう。

なぜそれらが重要かというと、そういうエネルギーがないと困難にぶち当たったときにその壁を跳ね返せないんですよ。

それから、あともう一つ大切なことはチームや仲間をつくることです。エネルギーは大切なんだけれども、自分だけでできることって知れているわけですからね。

例えば私がVAIOというPCをつくった時の話をしますと、当時はパソコンは工場だとか事務所だとかそういうところでしか使われてない、つまり生産性を良くするためだけの道具でした。そこで私は「誰でもスティーブン・スピルバーグ監督になれるような」世界で最も高性能な、しかし、誰でも簡単に使えて、女の子にかっこよく見せられるような見た目もかっこいいパソコンを作ろうと思ったんです。

そういう風に何をやりたいかを決めると、必要な技術は何か、それを持ってる人は誰か、その人は何処にいるんだとかが分かってくるんですよ。そうするとチームが生まれてきて、その結果として大きなことが実現できるわけですよね。夢を自分一人で実現しようとすると大変だけども、そういうチームや仲間を作って一緒になってやっていくと、どんどん夢も大きくなるし、実現できる可能性も高くなってくるんです。

そういったことを私はずっとやってきたわけです。その経験から言えるのは、挑戦を成功させるうえで一番大事なのはまず何をやりたいかっていうことを明確にする事ですね。

安藤理事長が学生にむけて講義を行っている様子


内田:何をやりたいかを明確にするには、どうすればいいのでしょうか。

安藤理事長:そうですね、目標を明確にするためには自分なりの「義憤(ぎふん)」を見つけることが大切だと思います。

一つの例として、世界一速い義足を作ろうとしているソニーの若者の話があります。彼が義足を作ろうとしている理由っていうのは、中学時代の最も仲の良い友達が事故にあって片足を失ってしまったことなんです。彼は義足を作るためにソニーに入ってきて、自分で一生懸命義足を作ったんです。最初は非常にいい義足を作ったけども、10万円もする、とにかく1万円以下にしなくちゃいけないと思ってさらに一生懸命頑張っているんです。

これって一つの義憤で、この場合は「なぜ障害者が健常者と競争できないんだ」という義憤から目的を作っているんです。

ビジネスって、そういうことなんですよ。誰か一人の大きな目標とか、情熱とか、義憤とか、そういうものが元になって出てくるんです。

挑戦するということは成功するのか分かんないから当然リスクがある。10人がやったら10人ほとんど失敗する。100人やったら1人くらい成功するみたいな時もある。リスクを考えたら普通はやらないけど自分はこれをやりたいんだというエネルギーを持ち、それを実現できるのがアントレプレナーシップなんです。


安藤理事長の義憤


内田:安藤理事長が、義憤を元にアントレプレナーシップを発揮した経験をお聞かせ願います。

安藤理事長:そうですね。私はソニー生命事業の後、当時新しくソニーの社長になられた方に、「あなたをカンパニープレジデント(注:企業内企業の社長)として、ソニーはこれからITをやる」頑張れって。

その後、ソニーの優秀なIT関係のエンジニアが300人くらい集められてITカンパニーが設立されました。それで、私はプレジデントとして最初に「私はこれを10年やる。実は私はこういうことをやりたいんだ」っていう話をしたんですよ。そうしたら「ITのド素人でいきなりプレジデントとして来た人が、『私は10年やる』とか言われても、自分たちはついていけない」と言ってエンジニアの3分の2くらいが辞めていってしまったんです。

当時の私のビジョンは、コンシューマー用(消費者用)のエンターテイメントPCを作ることでした。なぜなら、せっかくソニーがITをやるんだったら、世界に冠たるソニーのAV(オーディオビジュアル)技術を生かしたいと思ったからです。

だから最初からその思いをトレードマーク(商標)にしたいと思い、Video Audio Integrated(融合する)Operation(オペレーション)の頭文字を合わせてVAIOという名前を付けたんです。

しかし、当時のエンジニアからは「そんなPCはダメですよ」「そんなの、世の中に存在しません」などと反対されました。でも、私は「世の中に存在しないからやる意味があるんだよ。私はこういうことをやるんだから、やめたい人は辞めてってもいいよ」と言ったんです。

するとITに詳しいエンジニアほど「安藤さん、そんなものは成功しないでしょ」と言って、辞めていってしまいました。まさに忠臣蔵の四十七士のようでした。

最初はうまくいかず批判されたけど、その間私は「女の子が使って恰好いいPCを作りたい」とか「私みたいなド素人でもすぐ使えるPCにしたい」とか、「みんながスティーブン・スピルバーグになれるような画像と融合して簡単に映画を作れるPC」とか、具体的な目標を言い続けたんです。

すると半年くらいたった時に、Ryoma2(坂本龍馬からとった名称)という開発コードネームのPCが出来ました。「これだ」と直感しました。そのモデルを元に改良を進め、ITカンパニーを作ってから1年と7ヶ月半後にVAIOは世界中で大ヒットしました。


本当にクリエイティブで、アントレプレナースピリットを持ってる人はそんなに世の中に多くない。だからクリエイティブな人たちには私は「どんどんやると良い、絶対大丈夫だよ」と励ますんです。

ただ、単に儲かれば良いとか、安いのがいいんじゃないかみたいなことは薦めない。結局、志が低いとダメなんですよね。だから、最初に自分の本当にやりたいことだとか、義憤だとか、大義だとか、それを持ってないとアントレプレナーになったって、何の意味もないっていうのが私の強い思いですね。


インタビューアーの学び

ここまで読んでいただいて、読み手のあなたはどんなことを感じましたか?
私は価値から逆算するのではなく、「この人を大切にしたい」という想いから逆算することが重要だと感じました。

義足は儲かるからつくろうだとか、PCは儲かるからつくろうではいいものは作れないんだと思います。

なぜなら価値から逆算すると人が後付けになるからです。要するに、企画のための企画ではなく人のための企画であり仕事なので誰を・どんな人を大切にしたいかが明確であることが最も重要なのだと思います。

そういったプロセスが結果として顧客の満足度に繋がるのだと思います。次回は「安藤理事長が学生に伝えたい事」についてじっくり聞かせてもらう回です。ぜひお楽しみに。

Part1:https://note.com/csi786/n/n82fc751d5db2

Part2:https://note.com/csi786/n/na5ee72f81384

Part3:https://note.com/csi786/n/ne8492edc7d1b

Part4:https://note.com/csi786/n/n838e3c20f619


書いた人:内田大晴長野県立大学グローバルマネジメント学科6期生2004年北海道生まれ。長野県立大学入学後、地域と関わるいくつかのプロジェクトに参加し、地域で活躍するパワフルなプレイヤーにあこがれを抱くようになりました!学生コーディネーターとして、自分が大好きな「挑戦している人が周りにいる暖かい環境」を育んでいきたいと考えています。現在はライターを目指して修行中です。




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